風月のスキビだより二周年記念リクエストー!!
第一弾ですっ!!
今回はゆみーのん様からのリクエスト!どうぞお楽しみくださいー!
*****
満員電車は天国?地獄?
「最上さんってさ、満員電車…乗ったことある?」
「へ?満員電車…ですか?もちろん、ありますよ?」
「そっか…」
そのまま黙り込んでしまった蓮がズーンと何処と無く重い雰囲気を醸し出すので、キョーコはえ?!いきなりどうしたの?!この空気っ!!と慌てた。
今日は久しぶりにラブミー部への依頼で、蓮に食事を作りに来ていたのだが、片付けを終えてリビングに戻ると、台本を読んでいたはずの蓮から突如質問を受けたのだ。
「え…っと…、あの、満員電車がどうかされたんですか?」
思い悩むその姿に、キョーコはたまらずに声をかけた。
「あ…いや…。なんでもないよ。」
にっこりと微笑む蓮の姿に、既視感を覚える。
あれは確か、鶏の中に入って蓮と初めて遭遇した日。
台本の中でわからない単語でもあったのかと問うた時に、誤魔化そうと向けられた笑顔だ。
「もしかして…」
「ん?」
「台本で何かわからないところがあった…とかですか?」
キョーコの言葉に、蓮は目を見開いて一瞬固まったのち、はぁー。っとため息を吐きつつ顔を崩して、ぐしゃりと頭をかき上げた。
「君には…叶わないな。」
困ったように微笑むその姿に、キョーコはうっかりとトキメキスイッチを押されてしまう。
ドキドキと高鳴る心臓に気付かない振りをして平常心を心掛ける。
「どの言葉が…わからないんですか?」
てんてこ舞いの時のようにわからない単語があるのかと思って問うてみたところ、蓮はあっさり首を振った。
「いや、意味はわかるんだけど、まだ体験したことがなくてね…。今度…サラリーマンの役をもらったんだけど…ほら、ここ。」
「えっと、『満員電車から解放され、ため息をつく』…?」
キョーコは心底わけがわからなくて首を傾げた。
「俺は、ここで満員電車から解放されて、ため息をつかなきゃいけないんだけど…」
「…はぁ…。(つけばいいのに…。)」
「俺は、今まで生きてきた中で、一度も満員電車というものに乗ったことがないんだ。」
「えぇ?!」
キョーコは驚きで目を見張ったが、それは一瞬だった。
確かに、蓮のように生まれながらにしてセレブという特別なオーラを持った人物ならば満員電車に乗ったことはなくても不思議ではない。
送り迎えの移動は常にSP付きの車、優雅に車の中で紅茶なんかも口にしていたかもしれない。
何故なら蓮はゴージャスターなのだ。
「もちろん、経験したことがないから出来ないなんて言うつもりはないけど、よりリアルに体現するにはやっぱり体験してみた方がいいだろう?」
「まぁ…そうですね…。」
「普段から視聴者が体験しているからこそ、共感を得られる大事なシーンなんだろうけど、体験したことがないとどうも嘘っぽく映りそうな気がして…」
うーん?と蓮は首を捻りながら、撮影は3日後だし…と、ブツブツと呟く。
そうして、漸く何かを閃いたようで、ぽんっと一つ手を打つと、蓮は徐に携帯を取り出して、何処かへ電話を掛け始めた。
「あ、社さんですか?明日の入りって確か10時半でしたよね?…はい。よかった。じゃあ悪いですが、明日は現場で落ち合うことにしてもらってもいいでしょうか?…あ、いえ…ちょっと…。はい。あの、ギリギリになるかもしれないんですけど…。はい。はい…よろしくお願いします。ええ、では…。」
ーーピッ
蓮が通話を切ると、キョーコは衝撃を受けたような恐ろしい形相で蓮をガン見していた。
「えっと…最上さん?何…かな?その顔は…。」
「敦賀さん?!まさか、満員電車に乗ろうとしてるんじゃないでしょうね?!」
「え…?そうだけど…。」
何が悪いの?という顔でキョトンと見つめてくる蓮。
全く自分の人気の高さを認識し切れていない蓮に、キョーコは心の中で大絶叫を上げた。
ーーーそうだけど…?そうだけどじゃないでしょーーーー!!!!!!敦賀さんが満員電車なんかに乗ったらパニックになること必須じゃない!!なんでそんなこともわからないのー?!?!
