風月も大好きなミネラルさん。最初はピグのライフで仲良くなって、お話しててある日ミネラルさんも蓮の4コマを書いたことがあることを知り、それが見たいとおねだりしたところ、ブログにて公開して下さることになりました。
そして、その4コマを見て、風月は思ったのです。
『グッジョブ!自分!!!!』
ミネラルさんのイラストは悶えまくりです!!
思わずコメント残したくなるくらい大興奮でいつも拝見してます!!
そんなミネラルさんが、風月のコーンの森で…に、イラストを付けて下さりご紹介したのですが、なんと、その時に、ミネラルさんのお名前をミラクルと間違えて掲載しまうという大失態をおかしてしまったのです!!
これはいかん!!謝罪をせねばっ!と、ちょうどブログ半年記念&アメンバー様400人達成リクエストを募集してたので、お話のリクエストをお願いしてみました!!
そうして頂いた素敵リク☆
ミネラルさんに、捧げるのはリクエストに150%ぐらい応えるつもりで書かねばっ!
…と、思っていたのに、実際にはリクエストから少しだけずれたお話に…これじゃあリクエストに80%ぐらいしか答えれてないじゃないかぁ!!
ということで、リベンジしました!!(笑)
前回とは全く別物のお話ですけど、お楽しみ頂けたら幸いです♪
とか言いながら、気に入られなかったら目も当てられないですね(笑)
気に入って頂けるかな??ドキドキです!!
では、どうぞお楽しみ下さいませ♪
*****
おまじない
「兄さん?ご飯出来たわよ?運ぶからテーブル片付けて。兄さ…あら?」
セツカに扮しているキョーコは兄であるカインに声を掛けた。
するとそこには眠り込んでしまったカインがいた。
敦賀蓮としてのスケジュールをこなしながら、カインとしても生活している蓮の疲れは半端なものではないだろう。
敦賀蓮とは、今や日本でも知らぬものはいないというほどの今が旬の大人気俳優だ。
普段でも分単位のスケジュールをこなしているのに、そこにカインのスケジュールをねじ込まれているのだから疲れが溜まっていたとしても、何の疑問もない。
しかし、すぅすぅと気持ち良さそうに眠る顔には、カインというよりは、いつもの蓮よりも若干幼い感じがある。
カインの姿でありながらそんなあどけなさを残す寝顔に、キョーコから笑みが零れた。
「お疲れ…なんですね?」
そっと微笑み、クローゼットからブランケットを取り出す。
ホテルに備え付けられたイスにもたれかかるようにして眠ってしまっている蓮の身体にそっとブランケットをかけるが、その時、蓮の頭がガクンと後ろに倒れた。
「これじゃあ、首を痛めちゃうわ。」
キョーコはそのまま眠り続ける蓮を見て顔を顰める。
疲れているのがわかっているため、ゆっくりと休んで欲しいと思うが、それで首を傷められては元も子もない。
キョーコは、暫らく思案して、もう一つの同じタイプの椅子を蓮の隣に並べた。隣の椅子に座っても、高さが足りないため、キョーコは二つの椅子の肘掛けの上に腰掛けた。
「ちょっと…無理があるかしら?」
肘掛けの上に座ると、やはりというかなんと言うか、椅子に座っている蓮が窮屈そうだ。
本当はこうやって肩を貸そうかと思っていたのだが、思いの外高くなってしまった為、諦めて椅子から降りる。
「うーん。せめて、もう少し背もたれが高ければ…。あ、そうだ!」
またもや思案顔に入ったキョーコは、何かを思いつくと、今度は蓮の背後に立って蓮の頭をそっと、自分の方に引き寄せた。
しかし、そうすると、ちょうどキョーコの胸を貸す形になり、キョーコはいたたまれなくなってしまった。
「うぅ…。もう少し胸が大きかったら良かったんだけど、私胸が小さいし、こんなことされても…って感じよね?」
はぁー。と、残念そうにため息をつくキョーコ。
「敦賀さんもやっぱり胸はないよりある人の方が良いわよね…。」
小さなため息とともに寂し気に言葉が零れた。
「きっと敦賀さんの恋人になる人は誰もが憧れるような美しくて完璧なスタイルの持ち主の美人さんなんだわ。やっぱり…わたしなんかどう考えても失恋確定よ…。はぁー。どうして敦賀さんなんて好きになっちゃったんだろう?」
