ドッキリ大作戦☆《後編》
大魔王と二人っきりになってしまった事実に、キョーコが内心で滂沱の涙を流している。
蓮は大きな溜息を吐いてその場で怒りを沈めようと試みていた。
『な、何とか…敦賀くんのお陰で助かったな…。』
『よ、よかった。一時はどうなることかと…。』
『で、でもこれ…放送出来ないんじゃ…まだ続けるの?』
ブリッジロックはげっそりしながらプロデューサーに指示を仰ぐと、『もちろんそのまま続行』の文字。
『俺、今日一日で、随分敦賀さんと不破君とビーグールのレイノの印象が変わったんだけど…放送できるの?これ…』
そんな風に零した慎一の言葉に、その場にいた全員が同意を示したのだった。
気を取り直そうと、一息吐いて、ちゃんと番組になるように進行しようと気持ちを入れ替えブリッジロックのメンバーがマイクに向き直る。
『さぁ、敦賀くんどう出る?!』
今までのことがなかったかのように聞こえるイヤホンからの声だが、キョーコは未だに大魔王の存在を側に感じているのだ。
気が気じゃない。
皆がドキドキしながら見守る中、蓮は、扉の前でフルフルと何度も頭を振り、そしてキョーコを振り返ると、溜息を一つついて意を決するとのそりと近付いた。
蓮がキョーコの顔を覗き込むが、その蓮の顔は傷付いた表情になっていた。
「君って子は…こんな目にあっていながらも、まだ呑気に寝てるなんて…。」
蓮がギリッと拳を握り締める。ガクンと膝をついて、キョーコの手を震える手で握り締め、唇を噛み締めて、崩れ落ちるように自身のジャケット越しに、キョーコの胸元に顔を埋めた。
『『『んな?!?!』』』
モニターで見ていたブリッジロックのメンバーがあんぐりと口を開く。
ーーーつつつつ、敦賀さん?!
キョーコも動揺していた。
「俺の気も…知らないで…。こんなに無防備な姿を俺以外のやつに晒して…。」
そう言って、蓮がふぅー。と、溜息を吐く。
「君は…本当に無防備で、無垢だから心配なんだ…。」
蓮の手がそっとキョーコの頬を包み込む。
ーーーつまり、子供っぽいとか…そういうことを言いたい訳よね?
キョーコは内心で納得する言葉に置き換える。
「不破に言われた言葉に未だに囚われたままで…。君は誰よりも魅力があるのに、そんなことに、気付きもしないで、無意識に男を誘って煽るんだ。」
ーーーあ、煽る??誘うってなんのこと??
蓮が苦虫を潰したような顔でキョーコに囁く。
「俺以外の男に、心を許さないで…俺以外の男にそんな姿を見せないでくれ…。君の魅力なんて…本当は誰にも見せたくないのに…俺だけのものにしたいのに…。」
ーーー?????
キョーコの頭の中は理解出来ない言葉に埋め尽くされ、疑問符を沢山浮かべたのだった。
蓮の言葉に、モニタールームのメンバーが驚きの表情をみせる。
敦賀蓮が恋のライバルなんて…リーダーである光に勝ち目があるのだろうか?と、慎一と雄生は顔を引き攣らせ、光はぼうっと放心状態で画面を見つめた。
すると、そんなメンバーの気持ちも知らないスタッフがプロデューサーからもらった指示通りにカンペを見せる。
それに気付いた慎一は、内心で溜息を吐いて、使い物にならないリーダーの代わりに指示を出す。
「よーし!京子ちゃん!少し声をあげながら寝返り打ってみて!」
その号令を受けてテレビであることを思い出したキョーコがモニターの中で寝返りを打つ。
「うぅ…ん…。」
そんな声にキョーコの頬を掴んでいた蓮の手がピクリと反応した。
キョーコを無表情で蓮が見下ろす。
「君は…どこまで俺を煽れば気が済むのかな?」
キョーコの声に、ふぅーーー。と大きく溜息を付いて、蓮は、『全く…君って子は…。』と呟いて、ふわりと困ったような嬉しそうな顔で漸く微笑んだ。
漸く蓮の顔から怒りがなくなって来たことに安堵を覚えたメンバーに調子が戻ってくる。
『よーし!今までにない感じや!!京子ちゃんもう一押し!もう少し顔を天井に向けて!』
「…んっ。」
キョーコが指示とおり少しだけ頭を動かして、天井に向けると、キスをねだるような顔に蓮からは見えた。
驚きで目を見開いた蓮が、少しだけ間を空けてふっと柔らかい笑みを浮かべる。
そしてそろっと、キョーコの唇に指を滑らせた。
次のプロデューサーの指示を受けたブリッジロックのメンバーは光の反応を伺うように気まずそうにみるが、そんな二人の視線に気付いた光は、精一杯の笑顔を作って、プロとして仕事モードに入り明るく言った。
「じゃあ、京子ちゃん、そのまま敦賀くんの指をハムッと咥えてみようか!」
ーーーは、はいぃぃぃぃ?!