「敦賀さん!!念のためにお聞きしますが、ご自分の立場わかってらっしゃいますか?!」
キョーコのその言葉に、蓮はいささかムッとした顔を見せる。
「失礼だな。ちゃんとわかってるよ。」
「だったら、敦賀蓮が満員電車になんて乗ったら車内がパニックになることぐらいわかりますよね?!」
「…でも案外、堂々としてれば気付かれないもんだし…」
「何言ってるんですかっ!!絶対に血を見ることになりますよ!!」
「大丈夫だって。最上さんは心配しすぎなんだ。」
「~~~!!じゃあ、どうしても行くと言うのなら、私もお供させて頂きますっ!!」
「え?」
「敦賀さんを一人でなんて行かせられません!!私もご一緒しますから!!」
「…でも、いいの?」
「大丈夫です!!明日は私も11時から撮影なので学校に行っても一限目の途中で抜け出さなきゃいけなくなるので、明日どうしようか迷ってたんですっ!!」
「…じゃあ…付き合ってもらおうかな?」
「わかりました!!不肖、最上キョーコお供させて頂きますっ!!」
ははぁー!!と頭を下げるキョーコに蓮は助かるよ。と微笑みながら、明日キョーコと過ごせることにこの時はまだ幸せを噛み締めていたのだった。
ーーー本当に、どうしてくれよう…。
蓮はギュウギュウ詰めの満員電車の中にいて、無表情を貫くのに必死だった。
数十分前まで、まだ周りの人々との間に隙間というものがあり、少しくらいは身動きを取ることも出来た。
その時、これが満員電車か…と呑気に思っていたのに、今はそれの比ではないほどギュウギュウ詰めの目に遭っている。
そして蓮を無表情にしている原因は…。
「ん…ぷっ」
苦しげにする愛おしい少女が、身体に密着していることだったりする。
「…大丈夫?」
「は、はい…。す、すみません…んっ」
「いいから、下手に動かない方がいい。」
「はい…。」
骨が折れるのではないかと思ってしまう程、ギュウギュウ詰めになった車内、守るため慌てて腕の中に引き入れた少女は蓮の胸元に顔を押し付けられるように固定されてしまった。
足を僅かに動かすことすら困難な車内で、キョーコは混み合う他の人の間で押しつぶされそうになったところを蓮に引き寄せられた際に、バランスをすぐしそうになり抱き着く形になってしまい、両手で蓮の脇腹を掴んだ状態のまま、少しも身動きが取れない状態になってしまったのだ。
遠慮気味に掴まれたジャケット、胸にピタリと寄せられた頬、身体はちょうどハマったようにピタリと密着しており、腕の中に収まっている。
仄かな香り。柔らかい感触。
全てが愛おしくてたまらなくて、蓮は理性を総動員させるのに必死だった。
キョーコの背中を守るように添えた手がギュッと押さえつけられ、手のひらのすぐ下にキョーコのブラジャーのホックがあることにも気付いてしまった。
簡単に外してしまえるその場所は今の蓮にとってデッドゾーン以外の何物でもない。
ガタンッと電車が揺れるたび、ギュウッと更に圧縮される車内。
華奢な身体を守るように抱きしめていても、やはり苦しいらしく、小さな呻き声が上がると共にくいっと脇腹を握り締められる感触を感じる。
表面上は無表情だが、内心はもう只管理性との戦いだった。
電車が止まり、人々が一気に吐き出される。その波に飲まれまいと必死に耐え、人の波を掻い潜って蓮はなんとか角のスペースを取ることに成功した。キョーコを角に誘い、守るようにその正面に立つ。
またもや人が詰め放題の袋の中のように隙間なく雪崩れ込んでくる。
キョーコを守るようにかくまっていても結局は押し込められ、体が密着してしまった。
キョーコの身体に当たらないように手をキョーコの頭上にある壁に肘をついて、キョーコを守るように立つ。
先ほどよりは何とか耐えられそうだと、蓮はホッと息を吐いていた。
ーーー 一体何の拷問ですかぁァァァァ!!!!!
キョーコは心の中で大絶叫を繰り返していた。
ここまで限界ギリギリの満員電車はキョーコ自身も初めて経験していた。
ギュウギュウに押しつぶされながらも守るように抱きしめてくれているのは尊敬する大先輩であり、密かに想いを寄せている敦賀蓮その人なのだ。
ガタンッと電車が揺れるたび人の波に流されるまま、きゃっといいながらドサクサに紛れてしがみ付いてしまっている自分に気付く。
決壊しそうなくらい愛しくてたまらないこの想いを綺麗に隠して、胸元に頬を寄せた。
駅に着くと人の波が動き始める離れまいとしがみ付こうとすれば、逆に強く抱き締められ、壁際へと誘導された。
守るように正面に立ってくれるその姿にときめく心を綺麗に隠していたのだが、降りる波が終われば次は乗り込む波が来るのは当然でまたもやギュウギュウに押し付けられる。
恐らくキョーコを押し潰さない為の配慮だろう、自分の頭上に肘と腕を置いて耐える様が妙に艶かしくて、直視出来ず慌てて視線を逸らした。
先程までの圧迫感のなさに少しだけ物足りなさを感じる自分を破廉恥だと罵っていたのだが、気が付けば蓮の香りに包まれたようなこの完全なるバリアーに安心感をおぼえる。
先程までの人の蠢く中心部ではなく、電車の隅っこのその場所に匿われると、まるでそこだけ切り離された二人だけの世界のように感じてしまう。
ーーーあ…敦賀…セラピー
トキントキンと心臓が早めの鼓動を刻む。
キュウンと甘く胸を締め付けるこの想いに切なく疼く恋心。
近付きたくて、抱きしめたくて抱きしめられたくて今開いている距離に少しの寂しさを覚える。
ーーガタンッ
「きゃっ!」
「おっと。」
大きく揺れた車内でバランスが崩れ、蓮の方へと身体が傾くと、蓮がすかさず抱きとめてくれた。
カァッと身体が熱くなる。
離れなきゃと思うのに離れ難くて、体は勝手にしがみ付くように蓮の背中に腕を回していた。
「も、最上さん?!大丈夫?」
ギリギリの理性と必死で戦っていた蓮は、愛しいキョーコの方から抱きついてきたことに驚いてしまった。
心臓が破裂しそうなくらい暴れ出して、耳のそばから心音が聞こえるほど動揺していた。
キュッとしがみ付く細い腕、与えられた柔らかな感触、胸に埋まる顔。
驚いたように固まったのは一瞬で、電車が再びガタンッと揺れたのをキッカケに蓮も応えるようにキョーコの背中を抱きしめ返した。
「どう…したの?」
蓮に問われてキョーコはハッと我に返った。
ーーーきゃぁぁ!!わ、私ったら何をっ!!!!
