皆さんこんにちは☆
風月です♪
今回は風月もドキドキ企画、初コラボを「降っても晴れてもスキ日和」
のしずかさんとさせていただくことになりました!!
以前紹介させていただいた、しずかさん作の、蓮とキョーコのバレンタインデーキス!!!!
「もう最高に素晴らしいので、大好きです!!」とピグにて告白したところ、コラボが出来ることになったんです!!(狂喜乱舞♪)
そしてそして、今回の企画では、しずかさんよりお話のリクエストを頂き、風月が文を書き、その中で風月がみたいイラストをしずかさんにリクエストして、書いて頂く…というものです!!
まだ前半だけですが、皆様にもお楽しみ頂けると幸いです♪
しずかさんのリクエストは、ずばり、童話パラレル!!
風月の好きな童話でラブラブな蓮キョを!!
ということでした!!
以前に書いた人魚姫の童話パラレルを気に入って下さっていたようでリクエスト頂けました!!
…と、言うわけで、今回のコラボは童話パラレルです!!
そしてそして、完全に風月のオリジナルな童話パラレルになってしまいましたー!!
完全に風月ワールドです(笑)
しずかさんのとこでイラストUPして頂いてますので、そちらもご覧下さいね♪
では、風月ワールドへ、いってらっしゃいませ♪
*****
昔々の物語*前編
昔々あるところに、ヒズリ王国というそれはそれは緑豊かで美しい国がありました。
その王国の国王の名前はクー。女王はジュリエナ。二人は見目麗しい美男美女カップルで、ユーモアと思いやりに溢れ、国民から愛されて止まない二人でした。
そんな二人のあいだに生まれたのは王子クオン。
クオンは、二人の美貌と澄んだ心を余すことなく引き継ぎ、それはそれは人々に愛される王子でした。
その為、クオン王子が15歳を迎えるころには王子の噂を聞きつけた隣国から次々と我が家の姫を妃にと、縁談の申し出が引っ切り無しにくるようになりました。
クオンは基本的にどの姫に対しても優しさは見せるのですが、どの女性をみてもクオンからは同じにしか見えなかったのです。
今だにラブラブ新婚カップルのような両親の元で育ったわりに、女性に対して淡白すぎるクオンの様子をみて、国王も、女王も心配しましたが、自分がこの女性こそ!と想える相手を自分の手で見つけなさいということで、クオンの誕生日には、王宮で仮面舞踏会が開かれるという事になりました。
自国と近隣国の名家と言う名家から、ドレスアップした姫が送り込まれるのですが、クオン王子はどの女性も受け入れる事が出来ず、年だけを重ねて日々が過ぎていきました。
そして、クオンの20歳の誕生日…その望まれた出会いがあったのです。
「貴方…クオンは自分で生涯のパートナーを見つける気はあるのかしら?年々この仮面舞踏会が、ただのお祭りになってきた気がするわ。」
「あぁ、ジュリ…。まだ時期ではないのだろう。焦らず見守ろうじゃないか…。今年は20歳という事もあって、招待客も一流貴族のみならず、隣国の姫君や二流貴族、三流貴族の女性達も集めている。きっとクオンの気にいる相手が見つかるはずだよ。」
そう。今日はクオン王子の20歳の誕生日。つまり仮面舞踏会が開かれる日なのです。国中の年頃の男女が招待を受けてドレスアップをしてお城へとやってくるのです。
最初は王子の見合いの場だったこの舞踏会も、数年続くとそれなりのジンクスも出来ていました。
年に一度開かれるこの舞踏会で男女が初めてキスを交わすと、生涯幸せになれるのだと言うのです。
その為、王子を諦めた人々や独り身の男性までもが積極的に参加していました。
クオンが15の時は招待客は15歳以上の一流貴族の男女だったのですが、クオンが19になった時から、招待されるのは16歳以上の一流貴族の男女となっていました。