キョーコは背中に一気に冷や汗が吹き出るのを感じながら、出された指示通りに遠慮気味に、蓮の指をはむっと咥えた。
蓮の動きが一瞬フリーズする。
ーーーは、恥かしい~!!って、この後どうしたら良いのぉ?!?!
キョーコが内心絶叫を上げていると、蓮がその指をそっと口の中にねじ込んで来た。
「食べたいの?」
「ふ…ん。」
思わず漏れた声に恥ずかしさを感じながら、差し込まれた蓮の指を歯で噛まないように気をつけて、咥えたままぺろりと舐めてみた。
「っ!!!!」
蓮が顔を真っ赤に染めてその指を一気に引き抜く。
キョーコの舌の感触が今もまだ残っており、蓮は、もう一方の手で隠すように包み込む。
どくどくと鳴る心臓。
開いたままの唇が蓮を誘う。
「また君は…そんな表情で俺を誘って…。」
「う…ん…」
恥ずかしさを紛らわす為に、キョーコは寝返りを打つと、蓮は優しい顔をキョーコに向けた。
「頭の位置が落ち着かないのかな?」
そう呟いて、ソファの前に腰を下ろした蓮がキョーコの頭をそっと持ち上げ、腕を中に差し込んだ。
「う…ん…?」
『『『んな?!』』』
ーーーこ、これは何かしら?急に敦賀さんの香りが近付いたような?あ…ヤバイは…これは敦賀セラピー効果絶大よ…。もっと…なんて…思っちゃう…。
キョーコが無意識に擦りっと蓮に近寄ると、蓮が嬉しそうに破顔する。
そのまま足の下にも腕を差し込んだ蓮は、キョーコが起きないように気を付けながらそっと抱え上げて、お姫様抱っこの状態で、ソファに腰掛けた。
キョーコの身体が蓮の身体に座り蓮の肩にキョーコの頭が乗る。
ーーーうわっ!え?!一体何?!何事?!
急に抱えられたことで驚いたキョーコは、一瞬目を開けそうになるが必死で堪える。
力を抜いている為、蓮の肩の上でカクンと頭が後ろに倒れる。
モニターを見ていた三人は口をあんぐり開けるぐらいしか反応出来なかった。
蓮の甘やかな表情から、どれだけキョーコを大切に愛しく想っているかが伝わってくる。
光は、敗北感を感じていた。
蓮のキョーコへの思いには到底叶わない…そんな気がした。
そんな三人は次の指示がカンペで出てることに気づくのが遅れてしまった。
コンコンと合図され、目を向け、雄生がキョーコに慌てて指示を出す。
『きょ、京子ちゃん、寝言っぽく敦賀さんを呼んで幸せそうに敦賀さんの夢をみているように装って。』
「ん…るがっさ…」
キョーコに呼ばれたことで、蓮がドキリと心臓を跳ねさせて、キョーコを見る。
「ん…ちゃんと…食べなきゃ…ふふ。ダメですよ?」
ふにゃふにゃと顔を緩めたキョーコが舌足らずな声でたどたどしく寝言を言うのを聞いた蓮は、一瞬無表情になったのち、プチンと自分の中の何かが切れる音を聞いた。
「うん。ちゃんと食べるから…ご褒美…頂戴?」
そう言って、蓮は、とうとうキョーコの唇に自分の唇を重ねたのだった。
『『『なっ!!!!!』』』
モニターを見ていた三人組が石化する。
ーーー?!?!?!?!?!?!
キョーコの内心はパニックだ。
ーーーな、なななな何事?!