「あ、いえ、すみませ…」
「…いや、いいけど…」
自ら無意識に蓮へと抱きついてしまったことに内心で物凄く動揺しつつも、慌てて離れると、蓮は苦笑しながら解放してくれた。
離れたことにまた少し寂しさを感じながらも、互いにバクバクと心臓を暴れさせてることに気付かぬまま、二人は己の理性と葛藤しつつ時折揺れて触れ合う身体に神経をすり減らしていた。
向き合っているのがどうも落ち着かなくて、キョーコは漸く向き合っているからいけないのだと思い至った。
ーーーそうよ!!正面から向き合ってるからいけないのよ!!私が背中を向ければいいんだわっ!!
「あ、あの…ちょっと身体の向きを変えてもいいでしょうか?」
「え…?あ、あぁ、うん。」
蓮もその方が色々助かるかもしれないと思って了承した。
もう互いに限界を感じていたのだ。
身動きが困難な車内で何とか方向転換をして背中を向けると、何と無くキョーコはほっと息をつける気がした。
蓮もさっきよりかはいいかもと安堵したのも束の間、今度はキョーコの白い項に目が言ってしまった。
華奢で儚げな背中、このままそっと抱き締めたくて堪らなくなる。
キョーコが正面を向いている時は時折目を合わせるくらいで目をさりげなく逸らして風景に目を向けたりもしていたのだが、今はキョーコと目が合う心配もない分、目は吸い寄せられるようにキョーコから離すことが出来ない。
ずっとその姿を瞳に映していたくて、腕の中にキョーコを閉じ込めることが出来ているこの状況に知らぬまに更なる欲が湧いてくる。
そんな蓮の視線に本能的に気付いたのかどうなのか、キョーコも背を向けてホッとしたのは一瞬で更なるドギマギを感じていた。
蓮の気配が背後にあるのもそれはそれで落ち着かない。後ろから抱きしめられているような感覚に陥ってしまうのだ。
すぐ後ろに蓮がいる。
そう思うだけで、心臓が激しく脈打ち、気持ちを落ち着かなくさせる。
ガタンと揺れる度背中に伝わる蓮の体温に知らぬ間に身体は熱を上げて、全身の感覚が背後の蓮の気配を探してしまうのだ。
ガタンと、また大きく車内が揺れ、キョーコの身体が傾きかけると、蓮が後ろから咄嗟な抱きしめてくれた。
「大丈夫?」
抱きしめられたまま後ろからそっと耳元に囁かれて身体がビクリと大きく跳ねる。
「は、い…。」
何とか返事を返しながら、心の中では後ろから話しかけるなんて反則よぉ!!と訴えていた。
心の中で抗議運動を行っていたキョーコは少し落ち着いてきてから漸く蓮に抱き締められたままなことに気付いた。
ドキドキドキドキと心臓を打ち鳴らしてそろりと上を向いて、蓮を下から見上げるとそこで蓮と目が合って、「ん?」と甘い顔で言われて思わず赤面してしまう。
「あ、あのっ!」
目が合ったことで動揺してしまい、はわわわわっ!と慌てたキョーコが何か言いかけたところで、またもや駅に到着し、人の波が蠢き出した。
「あ、すんませんっ!」
ーードンッ!
蓮の背中に慌てて降りようとした人の荷物がぶつかり、蓮が一瞬よろけた瞬間ーー
「「ーーっ?!!!」」
二人の唇が重なり合った。
「ちっ。イチャイチャしてんなよな!」
そのままフリーズして固まっていた二人にすれ違う人からの舌打ちとやっかみが送られた。
ハットして先に離れたのは、蓮でキョーコは暫くキスされた体制のままフリーズしたように硬直して固まっていた。
「ごっごめん……最上さん?」
「……はっ?!え…ぁ…。」
キョーコも蓮に呼びかけられたことで漸く意識を取り戻して慌てて視線をそらした。
互いになんと声かけたらいいのかわからないまま、またもや人の波に揉まれ押し込められる。
ぎゅうぎゅうに詰め込まれた車内で、二人は顔を赤らめ互いにドギマギとしていた。
「も、最上さん…さっきはーー」
事故とは言え、接触してしまった唇は一瞬にしてその柔らかさや甘さを蓮に知らしめていたのだが、これで嫌われてしまっては元も子もない。
なんとか弁解をしなければと口を開いたのだが、それはキョーコによって遮られた。
「だ、大丈夫ですっ!!アリクイか何かに喰われたと思って忘れますからっ!!」
言われた言葉に蓮は一瞬固まる。
「……アリ、クイ?」
「はっ!!あ、いえ!あの…」
「俺は…アリクイ?」
「い、いえ!!決して、決してそう言う意味ではなく…!!」
「じゃあ…どういう意味?」
コソコソと密かに小声で交わされる会話は自然と顔も近くなる。そのことにキョーコは真っ赤になったのだが、アリクイ呼ばわりされてスゥっと下がった蓮の空気に慌てて必死で言い訳をする。
「あの、それは…勘違いして愚か者になんてならないから気になさらないで下さいという意味で…!」
「…勘違いってどんな?」
「そ、それは…」
キョーコは続ける言葉が浮かばず真っ赤になって口籠った。
「ふぅん…言わないんだ?」
「うぅ…言えません…」
「どうしても?」