「クオン…支度は出来た?」
「えぇ、母様…出来ましたよ。」
振り返ったクオンにジュリエナは息を呑みました。
「クオン…貴方!!!!」
「今年は髪を黒くしてみたのです。変でしょうか?」
「きゃー!!凄く素敵よ!!クオン!!男前になったわね!!その美貌は仮面では隠しきれないわ!!!!あぁぁ!!惚れ直したわ!!クオン!!」
「か、母様!!恥ずかしいですから、抱きつかないで下さい!!」
「まぁ、クオンったら、そういう所は変わらないのね。照れちゃって可愛い!!」
ジュリエナはニコニコと赤くなったクオンの頬を指で突つきました。
「母様!!もう子供じゃないんですからやめて下さい!!」
益々真っ赤になるクオンに、ジュリエナは女神のように慈愛を込めた目で微笑みました。
「あらぁ、いくつになっても、どんなに姿を変えても、貴方が私たちの子供である事には変わりないわよ。私たちの可愛いクオン…。それに、こんなことで赤くなるようじゃまだまだね。」
「お!!クオン!!支度できたのか!!どうだ?今年こそは素晴らしいパートナーが見つかりそうか?」
「父様…まだわかりませんよ。でも、そろそろ見つけたいですね。」
「お前はジュリエナに似て美しいからな!!どんな乙女でもイチコロだろう。今年は一流貴族だけじゃなく、二流も三流も招待をしているからな。でも、焦らなくていいぞ。お前が本当に心から愛する者でなければ、私たちは結婚を認めないからな。去年のように適当に見繕うんじゃなくて、今年はキチンと見極めなさい。」
「はい…父様。ありがとうございます。」
「うむ。しかし、髪色が変わると別人だな!!誰もお前が王子だとは分からないだろう。存分に楽しみなさい。」
「はい。父様、母様本当に感謝します。」
「そういうことは、私のジュリのように素晴らしい相手を見つけてから言うんだな。」
「もう!貴方ったらそればっかり。」
「本当のことだろう…ジュリ…君は、私の生きる宝石だ。」
「まぁ。クー、ありがとう。愛してるわ。」
「あぁ、ジュリ…勿論私もだよ…。」
完全に二人の世界に入った二人に、クオンは苦笑を漏らしながら離れました。
いつものことで慣れてしまっているのです。
ーーー俺も、あんな風に想える相手と本当に出会えるのだろうか?
クオンは自信がありませんでした。演技でならあのくらい自然にやってのける自信はあるのです。しかし、一生あれを演じ続けるとなると、骨が折れるだろうというのが、クオンの一番のネックとなっておりました。
クオンは自分の将来を思って大きなため息を吐きながら、去年の仮面舞踏会のことを思い出しました。
とうとうパートナーを見つけられなかったクオンは、来ていた中で一番美人だと皆からもてはやされていた美女を捕まえて両親に見せたのですが、その後に自分の心が彼女に向いていないことを見抜かれて、破談にされたのです。
あの両親を騙すことは出来ないな。とクオンは思いながら広間に出ました。
煌びやかなホールでは色取り取りのドレスを来た美しい女性達がそれぞれの男性のエスコートで優雅にダンスを踊っています。
誰もが目に仮面を付け、素性がばれないようにしていたのですが、やはりクオンの美貌は隠しようがなく、クオンが足を踏み入れると、人々のダンスのステップが次々と止まって行きました。
自分に見惚れる女性たちからほうっという感嘆のため息が零れ、皆のその視線を感じながら、クオンは若干疲れたため息を落とします。
髪の色を変えて別人を装っても、言い寄る人は自分の内面を見ようとしない者ばかり。
これは今回も無理かな…なんて、諦めかけた時でした。
ーーーどんっ!!