蓮の頭を胸にだきしめながら、蓮の髪をサラサラと撫でる。
「うう…やっぱり気持ちがいい。敦賀さんの髪って本当に触ると癖になっちゃう…な。」
蓮の頭が位置を探すようにグリンと動いて止まる。
動いた時に跳ねた心臓はそのままに、キョーコは蓮の髪を愛おしそうに梳く。
「兄さん大好きな設定なんだから、こんなことしててもおかしくないわよね?きっとセツカは兄さんの為なら何だってしちゃうのよ。」
言いながら思い出すのは、最近の様子のおかしい彼の姿。
役とも、敦賀蓮とも違う別人を感じさせる何か…。
彼の中で何かが目覚めている。そして、そのことに彼が苦しんでいるのがわかる。
「私も、貴方の為になるなら何だって…しちゃえるんですよ?」
眠っている彼の寝顔を見つめて言う。
「一人で苦しんだりしないで下さいね?その為にお守りの私がいるんですから。私を頼って下さい。貴方の心を守る為なら何だってしますから…。」
「…ん。」
返事をするように返された声にクスリと微笑んで、後ろから抱き締めるようにして、蓮の頭を支える。
「私を頼って下さいね?」
微笑んで、そっと、蓮の額に口付けを落とした。
その途端、蓮の身体がピクンと動いた。
「ふふ。敦賀さんが元気になるおまじないです。」
「う…んっ。」
「…あら?兄さん。起きたの?」
蓮から声が漏れると同時に、目が開く。
ぼぉっと、キョーコを見つめている蓮に、もしかしてさっきのばれたのかしら?
と、ドキドキしていたら、蓮がちょいちょいと、指を動かして顔を近付けるように指示してきた。
「え?何?兄さ…!!!!」
言われるがまま、顔を覗き込むように近付けたキョーコの頭を片手で抑え込み、蓮はそのまま伸び上がって、キョーコの唇に己のそれを重ねた。
一瞬の間の後、ちゅっという密かなリップ音を鳴らして蓮の顔が元の位置に収まる。
一瞬何が起きたかわからず、固まってしまったキョーコの下から蓮は顔を覗き込んだまま、ニッと笑った。
「おまじないならこっちの方がいい。」
「なっ?!?!?!?!!!!!」
真っ赤な顔して壁に体当たりする勢いで離れたキョーコに、蓮はクスリと笑う。
「お前がたまにこんなおまじないをしてくれるなら、俺は俺でいられるかもな。」
「い、今の…き…す…。」
役のカインとして言う蓮とは対象的に、起きた出来事が衝撃的過ぎてどうしても役になりきれないキョーコが、真っ赤になって呟いた。
「…嫌だった?」
そんなキョーコに、蓮はカインとしてではなく、敦賀蓮として問いかけた。
「いえ…嫌とか…そんなんじゃなくて…あの、びっくりしたというか…なんて…いうか…」
キョーコの瞳からポロっと涙が零れた。
ギョッとして蓮がキョーコに近付く。
「も、最上さん?!」
ふぇーんと、突然泣き出してしまったキョーコを蓮はどうしていいかわからずに恐る恐る抱き締める。
「ご、ごめん。き、気持ち悪かった?」
自分の言葉に凹みながら問いかけたが、キョーコはそれにはブンブンと首を横に振って否定した。
「じゃあ、嫌だった?」
それにも首を振って否定するキョーコ。
「だったら、嬉しかった…?」
僅かな期待を込めて問いかけてみると、キョーコはピタリと止まって、否定も肯定もしなかった。
代わりに泣き声がさらに大きくなる。
「ご、ごめん。あの、最上さんが『貴方の為なら何だって出来る』って言ったのを聞いて調子に乗ったみたいだ。」
その言葉に、キョーコはギシリと、固まってふるふると震えながら物凄い形相でギギギギギと蓮を見上げた。
まるで幽霊でもみてしまったかのようなその表情に蓮は生唾を飲む。
「い、いつから起きてたんですかぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「あ、えっと…最上さんが肘掛けに腰掛けた時から…かな?」
「ほぼ最初からじゃないですかぁぁぁぁ!!!!!!」
キョーコは、顔から火が出るほど真っ赤になった。
ーーーじゃあ、敦賀さんの頭を抱きしめたとこも、告白まがいの言葉も、全部全部聞いてたってこと?!