「…はい。どうしてもです。」
「じゃあ、勘違いじゃない本当の俺の気持ちを教えてあげる。」
「え?」
蓮の言葉にキョーコが頭にクエスチョンを浮かべて蓮を見上げたところでまたガタンと電車が大きく揺れ、それに乗ずるかのように顎を掬われたキョーコと蓮の唇がまたもや重なっていた。
キョーコは目を見開き、固まったまま蓮の唇の熱を感じていた。
頭もそっと抱え込まれて逃げ場を失ったキョーコは重ねられた唇に何処までも甘くて蕩けてしまいそうな感覚を覚える。
目の前がチカチカして混乱した。
チュッと離れた唇の持ち主の瞼が持ち上がるのを目を見開いた状態のまま見つめていると、くすりと蓮が微笑んだ。
「な…にを…?」
今だ思考が働かず呆然とするキョーコに蓮はニッコリと微笑みかける。
「二度目はないって言ったよね?」
「え…二度…目?」
「うん…。…チュッ。これで三度目…」
「…っ!!!!」
漸くなんのことを指摘されたのかがわかって、キョーコはカァッと真っ赤になった。
「な…んで…」
キョーコが理由を聞こうとしたところでまた電車は駅へ到着し、人が吐き出される。
蓮はキョーコの手を引いてその波に乗った。
吐き出され、向かう先は改札口とは逆方向で、蓮が何を考えてるのかわからずキョーコは戸惑い、手を引かれつつ呼びかける。
「あ、あの、敦賀さん?」
呼びかけに応えられぬまま、あっという間に人もまばらなホームの隅に追いやられ、キョーコは困惑して蓮を見上げた。
「どう…されたんですか?」
本当にわからなくて問いかければ、蓮にぎゅうっと抱きしめられて、耳元で漸く答えを囁かれた。
「…もう…限界なんだ…」
何がと問おうとした口はあっという間に覆われて先程とは比べものにならないほど深いキスを送られた。
最初は驚いて抵抗しようとしていたキョーコだが、自分の想いも抗うことを拒否し始め、そのまま縋るように蓮の背中に手を回した。
ギュッと握られた背中を感じて蓮のキスも益々深まる。
遠慮気味に絡み返される舌を遠慮なくすくい上げて、吸い上げる。
漸く解放した頃にはキョーコは自分の身体を支える力を失っていて蓮に身体を預けることで辛うじて立っていられる状態だった。
唇を離して額を合わせて、目を合わせると蓮の甘い眼差しがキョーコの心を一瞬にして射止めた。
「アリクイ…なんだろ?」
「……敦賀さんは、意地悪ですぅ…。」
「好きな子は虐めたくなるってよく言うよね?」
「え…?好きな…子って…」
まん丸に見開いた目でキョーコが蓮を見上げる。
蓮は戯けたように肩を竦めた。
「君以外に誰がいるの?」
「え…わ、たし…?」
「うん。じゃなきゃこんなことしないよ。」
「でも…っ!」
「うん。ちょっと黙ろうか?」
そうやって再び塞がれた唇に甘く落ちて、二人はその日から晴れて恋人同士になったのだった。
END
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以下リクエスト内容~☆
《ゆみーのん様からのリクエスト》
敦賀蓮くん、はじめての満員電車
サラリーマン役でもらった台本に『満員電車から解放されため息をつく』のト書きにあの『てんてこ舞い』のような衝撃を受ける。だって満員電車なんか乗ったことがない!!
勿論成立前ですが両片想いで!満員電車でぎゅうぎゅうに密着しながらどうしてくれようと狼狽える?蓮さんとあまりの密着度に敦賀セラピー&心臓ばくばくのきょこさん。
*****
ゆみーのん様!!申し訳ありません!!これが限界でしたー!!!!
勝手にくっつけちゃうし…
そしてタイトルまで変えてしまうという荒技に…!!
かなり擽られるリクエストだったんですが、書いてみると意外と難しいっ!!
というか蓮の変装した格好が浮かばなくて、皆さんの想像にお任せすることにいたしましたー!!
カインセツに変装ってことになったらそれはそれで別物のお話になってしまいそうで、この素敵リクエストを裏切ってしまうのでは?!と思ったのですが、素のままは更に難しかったです!
多分、リクエストじゃなかったら途中で放り投げてたところでした(笑)
いやぁー!勉強になりました!!
ゆみーのんさん、こんなお話でよければ持ち帰ってやってください~!
そしてリクエスト作品は一応、フリーの予定ですので、もらってやるよ、飾ってやるよって方がいたら一声かけて頂けると嬉しいです。
さて、次のリクエスト…どれにしましょー?!長くなりそうなのが二つ…それをどちらかに絞って他ので書くかどうするか…(笑)
現在厳選中でございます。
とりあえずMy HOME終わらせるのが先の方がいいかしら?
今の構想通り進めるとMy HOME、30話になりそうなんですよねー(汗)
どうしましょ。悩みところです(笑)
こんなやつですが、これからもお付き合い頂けたら嬉しいです。
第一弾ですっ!!