突然視界が暗くなり、唇に何かが当たっている気がする。
今まで感じたことのない柔らかくてくせになりそうな甘さを持つ何かが、キョーコの唇を覆っている。
甘い痺れが全身を駆け巡り、身体がピクンと反応した。
そして、熱い蓮の吐息を感じた瞬間、それがキスなのだと悟って、キョーコの頭は考えることを拒否した。
ずっと封じ込めようとしていた蓮への思いがこのままなら溢れ出してしまいかねない。
現実逃避をすることで、逃げようとしたのだ。
しかし、蓮はそれを許さずそんなキョーコの意識とともに舌を絡め取る。
「ふぅ…ん…」
思わず漏れるキョーコの声を受けて、蓮の手がキョーコの身体を包み込み、ゆっくりとソファにキョーコを沈める。
そんな映像を見せられて、完全に固まってしまったメンバーの目に、またもやカンペが見せられる。
そこには『グッショブ!京子!!』と、書かれていたのだった。
ーーコンコン。
キョーコと蓮の二人っきりの楽屋にノックの音が響いても、暫くは離れずキョーコの唇を夢中で堪能する蓮。
甘い蓮からのキスに心も身体も完全に溶かされてしまったキョーコは、何時の間にかされるがまま蓮のシャツを掴んで受け入れていた。
ーーーコココココン、コココココココココン。
中々開かないドアに痺れを切らせたようなノックがしつこく響き、漸く蓮は、キョーコの唇から名残惜しげに唇を離した。
キョーコの戸惑いがちに開かれた潤んだ瞳を覗き込んで、ふっと柔らかい笑みを浮かべて額を合わせ、キスの余韻に蓮は浸かる。
ーーコンココココンココココンココココココン
鳴り響くノックに雰囲気をぶち壊され、チッと舌打ちして蓮がのそりと起き上がり、キョーコから離れる。起きあがろうとしたキョーコを制して、蓮がキョーコにそっと、ボタンを外したと伝えた。
ずっと起きていたキョーコは蓮が外したんじゃないことを知っていたが、外されていたことを見られたことに、真っ赤になって、今初めて気付いたように装って、慌ててボタンをとめた。
キョーコが全てボタンをとめ終わったのを見届けて、キョーコに掛けていたジャケットを羽織ると、キョーコの頭を撫でて、蓮は扉を開けた。
するとそこには、ドッキリの看板を持った社長がニンマリ顔で立っていたのだ。
一瞬思考が停止して蓮が固まる。
「…は?」
そしてキョーコも驚愕の表情で固まっていた。
「へ?!しゃ、社長??」
番組の企画と聞いていたのに、何故ローリィが立っているのかキョーコには理解出来ない。
「はははは!大成功だ!!いい映像が撮れたな。これで暫くは2人で遊べるなぁ~。」
ニンマリ顔でニヤニヤと笑うローリィに、蓮の顔が引き攣る。
「あの…一体どこからどこまでがドッキリだったんですか?」
「ん?最初から最後までだぞ?お前の面白い映像が撮りたいというんでな、撮らせてやったんだ。最高のシチュエーションを準備してな。…まぁ途中予想外な人物たちのせいで違う方向に行きかけたけどな、間に合って良かった良かった。」
ニヤリと笑ったローリィに蓮は、怒りの形相で睨みつける。
「良かった!じゃ、ありませんよ!!もう少しで最上さんが襲われるとこだったんです!!なんで止めてくれなかったんですか!!」
「なんだ?最終的に本当に襲ったやつがそれを言うか?」
「んなっ?!」
「最上君が寝てるのを良いことに好き放題しやがって。」
「ちょっと…まさか…。」
キョーコの顔が真っ赤に染まる。
「ドッキリだと言っただろう?当然色んな角度からバッチリ証拠ビデオを撮ってるぞ。」
「んなっ!すぐに消してください!!」
「何でだよ。消さねぇよ!」
「あれには、最上さんが脱がされそうになったとこまで撮られてるんですよ!!」
「なぁんだ。そんなことか…大丈夫だよ。もしもの時のために、最上君は下にしっかり肌色のインナーを着込ませてたからな。」
「…は??」
「理性のヒモが枯れた輪ゴムのお前相手に暴走されたら堪らんだろうが!だからしっかり着込ませてたんだよ。」
「な、な…っ!!」
そんなこととは知らされてなかったキョーコが驚く。
蓮も耳を真っ赤にしていた。