キョーコはそこまで考えるとさぁっと顔から血の気が引くのを感じた。
きっと真っ青になってるに違いない。
「わ、忘れて下さい!!」
キョーコは真っ青の顔のまま、蓮に詰め寄った。
「後生ですから、先ほどのことは全て忘れて下さい!!申し訳ございませんでしたぁ!!」
ハハァーと、頭を床に擦り付けるキョーコを慌てて止めに入る蓮。
「ちょ、ちょっと、最上さん?!」
「お願いします!忘れて下さい!あれは本当にただの子供の戯れ言と思って。」
土下座をしながらカタカタと震えるキョーコを蓮は堪らずに引き寄せて抱きしめた。
「つ、敦賀さん?!」
ギュッと蓮の抱き締める腕に力が篭る。
「忘れないよ。忘れられるわけないだろ?こんなに、嬉しいのに…。」
「う、嬉しい…?」
キョーコは、蓮を不思議そうに見上げた。
じっと自分を見つめる蓮の熱い目にキョーコの心臓が跳ね上がる。
顔が近くて心臓が破裂しそうだ。
すると蓮がキョーコの頬に手を伸ばし、スルッと髪の中に指を差し込んできた。
傾く蓮の顔が徐々に近付き、キョーコはその顔をみつめながら『あ…キス…される…』と、本能的にわかったが、そのまま逆らえない引力でも働いていたのか、近付く顔から逃れることが出来なかった。
重なった唇に、キョーコは不意に思う。
ーーーあ、ファーストキスだ…。
どこまでも甘く優しいキスに、キョーコの硬くなっていた心が溶けて行く。
ゆっくりと瞳を閉じて、蓮の温もりを感じながら、蓮の服をキュッと掴んだ。
蓮の腕に縋り付くキョーコに、受け入れてもらえた喜びを感じて、蓮の心が震えた。
離れた唇に、ぼうっと惚けたキョーコの顔。
蓮を見上げたその瞳には戸惑いと不安が見え隠れする。
蓮はそんなキョーコをそっと抱きしめて呟いた。
「君は、俺を俺自身として始めて見てくれた子だから。そんな俺を好きだと言ってくれて嬉しかったんだ。」
「敦賀さん?」
蓮の身体が僅かに震えていることに気付いて、キョーコはそっと、その背中に手を延ばして抱きしめた。
「俺は、ずっと孤独だった。生きる為に、俺は自分自身の心を殺そうとしていたんだ。」
「……」
「でも、君は俺を孤独から救い出してくれた。暗くて深い俺の闇の中に、光を与えてくれたんだ。」
「そんな…私は…何も…。」
「君は、無自覚だろうけどね。俺の傷付いてボロボロになった心を癒してくれたのは君なんだ。今だって…俺は君がいなければBJの役に飲まれていただろう。本当の俺は…BJに、限りなく近い…。この役をやることで、自分が今の自分を見失うことが怖かった。」
キョーコは黙って蓮の話に耳を傾けた。
「BJの闇は俺そのものだから…。だからーー」
「そんなことありません!」
蓮の言葉をキョーコがキッと睨んで遮る。
「え?」
「敦賀さんは、私にとって光なんです!だから、闇が敦賀さんそのものなんてことはありえません。」
鼻息荒く言い切るキョーコに、蓮は驚いた顔を見せる。
「過去に、敦賀さんに何があったかは知りませんが、もう充分ご自分を責められたんじゃないですか?もう、開放されてもいいはずです。」
「もがみ…さん。」
「だからもう、そんなにご自分を傷付けないでください。今の敦賀さんを見るのはとても…辛いです。」