今回はゆみーのん様からのリクエスト!どうぞお楽しみくださいー!
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満員電車は天国?地獄?
「最上さんってさ、満員電車…乗ったことある?」
「へ?満員電車…ですか?もちろん、ありますよ?」
「そっか…」
そのまま黙り込んでしまった蓮がズーンと何処と無く重い雰囲気を醸し出すので、キョーコはえ?!いきなりどうしたの?!この空気っ!!と慌てた。
今日は久しぶりにラブミー部への依頼で、蓮に食事を作りに来ていたのだが、片付けを終えてリビングに戻ると、台本を読んでいたはずの蓮から突如質問を受けたのだ。
「え…っと…、あの、満員電車がどうかされたんですか?」
思い悩むその姿に、キョーコはたまらずに声をかけた。
「あ…いや…。なんでもないよ。」
にっこりと微笑む蓮の姿に、既視感を覚える。
あれは確か、鶏の中に入って蓮と初めて遭遇した日。
台本の中でわからない単語でもあったのかと問うた時に、誤魔化そうと向けられた笑顔だ。
「もしかして…」
「ん?」
「台本で何かわからないところがあった…とかですか?」
キョーコの言葉に、蓮は目を見開いて一瞬固まったのち、はぁー。っとため息を吐きつつ顔を崩して、ぐしゃりと頭をかき上げた。
「君には…叶わないな。」
困ったように微笑むその姿に、キョーコはうっかりとトキメキスイッチを押されてしまう。
ドキドキと高鳴る心臓に気付かない振りをして平常心を心掛ける。
「どの言葉が…わからないんですか?」
てんてこ舞いの時のようにわからない単語があるのかと思って問うてみたところ、蓮はあっさり首を振った。
「いや、意味はわかるんだけど、まだ体験したことがなくてね…。今度…サラリーマンの役をもらったんだけど…ほら、ここ。」
「えっと、『満員電車から解放され、ため息をつく』…?」
キョーコは心底わけがわからなくて首を傾げた。
「俺は、ここで満員電車から解放されて、ため息をつかなきゃいけないんだけど…」
「…はぁ…。(つけばいいのに…。)」
「俺は、今まで生きてきた中で、一度も満員電車というものに乗ったことがないんだ。」
「えぇ?!」
キョーコは驚きで目を見張ったが、それは一瞬だった。
確かに、蓮のように生まれながらにしてセレブという特別なオーラを持った人物ならば満員電車に乗ったことはなくても不思議ではない。
送り迎えの移動は常にSP付きの車、優雅に車の中で紅茶なんかも口にしていたかもしれない。
何故なら蓮はゴージャスターなのだ。
「もちろん、経験したことがないから出来ないなんて言うつもりはないけど、よりリアルに体現するにはやっぱり体験してみた方がいいだろう?」
「まぁ…そうですね…。」
「普段から視聴者が体験しているからこそ、共感を得られる大事なシーンなんだろうけど、体験したことがないとどうも嘘っぽく映りそうな気がして…」
うーん?と蓮は首を捻りながら、撮影は3日後だし…と、ブツブツと呟く。
そうして、漸く何かを閃いたようで、ぽんっと一つ手を打つと、蓮は徐に携帯を取り出して、何処かへ電話を掛け始めた。
「あ、社さんですか?明日の入りって確か10時半でしたよね?…はい。よかった。じゃあ悪いですが、明日は現場で落ち合うことにしてもらってもいいでしょうか?…あ、いえ…ちょっと…。はい。あの、ギリギリになるかもしれないんですけど…。はい。はい…よろしくお願いします。ええ、では…。」
ーーピッ
蓮が通話を切ると、キョーコは衝撃を受けたような恐ろしい形相で蓮をガン見していた。
「えっと…最上さん?何…かな?その顔は…。」
「敦賀さん?!まさか、満員電車に乗ろうとしてるんじゃないでしょうね?!」
「え…?そうだけど…。」
何が悪いの?という顔でキョトンと見つめてくる蓮。
全く自分の人気の高さを認識し切れていない蓮に、キョーコは心の中で大絶叫を上げた。
ーーーそうだけど…?そうだけどじゃないでしょーーーー!!!!!!敦賀さんが満員電車なんかに乗ったらパニックになること必須じゃない!!なんでそんなこともわからないのー?!?!