「しかし、本当にお前はへたれなんだな。好きな女がはだけた姿でいるってのに、じっくり肌を観察する余裕もないってか。ちょっと見ればインナー着てることくらいわかっただろうが。」
呆れたようにやれやれと頭を振るローリィを睨みつけて、蓮は、バタンと扉を勢い良く閉めて、鍵をかけた。
「つ、敦賀さん?!」
社長を邪険に扱う蓮に驚いてキョーコが声をかけると、蓮はキョーコに近付き、そっと身体をソファに横たえた。
「つ、敦賀さん?!」
「ん?ドッキリってことは、君は仕掛け人?ずっと起きてたの?」
「う…は、はい…。」
「じゃあ…さっきキスに答えてくれたのも、ドッキリ??」
「へ?!」
蓮の質問に、間抜けな顔をしたキョーコの顔に蓮の顔が近付く。
「どうせなら、もっと見せつけちゃおうか?」
そう言って、蓮は、キョーコに唇を合わせた。
「ふぅん…。」
鼻から抜ける声に理性を試されながら、蓮はキョーコに囁いた。
「全部…起きてたんだ?あいつにあんなことされそうになった時も…」
「あ…は…い。」
キョーコは真っ赤になって頷いたので、蓮は、大きくため息を吐いた。
「あぁいう時は逃げないとダメだろう?本当に襲われたらどうするつもりだったんだ。」
「でも…信じてたんです。敦賀さんなら絶対に助けてくれるって…」
キョーコがしゅんとしたままおずおずと蓮を上目遣いに見上げる。
「全く…君って子は…本当にいつ俺から襲われても知らないからな。」
「なっ!お、襲うって…」
「聞いてたんだろ?俺の嫉妬混じりの言葉を全部…。」
「し、嫉妬混じり?!そ、そんな…だ、第一敦賀さんが何で私で嫉妬なんて…」
「ん。もういいよ。黙って…」
蓮は、そういいながらキョーコに唇を合わせるのだった。
「ん…敦賀…さん…っ。」
キスの合間にキョーコが甘い声で蓮の名を呼ぶ。
「ん。キョーコ…。」
それに答えるように蓮もキョーコの名を呼ぶのだった。
最後まで見ていられなかった光がガタンと立ち上がる。
無言でそのまま出て行く光を、雄生が追いかけようと立ち上がるが、慎一がその腕を掴んで、ふるふると首を振って止めた。
「そっとしとこう。」
その慎一の言葉に頷いて、雄生もその場に腰掛けて、画面の中の二人を見つめた。
「なんか、京子ちゃんって普通のどこにでもいる女の子って思ってたけど、敦賀さんといい、不破尚といい、ビーグールのレイノって…あんなイケメン揃いにアプローチされてたらリーダー勝ち目ないの当たり前だよな…なんか…とんでもないメンバーに好かれてる京子ちゃんにびっくりしたわ。」
「あぁ、だよなぁ。しかも抱かれたい男No.1の敦賀さんまでこんなに夢中にさせるんだもんな…。」
凄いよな…。そう呟いて、蓮の色気たっぷりの表情を見て固まる。
「あ、あかん!俺、これ以上はみきれへん!!」
慎一が真っ赤な顔になって立ち上がった。
「な、何や!あの敦賀さんの色気たっぷりの顔はっ!!下手したら俺、敦賀さんに惚れてまうわ!!」
映像を見ていた二人が顔を真っ赤に染めて、モニターから逃げるように部屋を飛び出すのだった。
このドッキリで撮られた映像が、いつどこで使われることになるのか…それはローリィ以外は誰も知らない。
でも使われるのはもしかしたら、近い未来…なのかもしれない。
END
☆面白いと感じて下さった方がもしいたら拍手お願いします(^-^)/
*****
こ、こんなお話で良かったかしら??(汗)
ブログ半年記念andアメンバー様400人記念ふ~りんさんからいただいたリクエスト!!
『風月さんのお馬さん代表は、筆頭が松で、後は光君ですが、レイノは出ませんか?
レイノに絡まれたキョーコちゃんに後から現れたビーグルの面々や馬鹿松から、闇の帝王が救出次いでに頂いちゃって欲しいなあ~♪とか思います(キョーコちゃんナツスタイルでも良いかも)
ゴチャ×2しちゃいましたがヨロシクお願いします。』
ってことでした!!
ふ~りん様いかがでしたでしょうか?!
レイノはやっぱり難しい~!!
風月とは相性が悪いようです!
何故なら性格を掴めてないので、どう動かせば良いのかがはっきりしないのですよー!!
でもでも精一杯書かせていただきました!!