ギュッと抱き着くキョーコの体温に、蓮の心が暖められ、身体に血がめぐり出す。
ーーーこの温もりを手放したくない。
蓮は強くそう思った。
「ありがとう。ねぇ、最上さん…俺の為なら何でもしてくれるって本当?」
「う…はい。まぁ、私に出来ることであれば…。」
「じゃあ一つだけお願いがあるんだ。」
「な、何でしょうか…」
キョーコがタジタジになりながら聞くと、蓮はキョーコの顔を真剣な顔で覗き込んだ。
「ずっと、俺の側にいてくれる?俺の隣でずっと君に笑っててもらいたいんだ。」
そんな蓮の言葉に、キョーコはキョトンとした顔で首を傾げた。
「へ?側に…ですか?はぁ、それはもちろん!そんなことで良ければ喜んで。」
「意味…わかってる?」
「意味??」
頭に疑問符を沢山浮かべて、鸚鵡返ししてきたキョーコに、蓮は大きく溜息を吐くが、気を取り直すと、ニッと口角を上げた。
「まぁ、いいか。前言撤回は聞かないからね?君は、一生俺の側にいてね?」
「へ?!い、一生?!」
「そうだよ?よろしくね。キョーコ。」
そう言って、まだ理解できていないキョーコの唇にそっと口付けた。
「誓いのキスだよ?一生、一緒にいようね?キョーコ。」
ニコニコ笑う蓮とは対象的に、
真っ赤な顔で固まったキョーコがいた。
「へ?!え?ええぇ?!つ、敦賀さん?!」
「さぁ、じゃあご飯食べて一緒に寝ようか?キョーコ。」
「へ?!なっ?!えぇ?!」
「ずっと側に…いてくれるんでしょ?」
そう良いながらニッと笑った蓮が、キョーコの腰を捉えて、食事の支度を促す。
困惑しながらも、料理を並べたキョーコを蓮は上機嫌で膝に抱え上げ、その日から予告通り、同じベッドで眠るようになるのだった。
その日の夜、蓮はキョーコにベッドの中で囁いた。
「あぁ、そうだ。忘れるとこだった。俺は、胸の大きさなんて関係ないよ。キョーコの胸は…うん。大丈夫。ちゃんと柔らかくって気持ちいいよ?」
「ちょっ!どこ触ってるんですか!!は、破廉恥ぃ~!!」
真っ赤な顔のキョーコがベッドの中で暴れるも、蓮は難なく取り抑えたのだった。
以前にもましてラブラブ度が上がったヒール兄妹に現場のスタッフ達が、砂を吐き出すようになるまでに、そう時間はかからなかった。
キョーコのおまじないが功を奏したのか、その日から蓮がBJの闇に囚われることはなくなった。
カインの隣に立つセツカが、カインの頬に口付ける。
「いってらっしゃい兄さん。」
「あぁ。」
セツカの言葉に短い返事を返しながらも、緩みそうになる頬をそっと手で隠すカインがいたのだった。
END
☆気が向いたら拍手お願いします!
*****
ミネラルさんより受けたリクエスト内容はこちら↓↓
『両片思いの蓮とキョーコでどちらかが居眠りしている最中、眠っている相手に秘めた想いをポロリと言ってしまったり、寝ていることをいいことに何かやったり(笑)
そして眠っている方は本当は起きてました的な展開
途中脚色オッケー!!』
どうでしたでしょうか?!
満足頂けてたら嬉しいです。
本当はもっとやらかしたかったんですけど、何故か久遠の闇の部分の話が出てきちゃったので書き切れませんでしたー!!もうこれが限界!
でも、とっても楽しかったです!!