「敦賀さん!!念のためにお聞きしますが、ご自分の立場わかってらっしゃいますか?!」
キョーコのその言葉に、蓮はいささかムッとした顔を見せる。
「失礼だな。ちゃんとわかってるよ。」
「だったら、敦賀蓮が満員電車になんて乗ったら車内がパニックになることぐらいわかりますよね?!」
「…でも案外、堂々としてれば気付かれないもんだし…」
「何言ってるんですかっ!!絶対に血を見ることになりますよ!!」
「大丈夫だって。最上さんは心配しすぎなんだ。」
「~~~!!じゃあ、どうしても行くと言うのなら、私もお供させて頂きますっ!!」
「え?」
「敦賀さんを一人でなんて行かせられません!!私もご一緒しますから!!」
「…でも、いいの?」
「大丈夫です!!明日は私も11時から撮影なので学校に行っても一限目の途中で抜け出さなきゃいけなくなるので、明日どうしようか迷ってたんですっ!!」
「…じゃあ…付き合ってもらおうかな?」
「わかりました!!不肖、最上キョーコお供させて頂きますっ!!」
ははぁー!!と頭を下げるキョーコに蓮は助かるよ。と微笑みながら、明日キョーコと過ごせることにこの時はまだ幸せを噛み締めていたのだった。
ーーー本当に、どうしてくれよう…。
蓮はギュウギュウ詰めの満員電車の中にいて、無表情を貫くのに必死だった。
数十分前まで、まだ周りの人々との間に隙間というものがあり、少しくらいは身動きを取ることも出来た。
その時、これが満員電車か…と呑気に思っていたのに、今はそれの比ではないほどギュウギュウ詰めの目に遭っている。
そして蓮を無表情にしている原因は…。
「ん…ぷっ」
苦しげにする愛おしい少女が、身体に密着していることだったりする。
「…大丈夫?」
「は、はい…。す、すみません…んっ」
「いいから、下手に動かない方がいい。」
「はい…。」
骨が折れるのではないかと思ってしまう程、ギュウギュウ詰めになった車内、守るため慌てて腕の中に引き入れた少女は蓮の胸元に顔を押し付けられるように固定されてしまった。
足を僅かに動かすことすら困難な車内で、キョーコは混み合う他の人の間で押しつぶされそうになったところを蓮に引き寄せられた際に、バランスをすぐしそうになり抱き着く形になってしまい、両手で蓮の脇腹を掴んだ状態のまま、少しも身動きが取れない状態になってしまったのだ。
遠慮気味に掴まれたジャケット、胸にピタリと寄せられた頬、身体はちょうどハマったようにピタリと密着しており、腕の中に収まっている。
仄かな香り。柔らかい感触。
全てが愛おしくてたまらなくて、蓮は理性を総動員させるのに必死だった。
キョーコの背中を守るように添えた手がギュッと押さえつけられ、手のひらのすぐ下にキョーコのブラジャーのホックがあることにも気付いてしまった。
簡単に外してしまえるその場所は今の蓮にとってデッドゾーン以外の何物でもない。
ガタンッと電車が揺れるたび、ギュウッと更に圧縮される車内。
華奢な身体を守るように抱きしめていても、やはり苦しいらしく、小さな呻き声が上がると共にくいっと脇腹を握り締められる感触を感じる。
表面上は無表情だが、内心はもう只管理性との戦いだった。
電車が止まり、人々が一気に吐き出される。その波に飲まれまいと必死に耐え、人の波を掻い潜って蓮はなんとか角のスペースを取ることに成功した。キョーコを角に誘い、守るようにその正面に立つ。
またもや人が詰め放題の袋の中のように隙間なく雪崩れ込んでくる。
キョーコを守るようにかくまっていても結局は押し込められ、体が密着してしまった。
キョーコの身体に当たらないように手をキョーコの頭上にある壁に肘をついて、キョーコを守るように立つ。
先ほどよりは何とか耐えられそうだと、蓮はホッと息を吐いていた。
ーーー 一体何の拷問ですかぁァァァァ!!!!!
キョーコは心の中で大絶叫を繰り返していた。
ここまで限界ギリギリの満員電車はキョーコ自身も初めて経験していた。
ギュウギュウに押しつぶされながらも守るように抱きしめてくれているのは尊敬する大先輩であり、密かに想いを寄せている敦賀蓮その人なのだ。
ガタンッと電車が揺れるたび人の波に流されるまま、きゃっといいながらドサクサに紛れてしがみ付いてしまっている自分に気付く。
決壊しそうなくらい愛しくてたまらないこの想いを綺麗に隠して、胸元に頬を寄せた。
駅に着くと人の波が動き始める離れまいとしがみ付こうとすれば、逆に強く抱き締められ、壁際へと誘導された。
守るように正面に立ってくれるその姿にときめく心を綺麗に隠していたのだが、降りる波が終われば次は乗り込む波が来るのは当然でまたもやギュウギュウに押し付けられる。
恐らくキョーコを押し潰さない為の配慮だろう、自分の頭上に肘と腕を置いて耐える様が妙に艶かしくて、直視出来ず慌てて視線を逸らした。
先程までの圧迫感のなさに少しだけ物足りなさを感じる自分を破廉恥だと罵っていたのだが、気が付けば蓮の香りに包まれたようなこの完全なるバリアーに安心感をおぼえる。
先程までの人の蠢く中心部ではなく、電車の隅っこのその場所に匿われると、まるでそこだけ切り離された二人だけの世界のように感じてしまう。
ーーーあ…敦賀…セラピー
トキントキンと心臓が早めの鼓動を刻む。
キュウンと甘く胸を締め付けるこの想いに切なく疼く恋心。
近付きたくて、抱きしめたくて抱きしめられたくて今開いている距離に少しの寂しさを覚える。
ーーガタンッ
「きゃっ!」
「おっと。」
大きく揺れた車内でバランスが崩れ、蓮の方へと身体が傾くと、蓮がすかさず抱きとめてくれた。
カァッと身体が熱くなる。
離れなきゃと思うのに離れ難くて、体は勝手にしがみ付くように蓮の背中に腕を回していた。
「も、最上さん?!大丈夫?」
ギリギリの理性と必死で戦っていた蓮は、愛しいキョーコの方から抱きついてきたことに驚いてしまった。
心臓が破裂しそうなくらい暴れ出して、耳のそばから心音が聞こえるほど動揺していた。
キュッとしがみ付く細い腕、与えられた柔らかな感触、胸に埋まる顔。
驚いたように固まったのは一瞬で、電車が再びガタンッと揺れたのをキッカケに蓮も応えるようにキョーコの背中を抱きしめ返した。
「どう…したの?」
蓮に問われてキョーコはハッと我に返った。
ーーーきゃぁぁ!!わ、私ったら何をっ!!!!