このお話は、ふ~りん様と、あとこっそりミネラル様と、アメンバーの皆様に捧げます。
気に入った方がもしいた場合はご自由にお持ち帰り下さいませ♪
ではでは!またお会いいたしましょう♪(^-^)/
大魔王と二人っきりになってしまった事実に、キョーコが内心で滂沱の涙を流している。
蓮は大きな溜息を吐いてその場で怒りを沈めようと試みていた。
『な、何とか…敦賀くんのお陰で助かったな…。』
『よ、よかった。一時はどうなることかと…。』
『で、でもこれ…放送出来ないんじゃ…まだ続けるの?』
ブリッジロックはげっそりしながらプロデューサーに指示を仰ぐと、『もちろんそのまま続行』の文字。
『俺、今日一日で、随分敦賀さんと不破君とビーグールのレイノの印象が変わったんだけど…放送できるの?これ…』
そんな風に零した慎一の言葉に、その場にいた全員が同意を示したのだった。
気を取り直そうと、一息吐いて、ちゃんと番組になるように進行しようと気持ちを入れ替えブリッジロックのメンバーがマイクに向き直る。
『さぁ、敦賀くんどう出る?!』
今までのことがなかったかのように聞こえるイヤホンからの声だが、キョーコは未だに大魔王の存在を側に感じているのだ。
気が気じゃない。
皆がドキドキしながら見守る中、蓮は、扉の前でフルフルと何度も頭を振り、そしてキョーコを振り返ると、溜息を一つついて意を決するとのそりと近付いた。
蓮がキョーコの顔を覗き込むが、その蓮の顔は傷付いた表情になっていた。
「君って子は…こんな目にあっていながらも、まだ呑気に寝てるなんて…。」
蓮がギリッと拳を握り締める。ガクンと膝をついて、キョーコの手を震える手で握り締め、唇を噛み締めて、崩れ落ちるように自身のジャケット越しに、キョーコの胸元に顔を埋めた。
『『『んな?!?!』』』
モニターで見ていたブリッジロックのメンバーがあんぐりと口を開く。
ーーーつつつつ、敦賀さん?!
キョーコも動揺していた。
「俺の気も…知らないで…。こんなに無防備な姿を俺以外のやつに晒して…。」
そう言って、蓮がふぅー。と、溜息を吐く。
「君は…本当に無防備で、無垢だから心配なんだ…。」
蓮の手がそっとキョーコの頬を包み込む。
ーーーつまり、子供っぽいとか…そういうことを言いたい訳よね?
キョーコは内心で納得する言葉に置き換える。
「不破に言われた言葉に未だに囚われたままで…。君は誰よりも魅力があるのに、そんなことに、気付きもしないで、無意識に男を誘って煽るんだ。」
ーーーあ、煽る??誘うってなんのこと??
蓮が苦虫を潰したような顔でキョーコに囁く。
「俺以外の男に、心を許さないで…俺以外の男にそんな姿を見せないでくれ…。君の魅力なんて…本当は誰にも見せたくないのに…俺だけのものにしたいのに…。」
ーーー?????
キョーコの頭の中は理解出来ない言葉に埋め尽くされ、疑問符を沢山浮かべたのだった。
蓮の言葉に、モニタールームのメンバーが驚きの表情をみせる。
敦賀蓮が恋のライバルなんて…リーダーである光に勝ち目があるのだろうか?と、慎一と雄生は顔を引き攣らせ、光はぼうっと放心状態で画面を見つめた。
すると、そんなメンバーの気持ちも知らないスタッフがプロデューサーからもらった指示通りにカンペを見せる。
それに気付いた慎一は、内心で溜息を吐いて、使い物にならないリーダーの代わりに指示を出す。
「よーし!京子ちゃん!少し声をあげながら寝返り打ってみて!」
その号令を受けてテレビであることを思い出したキョーコがモニターの中で寝返りを打つ。
「うぅ…ん…。」
そんな声にキョーコの頬を掴んでいた蓮の手がピクリと反応した。
キョーコを無表情で蓮が見下ろす。
「君は…どこまで俺を煽れば気が済むのかな?」
キョーコの声に、ふぅーーー。と大きく溜息を付いて、蓮は、『全く…君って子は…。』と呟いて、ふわりと困ったような嬉しそうな顔で漸く微笑んだ。
漸く蓮の顔から怒りがなくなって来たことに安堵を覚えたメンバーに調子が戻ってくる。
『よーし!今までにない感じや!!京子ちゃんもう一押し!もう少し顔を天井に向けて!』
「…んっ。」
キョーコが指示とおり少しだけ頭を動かして、天井に向けると、キスをねだるような顔に蓮からは見えた。
驚きで目を見開いた蓮が、少しだけ間を空けてふっと柔らかい笑みを浮かべる。
そしてそろっと、キョーコの唇に指を滑らせた。
次のプロデューサーの指示を受けたブリッジロックのメンバーは光の反応を伺うように気まずそうにみるが、そんな二人の視線に気付いた光は、精一杯の笑顔を作って、プロとして仕事モードに入り明るく言った。
「じゃあ、京子ちゃん、そのまま敦賀くんの指をハムッと咥えてみようか!」
ーーーは、はいぃぃぃぃ?!