素敵なリクエストありがとうございました~♪
ミネラルさんとアメンバーの皆様に捧げます♪
何だかリベンジした割におバカな話しになってしまってすみません(笑)
そして、その4コマを見て、風月は思ったのです。
『グッジョブ!自分!!!!』
ミネラルさんのイラストは悶えまくりです!!
思わずコメント残したくなるくらい大興奮でいつも拝見してます!!
そんなミネラルさんが、風月のコーンの森で…に、イラストを付けて下さりご紹介したのですが、なんと、その時に、ミネラルさんのお名前をミラクルと間違えて掲載しまうという大失態をおかしてしまったのです!!
これはいかん!!謝罪をせねばっ!と、ちょうどブログ半年記念&アメンバー様400人達成リクエストを募集してたので、お話のリクエストをお願いしてみました!!
そうして頂いた素敵リク☆
ミネラルさんに、捧げるのはリクエストに150%ぐらい応えるつもりで書かねばっ!
…と、思っていたのに、実際にはリクエストから少しだけずれたお話に…これじゃあリクエストに80%ぐらいしか答えれてないじゃないかぁ!!
ということで、リベンジしました!!(笑)
前回とは全く別物のお話ですけど、お楽しみ頂けたら幸いです♪
とか言いながら、気に入られなかったら目も当てられないですね(笑)
気に入って頂けるかな??ドキドキです!!
では、どうぞお楽しみ下さいませ♪
*****
おまじない
「兄さん?ご飯出来たわよ?運ぶからテーブル片付けて。兄さ…あら?」
セツカに扮しているキョーコは兄であるカインに声を掛けた。
するとそこには眠り込んでしまったカインがいた。
敦賀蓮としてのスケジュールをこなしながら、カインとしても生活している蓮の疲れは半端なものではないだろう。
敦賀蓮とは、今や日本でも知らぬものはいないというほどの今が旬の大人気俳優だ。
普段でも分単位のスケジュールをこなしているのに、そこにカインのスケジュールをねじ込まれているのだから疲れが溜まっていたとしても、何の疑問もない。
しかし、すぅすぅと気持ち良さそうに眠る顔には、カインというよりは、いつもの蓮よりも若干幼い感じがある。
カインの姿でありながらそんなあどけなさを残す寝顔に、キョーコから笑みが零れた。
「お疲れ…なんですね?」
そっと微笑み、クローゼットからブランケットを取り出す。
ホテルに備え付けられたイスにもたれかかるようにして眠ってしまっている蓮の身体にそっとブランケットをかけるが、その時、蓮の頭がガクンと後ろに倒れた。
「これじゃあ、首を痛めちゃうわ。」
キョーコはそのまま眠り続ける蓮を見て顔を顰める。
疲れているのがわかっているため、ゆっくりと休んで欲しいと思うが、それで首を傷められては元も子もない。
キョーコは、暫らく思案して、もう一つの同じタイプの椅子を蓮の隣に並べた。隣の椅子に座っても、高さが足りないため、キョーコは二つの椅子の肘掛けの上に腰掛けた。
「ちょっと…無理があるかしら?」
肘掛けの上に座ると、やはりというかなんと言うか、椅子に座っている蓮が窮屈そうだ。
本当はこうやって肩を貸そうかと思っていたのだが、思いの外高くなってしまった為、諦めて椅子から降りる。
「うーん。せめて、もう少し背もたれが高ければ…。あ、そうだ!」
またもや思案顔に入ったキョーコは、何かを思いつくと、今度は蓮の背後に立って蓮の頭をそっと、自分の方に引き寄せた。
しかし、そうすると、ちょうどキョーコの胸を貸す形になり、キョーコはいたたまれなくなってしまった。
「うぅ…。もう少し胸が大きかったら良かったんだけど、私胸が小さいし、こんなことされても…って感じよね?」
はぁー。と、残念そうにため息をつくキョーコ。
「敦賀さんもやっぱり胸はないよりある人の方が良いわよね…。」
小さなため息とともに寂し気に言葉が零れた。
「きっと敦賀さんの恋人になる人は誰もが憧れるような美しくて完璧なスタイルの持ち主の美人さんなんだわ。やっぱり…わたしなんかどう考えても失恋確定よ…。はぁー。どうして敦賀さんなんて好きになっちゃったんだろう?」