「あ、いえ、すみませ…」
「…いや、いいけど…」
自ら無意識に蓮へと抱きついてしまったことに内心で物凄く動揺しつつも、慌てて離れると、蓮は苦笑しながら解放してくれた。
離れたことにまた少し寂しさを感じながらも、互いにバクバクと心臓を暴れさせてることに気付かぬまま、二人は己の理性と葛藤しつつ時折揺れて触れ合う身体に神経をすり減らしていた。
向き合っているのがどうも落ち着かなくて、キョーコは漸く向き合っているからいけないのだと思い至った。
ーーーそうよ!!正面から向き合ってるからいけないのよ!!私が背中を向ければいいんだわっ!!
「あ、あの…ちょっと身体の向きを変えてもいいでしょうか?」
「え…?あ、あぁ、うん。」
蓮もその方が色々助かるかもしれないと思って了承した。
もう互いに限界を感じていたのだ。
身動きが困難な車内で何とか方向転換をして背中を向けると、何と無くキョーコはほっと息をつける気がした。
蓮もさっきよりかはいいかもと安堵したのも束の間、今度はキョーコの白い項に目が言ってしまった。
華奢で儚げな背中、このままそっと抱き締めたくて堪らなくなる。
キョーコが正面を向いている時は時折目を合わせるくらいで目をさりげなく逸らして風景に目を向けたりもしていたのだが、今はキョーコと目が合う心配もない分、目は吸い寄せられるようにキョーコから離すことが出来ない。
ずっとその姿を瞳に映していたくて、腕の中にキョーコを閉じ込めることが出来ているこの状況に知らぬまに更なる欲が湧いてくる。
そんな蓮の視線に本能的に気付いたのかどうなのか、キョーコも背を向けてホッとしたのは一瞬で更なるドギマギを感じていた。
蓮の気配が背後にあるのもそれはそれで落ち着かない。後ろから抱きしめられているような感覚に陥ってしまうのだ。
すぐ後ろに蓮がいる。
そう思うだけで、心臓が激しく脈打ち、気持ちを落ち着かなくさせる。
ガタンと揺れる度背中に伝わる蓮の体温に知らぬ間に身体は熱を上げて、全身の感覚が背後の蓮の気配を探してしまうのだ。
ガタンと、また大きく車内が揺れ、キョーコの身体が傾きかけると、蓮が後ろから咄嗟な抱きしめてくれた。
「大丈夫?」
抱きしめられたまま後ろからそっと耳元に囁かれて身体がビクリと大きく跳ねる。
「は、い…。」
何とか返事を返しながら、心の中では後ろから話しかけるなんて反則よぉ!!と訴えていた。
心の中で抗議運動を行っていたキョーコは少し落ち着いてきてから漸く蓮に抱き締められたままなことに気付いた。
ドキドキドキドキと心臓を打ち鳴らしてそろりと上を向いて、蓮を下から見上げるとそこで蓮と目が合って、「ん?」と甘い顔で言われて思わず赤面してしまう。
「あ、あのっ!」
目が合ったことで動揺してしまい、はわわわわっ!と慌てたキョーコが何か言いかけたところで、またもや駅に到着し、人の波が蠢き出した。
「あ、すんませんっ!」
ーードンッ!
蓮の背中に慌てて降りようとした人の荷物がぶつかり、蓮が一瞬よろけた瞬間ーー
「「ーーっ?!!!」」
二人の唇が重なり合った。
「ちっ。イチャイチャしてんなよな!」
そのままフリーズして固まっていた二人にすれ違う人からの舌打ちとやっかみが送られた。
ハットして先に離れたのは、蓮でキョーコは暫くキスされた体制のままフリーズしたように硬直して固まっていた。
「ごっごめん……最上さん?」
「……はっ?!え…ぁ…。」
キョーコも蓮に呼びかけられたことで漸く意識を取り戻して慌てて視線をそらした。
互いになんと声かけたらいいのかわからないまま、またもや人の波に揉まれ押し込められる。
ぎゅうぎゅうに詰め込まれた車内で、二人は顔を赤らめ互いにドギマギとしていた。
「も、最上さん…さっきはーー」
事故とは言え、接触してしまった唇は一瞬にしてその柔らかさや甘さを蓮に知らしめていたのだが、これで嫌われてしまっては元も子もない。
なんとか弁解をしなければと口を開いたのだが、それはキョーコによって遮られた。
「だ、大丈夫ですっ!!アリクイか何かに喰われたと思って忘れますからっ!!」
言われた言葉に蓮は一瞬固まる。
「……アリ、クイ?」
「はっ!!あ、いえ!あの…」
「俺は…アリクイ?」
「い、いえ!!決して、決してそう言う意味ではなく…!!」
「じゃあ…どういう意味?」
コソコソと密かに小声で交わされる会話は自然と顔も近くなる。そのことにキョーコは真っ赤になったのだが、アリクイ呼ばわりされてスゥっと下がった蓮の空気に慌てて必死で言い訳をする。
「あの、それは…勘違いして愚か者になんてならないから気になさらないで下さいという意味で…!」
「…勘違いってどんな?」
「そ、それは…」
キョーコは続ける言葉が浮かばず真っ赤になって口籠った。
「ふぅん…言わないんだ?」
「うぅ…言えません…」
「どうしても?」
「…はい。どうしてもです。」