キョーコは背中に一気に冷や汗が吹き出るのを感じながら、出された指示通りに遠慮気味に、蓮の指をはむっと咥えた。
蓮の動きが一瞬フリーズする。
ーーーは、恥かしい~!!って、この後どうしたら良いのぉ?!?!
キョーコが内心絶叫を上げていると、蓮がその指をそっと口の中にねじ込んで来た。
「食べたいの?」
「ふ…ん。」
思わず漏れた声に恥ずかしさを感じながら、差し込まれた蓮の指を歯で噛まないように気をつけて、咥えたままぺろりと舐めてみた。
「っ!!!!」
蓮が顔を真っ赤に染めてその指を一気に引き抜く。
キョーコの舌の感触が今もまだ残っており、蓮は、もう一方の手で隠すように包み込む。
どくどくと鳴る心臓。
開いたままの唇が蓮を誘う。
「また君は…そんな表情で俺を誘って…。」
「う…ん…」
恥ずかしさを紛らわす為に、キョーコは寝返りを打つと、蓮は優しい顔をキョーコに向けた。
「頭の位置が落ち着かないのかな?」
そう呟いて、ソファの前に腰を下ろした蓮がキョーコの頭をそっと持ち上げ、腕を中に差し込んだ。
「う…ん…?」
『『『んな?!』』』
ーーーこ、これは何かしら?急に敦賀さんの香りが近付いたような?あ…ヤバイは…これは敦賀セラピー効果絶大よ…。もっと…なんて…思っちゃう…。
キョーコが無意識に擦りっと蓮に近寄ると、蓮が嬉しそうに破顔する。
そのまま足の下にも腕を差し込んだ蓮は、キョーコが起きないように気を付けながらそっと抱え上げて、お姫様抱っこの状態で、ソファに腰掛けた。
キョーコの身体が蓮の身体に座り蓮の肩にキョーコの頭が乗る。
ーーーうわっ!え?!一体何?!何事?!
急に抱えられたことで驚いたキョーコは、一瞬目を開けそうになるが必死で堪える。
力を抜いている為、蓮の肩の上でカクンと頭が後ろに倒れる。
モニターを見ていた三人は口をあんぐり開けるぐらいしか反応出来なかった。
蓮の甘やかな表情から、どれだけキョーコを大切に愛しく想っているかが伝わってくる。
光は、敗北感を感じていた。
蓮のキョーコへの思いには到底叶わない…そんな気がした。
そんな三人は次の指示がカンペで出てることに気づくのが遅れてしまった。
コンコンと合図され、目を向け、雄生がキョーコに慌てて指示を出す。
『きょ、京子ちゃん、寝言っぽく敦賀さんを呼んで幸せそうに敦賀さんの夢をみているように装って。』
「ん…るがっさ…」
キョーコに呼ばれたことで、蓮がドキリと心臓を跳ねさせて、キョーコを見る。
「ん…ちゃんと…食べなきゃ…ふふ。ダメですよ?」
ふにゃふにゃと顔を緩めたキョーコが舌足らずな声でたどたどしく寝言を言うのを聞いた蓮は、一瞬無表情になったのち、プチンと自分の中の何かが切れる音を聞いた。
「うん。ちゃんと食べるから…ご褒美…頂戴?」
そう言って、蓮は、とうとうキョーコの唇に自分の唇を重ねたのだった。
『『『なっ!!!!!』』』
モニターを見ていた三人組が石化する。
ーーー?!?!?!?!?!?!
キョーコの内心はパニックだ。
ーーーな、なななな何事?!