蓮の頭を胸にだきしめながら、蓮の髪をサラサラと撫でる。
「うう…やっぱり気持ちがいい。敦賀さんの髪って本当に触ると癖になっちゃう…な。」
蓮の頭が位置を探すようにグリンと動いて止まる。
動いた時に跳ねた心臓はそのままに、キョーコは蓮の髪を愛おしそうに梳く。
「兄さん大好きな設定なんだから、こんなことしててもおかしくないわよね?きっとセツカは兄さんの為なら何だってしちゃうのよ。」
言いながら思い出すのは、最近の様子のおかしい彼の姿。
役とも、敦賀蓮とも違う別人を感じさせる何か…。
彼の中で何かが目覚めている。そして、そのことに彼が苦しんでいるのがわかる。
「私も、貴方の為になるなら何だって…しちゃえるんですよ?」
眠っている彼の寝顔を見つめて言う。
「一人で苦しんだりしないで下さいね?その為にお守りの私がいるんですから。私を頼って下さい。貴方の心を守る為なら何だってしますから…。」
「…ん。」
返事をするように返された声にクスリと微笑んで、後ろから抱き締めるようにして、蓮の頭を支える。
「私を頼って下さいね?」
微笑んで、そっと、蓮の額に口付けを落とした。
その途端、蓮の身体がピクンと動いた。
「ふふ。敦賀さんが元気になるおまじないです。」
「う…んっ。」
「…あら?兄さん。起きたの?」
蓮から声が漏れると同時に、目が開く。
ぼぉっと、キョーコを見つめている蓮に、もしかしてさっきのばれたのかしら?
と、ドキドキしていたら、蓮がちょいちょいと、指を動かして顔を近付けるように指示してきた。
「え?何?兄さ…!!!!」
言われるがまま、顔を覗き込むように近付けたキョーコの頭を片手で抑え込み、蓮はそのまま伸び上がって、キョーコの唇に己のそれを重ねた。
一瞬の間の後、ちゅっという密かなリップ音を鳴らして蓮の顔が元の位置に収まる。
一瞬何が起きたかわからず、固まってしまったキョーコの下から蓮は顔を覗き込んだまま、ニッと笑った。
「おまじないならこっちの方がいい。」
「なっ?!?!?!?!!!!!」
真っ赤な顔して壁に体当たりする勢いで離れたキョーコに、蓮はクスリと笑う。
「お前がたまにこんなおまじないをしてくれるなら、俺は俺でいられるかもな。」
「い、今の…き…す…。」
役のカインとして言う蓮とは対象的に、起きた出来事が衝撃的過ぎてどうしても役になりきれないキョーコが、真っ赤になって呟いた。
「…嫌だった?」
そんなキョーコに、蓮はカインとしてではなく、敦賀蓮として問いかけた。
「いえ…嫌とか…そんなんじゃなくて…あの、びっくりしたというか…なんて…いうか…」
キョーコの瞳からポロっと涙が零れた。
ギョッとして蓮がキョーコに近付く。
「も、最上さん?!」
ふぇーんと、突然泣き出してしまったキョーコを蓮はどうしていいかわからずに恐る恐る抱き締める。
「ご、ごめん。き、気持ち悪かった?」
自分の言葉に凹みながら問いかけたが、キョーコはそれにはブンブンと首を横に振って否定した。
「じゃあ、嫌だった?」
それにも首を振って否定するキョーコ。
「だったら、嬉しかった…?」
僅かな期待を込めて問いかけてみると、キョーコはピタリと止まって、否定も肯定もしなかった。
代わりに泣き声がさらに大きくなる。
「ご、ごめん。あの、最上さんが『貴方の為なら何だって出来る』って言ったのを聞いて調子に乗ったみたいだ。」
その言葉に、キョーコはギシリと、固まってふるふると震えながら物凄い形相でギギギギギと蓮を見上げた。
まるで幽霊でもみてしまったかのようなその表情に蓮は生唾を飲む。
「い、いつから起きてたんですかぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「あ、えっと…最上さんが肘掛けに腰掛けた時から…かな?」
「ほぼ最初からじゃないですかぁぁぁぁ!!!!!!」
キョーコは、顔から火が出るほど真っ赤になった。
ーーーじゃあ、敦賀さんの頭を抱きしめたとこも、告白まがいの言葉も、全部全部聞いてたってこと?!