「じゃあ、勘違いじゃない本当の俺の気持ちを教えてあげる。」
「え?」
蓮の言葉にキョーコが頭にクエスチョンを浮かべて蓮を見上げたところでまたガタンと電車が大きく揺れ、それに乗ずるかのように顎を掬われたキョーコと蓮の唇がまたもや重なっていた。
キョーコは目を見開き、固まったまま蓮の唇の熱を感じていた。
頭もそっと抱え込まれて逃げ場を失ったキョーコは重ねられた唇に何処までも甘くて蕩けてしまいそうな感覚を覚える。
目の前がチカチカして混乱した。
チュッと離れた唇の持ち主の瞼が持ち上がるのを目を見開いた状態のまま見つめていると、くすりと蓮が微笑んだ。
「な…にを…?」
今だ思考が働かず呆然とするキョーコに蓮はニッコリと微笑みかける。
「二度目はないって言ったよね?」
「え…二度…目?」
「うん…。…チュッ。これで三度目…」
「…っ!!!!」
漸くなんのことを指摘されたのかがわかって、キョーコはカァッと真っ赤になった。
「な…んで…」
キョーコが理由を聞こうとしたところでまた電車は駅へ到着し、人が吐き出される。
蓮はキョーコの手を引いてその波に乗った。
吐き出され、向かう先は改札口とは逆方向で、蓮が何を考えてるのかわからずキョーコは戸惑い、手を引かれつつ呼びかける。
「あ、あの、敦賀さん?」
呼びかけに応えられぬまま、あっという間に人もまばらなホームの隅に追いやられ、キョーコは困惑して蓮を見上げた。
「どう…されたんですか?」
本当にわからなくて問いかければ、蓮にぎゅうっと抱きしめられて、耳元で漸く答えを囁かれた。
「…もう…限界なんだ…」
何がと問おうとした口はあっという間に覆われて先程とは比べものにならないほど深いキスを送られた。
最初は驚いて抵抗しようとしていたキョーコだが、自分の想いも抗うことを拒否し始め、そのまま縋るように蓮の背中に手を回した。
ギュッと握られた背中を感じて蓮のキスも益々深まる。
遠慮気味に絡み返される舌を遠慮なくすくい上げて、吸い上げる。
漸く解放した頃にはキョーコは自分の身体を支える力を失っていて蓮に身体を預けることで辛うじて立っていられる状態だった。
唇を離して額を合わせて、目を合わせると蓮の甘い眼差しがキョーコの心を一瞬にして射止めた。
「アリクイ…なんだろ?」
「……敦賀さんは、意地悪ですぅ…。」
「好きな子は虐めたくなるってよく言うよね?」
「え…?好きな…子って…」
まん丸に見開いた目でキョーコが蓮を見上げる。
蓮は戯けたように肩を竦めた。
「君以外に誰がいるの?」
「え…わ、たし…?」
「うん。じゃなきゃこんなことしないよ。」
「でも…っ!」
「うん。ちょっと黙ろうか?」
そうやって再び塞がれた唇に甘く落ちて、二人はその日から晴れて恋人同士になったのだった。
END
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以下リクエスト内容~☆
《ゆみーのん様からのリクエスト》
敦賀蓮くん、はじめての満員電車
サラリーマン役でもらった台本に『満員電車から解放されため息をつく』のト書きにあの『てんてこ舞い』のような衝撃を受ける。だって満員電車なんか乗ったことがない!!
勿論成立前ですが両片想いで!満員電車でぎゅうぎゅうに密着しながらどうしてくれようと狼狽える?蓮さんとあまりの密着度に敦賀セラピー&心臓ばくばくのきょこさん。
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ゆみーのん様!!申し訳ありません!!これが限界でしたー!!!!
勝手にくっつけちゃうし…
そしてタイトルまで変えてしまうという荒技に…!!
かなり擽られるリクエストだったんですが、書いてみると意外と難しいっ!!
というか蓮の変装した格好が浮かばなくて、皆さんの想像にお任せすることにいたしましたー!!
カインセツに変装ってことになったらそれはそれで別物のお話になってしまいそうで、この素敵リクエストを裏切ってしまうのでは?!と思ったのですが、素のままは更に難しかったです!
多分、リクエストじゃなかったら途中で放り投げてたところでした(笑)
いやぁー!勉強になりました!!
ゆみーのんさん、こんなお話でよければ持ち帰ってやってください~!
そしてリクエスト作品は一応、フリーの予定ですので、もらってやるよ、飾ってやるよって方がいたら一声かけて頂けると嬉しいです。
さて、次のリクエスト…どれにしましょー?!長くなりそうなのが二つ…それをどちらかに絞って他ので書くかどうするか…(笑)
現在厳選中でございます。
とりあえずMy HOME終わらせるのが先の方がいいかしら?
今の構想通り進めるとMy HOME、30話になりそうなんですよねー(汗)
どうしましょ。悩みところです(笑)
こんなやつですが、これからもお付き合い頂けたら嬉しいです。