突然視界が暗くなり、唇に何かが当たっている気がする。
今まで感じたことのない柔らかくてくせになりそうな甘さを持つ何かが、キョーコの唇を覆っている。
甘い痺れが全身を駆け巡り、身体がピクンと反応した。
そして、熱い蓮の吐息を感じた瞬間、それがキスなのだと悟って、キョーコの頭は考えることを拒否した。
ずっと封じ込めようとしていた蓮への思いがこのままなら溢れ出してしまいかねない。
現実逃避をすることで、逃げようとしたのだ。
しかし、蓮はそれを許さずそんなキョーコの意識とともに舌を絡め取る。
「ふぅ…ん…」
思わず漏れるキョーコの声を受けて、蓮の手がキョーコの身体を包み込み、ゆっくりとソファにキョーコを沈める。
そんな映像を見せられて、完全に固まってしまったメンバーの目に、またもやカンペが見せられる。
そこには『グッショブ!京子!!』と、書かれていたのだった。
ーーコンコン。
キョーコと蓮の二人っきりの楽屋にノックの音が響いても、暫くは離れずキョーコの唇を夢中で堪能する蓮。
甘い蓮からのキスに心も身体も完全に溶かされてしまったキョーコは、何時の間にかされるがまま蓮のシャツを掴んで受け入れていた。
ーーーコココココン、コココココココココン。
中々開かないドアに痺れを切らせたようなノックがしつこく響き、漸く蓮は、キョーコの唇から名残惜しげに唇を離した。
キョーコの戸惑いがちに開かれた潤んだ瞳を覗き込んで、ふっと柔らかい笑みを浮かべて額を合わせ、キスの余韻に蓮は浸かる。
ーーコンココココンココココンココココココン
鳴り響くノックに雰囲気をぶち壊され、チッと舌打ちして蓮がのそりと起き上がり、キョーコから離れる。起きあがろうとしたキョーコを制して、蓮がキョーコにそっと、ボタンを外したと伝えた。
ずっと起きていたキョーコは蓮が外したんじゃないことを知っていたが、外されていたことを見られたことに、真っ赤になって、今初めて気付いたように装って、慌ててボタンをとめた。
キョーコが全てボタンをとめ終わったのを見届けて、キョーコに掛けていたジャケットを羽織ると、キョーコの頭を撫でて、蓮は扉を開けた。
するとそこには、ドッキリの看板を持った社長がニンマリ顔で立っていたのだ。
一瞬思考が停止して蓮が固まる。
「…は?」
そしてキョーコも驚愕の表情で固まっていた。
「へ?!しゃ、社長??」
番組の企画と聞いていたのに、何故ローリィが立っているのかキョーコには理解出来ない。
「はははは!大成功だ!!いい映像が撮れたな。これで暫くは2人で遊べるなぁ~。」
ニンマリ顔でニヤニヤと笑うローリィに、蓮の顔が引き攣る。
「あの…一体どこからどこまでがドッキリだったんですか?」
「ん?最初から最後までだぞ?お前の面白い映像が撮りたいというんでな、撮らせてやったんだ。最高のシチュエーションを準備してな。…まぁ途中予想外な人物たちのせいで違う方向に行きかけたけどな、間に合って良かった良かった。」
ニヤリと笑ったローリィに蓮は、怒りの形相で睨みつける。
「良かった!じゃ、ありませんよ!!もう少しで最上さんが襲われるとこだったんです!!なんで止めてくれなかったんですか!!」
「なんだ?最終的に本当に襲ったやつがそれを言うか?」
「んなっ?!」
「最上君が寝てるのを良いことに好き放題しやがって。」
「ちょっと…まさか…。」
キョーコの顔が真っ赤に染まる。
「ドッキリだと言っただろう?当然色んな角度からバッチリ証拠ビデオを撮ってるぞ。」
「んなっ!すぐに消してください!!」
「何でだよ。消さねぇよ!」
「あれには、最上さんが脱がされそうになったとこまで撮られてるんですよ!!」
「なぁんだ。そんなことか…大丈夫だよ。もしもの時のために、最上君は下にしっかり肌色のインナーを着込ませてたからな。」
「…は??」
「理性のヒモが枯れた輪ゴムのお前相手に暴走されたら堪らんだろうが!だからしっかり着込ませてたんだよ。」
「な、な…っ!!」
そんなこととは知らされてなかったキョーコが驚く。
蓮も耳を真っ赤にしていた。
「しかし、本当にお前はへたれなんだな。好きな女がはだけた姿でいるってのに、じっくり肌を観察する余裕もないってか。ちょっと見ればインナー着てることくらいわかっただろうが。」