キョーコはそこまで考えるとさぁっと顔から血の気が引くのを感じた。
きっと真っ青になってるに違いない。
「わ、忘れて下さい!!」
キョーコは真っ青の顔のまま、蓮に詰め寄った。
「後生ですから、先ほどのことは全て忘れて下さい!!申し訳ございませんでしたぁ!!」
ハハァーと、頭を床に擦り付けるキョーコを慌てて止めに入る蓮。
「ちょ、ちょっと、最上さん?!」
「お願いします!忘れて下さい!あれは本当にただの子供の戯れ言と思って。」
土下座をしながらカタカタと震えるキョーコを蓮は堪らずに引き寄せて抱きしめた。
「つ、敦賀さん?!」
ギュッと蓮の抱き締める腕に力が篭る。
「忘れないよ。忘れられるわけないだろ?こんなに、嬉しいのに…。」
「う、嬉しい…?」
キョーコは、蓮を不思議そうに見上げた。
じっと自分を見つめる蓮の熱い目にキョーコの心臓が跳ね上がる。
顔が近くて心臓が破裂しそうだ。
すると蓮がキョーコの頬に手を伸ばし、スルッと髪の中に指を差し込んできた。
傾く蓮の顔が徐々に近付き、キョーコはその顔をみつめながら『あ…キス…される…』と、本能的にわかったが、そのまま逆らえない引力でも働いていたのか、近付く顔から逃れることが出来なかった。
重なった唇に、キョーコは不意に思う。
ーーーあ、ファーストキスだ…。
どこまでも甘く優しいキスに、キョーコの硬くなっていた心が溶けて行く。
ゆっくりと瞳を閉じて、蓮の温もりを感じながら、蓮の服をキュッと掴んだ。
蓮の腕に縋り付くキョーコに、受け入れてもらえた喜びを感じて、蓮の心が震えた。
離れた唇に、ぼうっと惚けたキョーコの顔。
蓮を見上げたその瞳には戸惑いと不安が見え隠れする。
蓮はそんなキョーコをそっと抱きしめて呟いた。
「君は、俺を俺自身として始めて見てくれた子だから。そんな俺を好きだと言ってくれて嬉しかったんだ。」
「敦賀さん?」
蓮の身体が僅かに震えていることに気付いて、キョーコはそっと、その背中に手を延ばして抱きしめた。
「俺は、ずっと孤独だった。生きる為に、俺は自分自身の心を殺そうとしていたんだ。」
「……」
「でも、君は俺を孤独から救い出してくれた。暗くて深い俺の闇の中に、光を与えてくれたんだ。」
「そんな…私は…何も…。」
「君は、無自覚だろうけどね。俺の傷付いてボロボロになった心を癒してくれたのは君なんだ。今だって…俺は君がいなければBJの役に飲まれていただろう。本当の俺は…BJに、限りなく近い…。この役をやることで、自分が今の自分を見失うことが怖かった。」
キョーコは黙って蓮の話に耳を傾けた。
「BJの闇は俺そのものだから…。だからーー」
「そんなことありません!」
蓮の言葉をキョーコがキッと睨んで遮る。
「え?」
「敦賀さんは、私にとって光なんです!だから、闇が敦賀さんそのものなんてことはありえません。」
鼻息荒く言い切るキョーコに、蓮は驚いた顔を見せる。
「過去に、敦賀さんに何があったかは知りませんが、もう充分ご自分を責められたんじゃないですか?もう、開放されてもいいはずです。」
「もがみ…さん。」
「だからもう、そんなにご自分を傷付けないでください。今の敦賀さんを見るのはとても…辛いです。」
ギュッと抱き着くキョーコの体温に、蓮の心が暖められ、身体に血がめぐり出す。
