君と過ごす時間【年末】
「今年も一年、お世話になりました。」
テーブルを挟んだ向こう側でまるでお手本のように綺麗な所作で三つ指をついて頭を下げたキョーコを見て、蓮が柔らかい笑みを向けた。
「こちらこそ、ありがとう。最上さん。」
姿勢を正し、軽く頭を下げて、2人で微笑み合う。
「食べようか?折角作ってもらったのに、冷めたら困るし…。」
「あ、そ、そうですね!!お蕎麦は熱い内に食べないとっ!」
「「頂きます。」」
2人同時に手を合わせて年越しそばに手を付ける。
年末と言えば年越しそばですよね!と社と盛り上がっていたところで、蓮が年越しそばを食べたことがないと知ったキョーコは、社から依頼された事もあり、年末の忙しい時期に蓮の自宅にお邪魔して、年越しそばを振舞ったのだ。
「あったまるね。」
「はい。ふふ。」
「ん?どうかした?」
「いえ、何だか変な感じだなって。年越しを敦賀さんと過ごすなんて…。」
どこか嬉しそうに話すキョーコに目を細めて蓮も答える。
「そうだね。最上さんと過ごせるなんて嬉しいな。」
「あ、ありがとうございます!!そう言っていただけると嬉しいです。…でも、本当に良かったんですか?私なんかで…。他にもっと過ごしたい人がいたんじゃないですか?」
少し申し訳ないという表情で言いにくそうに話出したキョーコに、蓮は首を傾げる。
「どういう意味?」
「いぇ、あの…その…。社さんに言われるがままに、図々しくも来てしまいましたけど、本当はもっとご一緒したいと思ってる方がいらっしゃったんじゃないかと…」
キョーコは坊の時に聞いた好きな相手のことを思い出して胸の奥が締め付けられるように苦しくなった。
そんなキョーコの陰りに気付いた蓮が不思議そうに答えた。
「俺が一緒に年越しを過ごしたいと思ったのは最上さんだけだよ?」
「本当ですか?」
「うん。本当だよ。」
「ふふ。少しでも一緒に過ごしたいと思って頂けたなら嬉しいです。」
照れ臭そうに笑うキョーコに蓮は笑みを深めた。
「君以上に一緒に過ごしたいと思える人なんていないよ。」
「…え?」
ぽそりと呟いた蓮の言葉にトキンと心臓が音を立てた。
その音を聞かなかったことにして、キョーコはキョトンとした顔で蓮を見つめた。
「いや、何でも…。それに、他に一緒に過ごしたい人がいるのに、君と過ごすような酷い男と思われてるのかな?」
にっこりとそれはそれは綺麗に微笑まれて、キョーコはピシリと固まり、ブンブンと高速で首を振った。
「ととととととんでもないです!!敦賀さんに限ってそんなことはありえません!!わたしくが間違っておりましたぁぁ!!」
真っ青になって平伏す勢いのキョーコに苦笑を漏らして蓮は答えた。
「ほらほら、わかったから頭を上げて…。そんな風に思われてないのなら気にしないから。」
「はい…。」
いつの間に移動したのか部屋の隅の方にチョコンと頭を上げた
キョーコが座っているのをみて、蓮はぷっと吹き出した。
「ごめんごめん。本当に怒ってないから。」
くすくすと柔らかく笑う蓮を見て、キョーコも安心したようにほっと息を吐いて元の位置に戻ってきた。
何だか尊敬する先輩である敦賀蓮とのこの距離が急にくすぐったく感じたキョーコはほにゃんと顔を緩める。
「ん?どうしたの?」
そんなキョーコに気づいた蓮も同じように柔らかい表情でキョーコのその顔を覗き込んだ。
「いえ…あの。幸せだなぁ…って。」
照れ臭そうに言うキョーコの言葉に、蓮は一瞬フリーズする。
「…え?」
今の言葉だけだと勘違いしてしまいそうで、蓮の頭の中はキョーコの言った『幸せ』という言葉の意味をフル回転で推理する。
しかし、次のキョーコの言葉でそれは決定的になった。
「敦賀さんとこんな風に一緒に年越しが出来るなんて…幸せです。」
ふふ。と頬を染めたキューティーハニースマイルの前では蓮はもう打つ手がない。
キョーコの笑顔から溢れた花が蓮の顔面目掛けていくつもいくつも飛んで来る。
周りには誰もいない。二人っきりのこの空間。
一気に緊張が高まりカラカラになった喉から心臓が飛び出しそうなほど大きな音を立てる。
「最上さん…」
「はい。なんですか?」
「俺は、君が…」
嬉しそうな笑顔で微笑む彼女を独り占めにしたい。そんな想いが蓮を占拠し、言葉が自然とこぼれた。
「君が…好きだ。」
蓮の言葉の後に続く様に、最初の除夜の鐘が夜空に深く響き渡った。
(【カウントダウン】へ続く)
気に入ったら拍手お願いします!
*****
と言うことで今年最後のお話UP!!
年末年始スペシャルということで、いつも読みに来てくださる皆さんに感謝の気持ちを込めてフリー作品に致します。
一言言葉を掛けて下されば、お持ち帰り自由です。
今年一年、ありがとうございました!!
ちなみに、アメンバー申請は問題ない方は現時点で皆様承認しております!
承認されてない方は、アメンバー申請についての記事に書いている内容のメッセージがない為、保留中です。
メッセージおまちしております。
それでは、今年最後のお仕事に行って来まーす!