呆れたようにやれやれと頭を振るローリィを睨みつけて、蓮は、バタンと扉を勢い良く閉めて、鍵をかけた。
「つ、敦賀さん?!」
社長を邪険に扱う蓮に驚いてキョーコが声をかけると、蓮はキョーコに近付き、そっと身体をソファに横たえた。
「つ、敦賀さん?!」
「ん?ドッキリってことは、君は仕掛け人?ずっと起きてたの?」
「う…は、はい…。」
「じゃあ…さっきキスに答えてくれたのも、ドッキリ??」
「へ?!」
蓮の質問に、間抜けな顔をしたキョーコの顔に蓮の顔が近付く。
「どうせなら、もっと見せつけちゃおうか?」
そう言って、蓮は、キョーコに唇を合わせた。
「ふぅん…。」
鼻から抜ける声に理性を試されながら、蓮はキョーコに囁いた。
「全部…起きてたんだ?あいつにあんなことされそうになった時も…」
「あ…は…い。」
キョーコは真っ赤になって頷いたので、蓮は、大きくため息を吐いた。
「あぁいう時は逃げないとダメだろう?本当に襲われたらどうするつもりだったんだ。」
「でも…信じてたんです。敦賀さんなら絶対に助けてくれるって…」
キョーコがしゅんとしたままおずおずと蓮を上目遣いに見上げる。
「全く…君って子は…本当にいつ俺から襲われても知らないからな。」
「なっ!お、襲うって…」
「聞いてたんだろ?俺の嫉妬混じりの言葉を全部…。」
「し、嫉妬混じり?!そ、そんな…だ、第一敦賀さんが何で私で嫉妬なんて…」
「ん。もういいよ。黙って…」
蓮は、そういいながらキョーコに唇を合わせるのだった。
「ん…敦賀…さん…っ。」
キスの合間にキョーコが甘い声で蓮の名を呼ぶ。
「ん。キョーコ…。」
それに答えるように蓮もキョーコの名を呼ぶのだった。
最後まで見ていられなかった光がガタンと立ち上がる。
無言でそのまま出て行く光を、雄生が追いかけようと立ち上がるが、慎一がその腕を掴んで、ふるふると首を振って止めた。
「そっとしとこう。」
その慎一の言葉に頷いて、雄生もその場に腰掛けて、画面の中の二人を見つめた。
「なんか、京子ちゃんって普通のどこにでもいる女の子って思ってたけど、敦賀さんといい、不破尚といい、ビーグールのレイノって…あんなイケメン揃いにアプローチされてたらリーダー勝ち目ないの当たり前だよな…なんか…とんでもないメンバーに好かれてる京子ちゃんにびっくりしたわ。」
「あぁ、だよなぁ。しかも抱かれたい男No.1の敦賀さんまでこんなに夢中にさせるんだもんな…。」
凄いよな…。そう呟いて、蓮の色気たっぷりの表情を見て固まる。
「あ、あかん!俺、これ以上はみきれへん!!」
慎一が真っ赤な顔になって立ち上がった。
「な、何や!あの敦賀さんの色気たっぷりの顔はっ!!下手したら俺、敦賀さんに惚れてまうわ!!」
映像を見ていた二人が顔を真っ赤に染めて、モニターから逃げるように部屋を飛び出すのだった。
このドッキリで撮られた映像が、いつどこで使われることになるのか…それはローリィ以外は誰も知らない。
でも使われるのはもしかしたら、近い未来…なのかもしれない。
END
☆面白いと感じて下さった方がもしいたら拍手お願いします(^-^)/
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こ、こんなお話で良かったかしら??(汗)
ブログ半年記念andアメンバー様400人記念ふ~りんさんからいただいたリクエスト!!
『風月さんのお馬さん代表は、筆頭が松で、後は光君ですが、レイノは出ませんか?
レイノに絡まれたキョーコちゃんに後から現れたビーグルの面々や馬鹿松から、闇の帝王が救出次いでに頂いちゃって欲しいなあ~♪とか思います(キョーコちゃんナツスタイルでも良いかも)
ゴチャ×2しちゃいましたがヨロシクお願いします。』
ってことでした!!
ふ~りん様いかがでしたでしょうか?!
レイノはやっぱり難しい~!!
風月とは相性が悪いようです!
何故なら性格を掴めてないので、どう動かせば良いのかがはっきりしないのですよー!!
でもでも精一杯書かせていただきました!!
このお話は、ふ~りん様と、あとこっそりミネラル様と、アメンバーの皆様に捧げます。
気に入った方がもしいた場合はご自由にお持ち帰り下さいませ♪
ではでは!またお会いいたしましょう♪(^-^)/