ーーーこの温もりを手放したくない。
蓮は強くそう思った。
「ありがとう。ねぇ、最上さん…俺の為なら何でもしてくれるって本当?」
「う…はい。まぁ、私に出来ることであれば…。」
「じゃあ一つだけお願いがあるんだ。」
「な、何でしょうか…」
キョーコがタジタジになりながら聞くと、蓮はキョーコの顔を真剣な顔で覗き込んだ。
「ずっと、俺の側にいてくれる?俺の隣でずっと君に笑っててもらいたいんだ。」
そんな蓮の言葉に、キョーコはキョトンとした顔で首を傾げた。
「へ?側に…ですか?はぁ、それはもちろん!そんなことで良ければ喜んで。」
「意味…わかってる?」
「意味??」
頭に疑問符を沢山浮かべて、鸚鵡返ししてきたキョーコに、蓮は大きく溜息を吐くが、気を取り直すと、ニッと口角を上げた。
「まぁ、いいか。前言撤回は聞かないからね?君は、一生俺の側にいてね?」
「へ?!い、一生?!」
「そうだよ?よろしくね。キョーコ。」
そう言って、まだ理解できていないキョーコの唇にそっと口付けた。
「誓いのキスだよ?一生、一緒にいようね?キョーコ。」
ニコニコ笑う蓮とは対象的に、
真っ赤な顔で固まったキョーコがいた。
「へ?!え?ええぇ?!つ、敦賀さん?!」
「さぁ、じゃあご飯食べて一緒に寝ようか?キョーコ。」
「へ?!なっ?!えぇ?!」
「ずっと側に…いてくれるんでしょ?」
そう良いながらニッと笑った蓮が、キョーコの腰を捉えて、食事の支度を促す。
困惑しながらも、料理を並べたキョーコを蓮は上機嫌で膝に抱え上げ、その日から予告通り、同じベッドで眠るようになるのだった。
その日の夜、蓮はキョーコにベッドの中で囁いた。
「あぁ、そうだ。忘れるとこだった。俺は、胸の大きさなんて関係ないよ。キョーコの胸は…うん。大丈夫。ちゃんと柔らかくって気持ちいいよ?」
「ちょっ!どこ触ってるんですか!!は、破廉恥ぃ~!!」
真っ赤な顔のキョーコがベッドの中で暴れるも、蓮は難なく取り抑えたのだった。
以前にもましてラブラブ度が上がったヒール兄妹に現場のスタッフ達が、砂を吐き出すようになるまでに、そう時間はかからなかった。
キョーコのおまじないが功を奏したのか、その日から蓮がBJの闇に囚われることはなくなった。
カインの隣に立つセツカが、カインの頬に口付ける。
「いってらっしゃい兄さん。」
「あぁ。」
セツカの言葉に短い返事を返しながらも、緩みそうになる頬をそっと手で隠すカインがいたのだった。
END
☆気が向いたら拍手お願いします!
*****
ミネラルさんより受けたリクエスト内容はこちら↓↓
『両片思いの蓮とキョーコでどちらかが居眠りしている最中、眠っている相手に秘めた想いをポロリと言ってしまったり、寝ていることをいいことに何かやったり(笑)
そして眠っている方は本当は起きてました的な展開
途中脚色オッケー!!』
どうでしたでしょうか?!
満足頂けてたら嬉しいです。
本当はもっとやらかしたかったんですけど、何故か久遠の闇の部分の話が出てきちゃったので書き切れませんでしたー!!もうこれが限界!
でも、とっても楽しかったです!!
素敵なリクエストありがとうございました~♪
ミネラルさんとアメンバーの皆様に捧げます♪
何だかリベンジした割におバカな話しになってしまってすみません(笑)