続きは年始にUP予定です☆
「今年も一年、お世話になりました。」
テーブルを挟んだ向こう側でまるでお手本のように綺麗な所作で三つ指をついて頭を下げたキョーコを見て、蓮が柔らかい笑みを向けた。
「こちらこそ、ありがとう。最上さん。」
姿勢を正し、軽く頭を下げて、2人で微笑み合う。
「食べようか?折角作ってもらったのに、冷めたら困るし…。」
「あ、そ、そうですね!!お蕎麦は熱い内に食べないとっ!」
「「頂きます。」」
2人同時に手を合わせて年越しそばに手を付ける。
年末と言えば年越しそばですよね!と社と盛り上がっていたところで、蓮が年越しそばを食べたことがないと知ったキョーコは、社から依頼された事もあり、年末の忙しい時期に蓮の自宅にお邪魔して、年越しそばを振舞ったのだ。
「あったまるね。」
「はい。ふふ。」
「ん?どうかした?」
「いえ、何だか変な感じだなって。年越しを敦賀さんと過ごすなんて…。」
どこか嬉しそうに話すキョーコに目を細めて蓮も答える。
「そうだね。最上さんと過ごせるなんて嬉しいな。」
「あ、ありがとうございます!!そう言っていただけると嬉しいです。…でも、本当に良かったんですか?私なんかで…。他にもっと過ごしたい人がいたんじゃないですか?」
少し申し訳ないという表情で言いにくそうに話出したキョーコに、蓮は首を傾げる。
「どういう意味?」
「いぇ、あの…その…。社さんに言われるがままに、図々しくも来てしまいましたけど、本当はもっとご一緒したいと思ってる方がいらっしゃったんじゃないかと…」
キョーコは坊の時に聞いた好きな相手のことを思い出して胸の奥が締め付けられるように苦しくなった。
そんなキョーコの陰りに気付いた蓮が不思議そうに答えた。
「俺が一緒に年越しを過ごしたいと思ったのは最上さんだけだよ?」
「本当ですか?」
「うん。本当だよ。」
「ふふ。少しでも一緒に過ごしたいと思って頂けたなら嬉しいです。」
照れ臭そうに笑うキョーコに蓮は笑みを深めた。
「君以上に一緒に過ごしたいと思える人なんていないよ。」
「…え?」
ぽそりと呟いた蓮の言葉にトキンと心臓が音を立てた。
その音を聞かなかったことにして、キョーコはキョトンとした顔で蓮を見つめた。
「いや、何でも…。それに、他に一緒に過ごしたい人がいるのに、君と過ごすような酷い男と思われてるのかな?」
にっこりとそれはそれは綺麗に微笑まれて、キョーコはピシリと固まり、ブンブンと高速で首を振った。
「ととととととんでもないです!!敦賀さんに限ってそんなことはありえません!!わたしくが間違っておりましたぁぁ!!」
真っ青になって平伏す勢いのキョーコに苦笑を漏らして蓮は答えた。
「ほらほら、わかったから頭を上げて…。そんな風に思われてないのなら気にしないから。」
「はい…。」
いつの間に移動したのか部屋の隅の方にチョコンと頭を上げた
キョーコが座っているのをみて、蓮はぷっと吹き出した。
「ごめんごめん。本当に怒ってないから。」
くすくすと柔らかく笑う蓮を見て、キョーコも安心したようにほっと息を吐いて元の位置に戻ってきた。
何だか尊敬する先輩である敦賀蓮とのこの距離が急にくすぐったく感じたキョーコはほにゃんと顔を緩める。
「ん?どうしたの?」
そんなキョーコに気づいた蓮も同じように柔らかい表情でキョーコのその顔を覗き込んだ。
「いえ…あの。幸せだなぁ…って。」
照れ臭そうに言うキョーコの言葉に、蓮は一瞬フリーズする。
「…え?」
今の言葉だけだと勘違いしてしまいそうで、蓮の頭の中はキョーコの言った『幸せ』という言葉の意味をフル回転で推理する。
しかし、次のキョーコの言葉でそれは決定的になった。
「敦賀さんとこんな風に一緒に年越しが出来るなんて…幸せです。」
ふふ。と頬を染めたキューティーハニースマイルの前では蓮はもう打つ手がない。
キョーコの笑顔から溢れた花が蓮の顔面目掛けていくつもいくつも飛んで来る。
周りには誰もいない。二人っきりのこの空間。
一気に緊張が高まりカラカラになった喉から心臓が飛び出しそうなほど大きな音を立てる。
「最上さん…」
「はい。なんですか?」
「俺は、君が…」
嬉しそうな笑顔で微笑む彼女を独り占めにしたい。そんな想いが蓮を占拠し、言葉が自然とこぼれた。
「君が…好きだ。」
蓮の言葉の後に続く様に、最初の除夜の鐘が夜空に深く響き渡った。
(【カウントダウン】へ続く)
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と言うことで今年最後のお話UP!!
年末年始スペシャルということで、いつも読みに来てくださる皆さんに感謝の気持ちを込めてフリー作品に致します。
一言言葉を掛けて下されば、お持ち帰り自由です。
今年一年、ありがとうございました!!
ちなみに、アメンバー申請は問題ない方は現時点で皆様承認しております!
承認されてない方は、アメンバー申請についての記事に書いている内容のメッセージがない為、保留中です。
メッセージおまちしております。
それでは、今年最後のお仕事に行って来まーす!
続きは年始にUP予定です☆