突然、目の前から走って来た女性から体当たりをされたのです。
「おっと…君、大丈…っ」
咄嗟に支えたクオンはその胸に飛び込んで来た少女と思しき人物に一瞬にして心を奪われました。
それを一目惚れというのですが、クオンはその感情に戸惑いを感じずにはいられませんでした。
何故ならこんなにも興味を惹かれる相手に出会ったのは初めてのことだったのです。
栗色の柔らかそうな髪。透き通るような白い肌。それによく合うピンク色の可愛らしい仮面と上品にレースをあしらったドレス。
そして、その仮面から覗く涙で潤んだ大きな瞳に動揺の色を乗せながらクオンを見つめてきています。
「君…は…?」
「ご、ごめんなさい!!突然飛び出してしまって、あ、あの、お怪我は?!」
「僕は大丈夫だよ。それより君は大丈夫?」
「おい!キョーコ!!」
クオンが少女の頬に手を伸ばそうとしたその時に、乱暴な男の声が聞こえてきました。
その声に、ピクリと肩を揺らした少女は、慌てて目の前のクオンから離れると、完璧なお辞儀をして、無礼を侘びます。
「あ!!ご、ごめんなさい!!私はこれで、失礼します!!」
「おい!待てよ!!キョーコ!!キョーコ!!」
涙で流しながら走り去る少女をクオンは追いかけようとしましたが、同じように少女を追いかけようとしている少年に気付き捕まえると、その動きを抑えました。
「何だよ?!離せよおっさん!!」
少女をキョーコと呼んだ少年は、紫と金の煌びやかな仮面をつけ、シースルーの魅惑的な衣装を身に纏っていました。
「君、大声を出しながらこういう場で走り回ってかっこ悪いとは思わないのか?それに、あの女性は君から逃げてるようだった。泣かせたのは君か?」
「はぁ?!あんたうだうだうるせーよ!俺が俺のもんをどう扱おうが勝手だろう?!」
「俺の…もの…?」
ーーーそれはつまり、彼女は既に、この男のものという事か…。
クオンの胸がチクリと痛みました。
その時、少年の背後に慌ててかけて来る女性の姿がクオンの目に映りました。
「ショー?キョーコ姫は?!」
「あぁ、ショウコさん。しくじった。逃したぜ。」
「もう!だから私は嫌だって言ったのよ。あんな所で…」
顔を赤くしてショーという少年を睨みつけるクオンより幾つか年上の女性に、ショーは近寄り腰を捉えました。
「でも、ショウコさん本当は喜んでただろ?」
「もう!でも、よりにもよってキョーコ姫本人に金ズル扱いしてたのを聞かれちゃうなんて…。」
「あぁ、アレは俺も誤算だったぜ。あんなとこまでキョーコが俺を探しに来るなんてな。ちっ!親父やお袋に知られたらどやされるぜ。」
「どうするの?キョーコ姫…モガミの家が許さないんじゃない?」
「はっ!あの母親はキョーコがどうなろうがどうでも良いんだよ。あいつは落ちこぼれの出来損ないだっていつも言ってるし、俺が嫁に欲しいって言ったら、『まぁあんな子がいいなんて貴方も物好きね。アレも少しは役に立ってくれてるのかしら?』なんて、鼻で笑ってやがったんだぜ。ま、俺は何でも俺のいう事を聞いてくれる女なら誰でも良かったんだけどな。どうせなら一流貴族がいいだろ?」
「だから、あんたも堂々とそんな事を言わないの!それを聞かれちゃって大変なことになったんじゃない!」
「だぁってよぉ!本当のことだろ?疲れるんだよ。あいつの前で完璧な王子様役を演じるのはさ。ったく、メルヘン過ぎてやってらんねぇぜ。」
二人は周りに人がいるにも関わらずそんな話をして、まるでクオンの存在を忘れたかのように挨拶もなしに歩き去っていきました。
そして二人の会話をずっと聞いていたクオンは、頭に強い衝撃を受けました。
先程の涙で潤んだ瞳を想い出します。
ーーーあの子が…あんな男の婚約者だなんて…!!!!
クオンは生まれて初めてのハラワタが煮えくり返る思いに戸惑いながらも、慌ててキョーコと呼ばれた少女を探す為に駆け出しましたが、広い城内で、たった一人の少女を見つけることはクオンにも出来ませんでした。
ーーーキョーコ=モガミーーか…。
クオンはその名前を頭に刻み込みました。
それからと言うもの、クオンは熱心にキョーコ=モガミの素性を調べ上げました。
モガミの家はヒズリの王宮から程近い場所にあり、代々続くヒズリ国の一流貴族。
しかし、モガミ家の当主は娘のキョーコが生まれてすぐに亡くなり、それから良くないことが立て続けに続くようになったので、母親はキョーコのことを疫病神と罵り、忌み嫌うようになっていったようでした。
モガミ家は一流貴族と言っても当主がいない今、名ばかりの貴族になりつつあるということです。
そんな傾きかけたモガミの家の娘を妻に。と思う一流貴族もいるはずがなく、母親はそれを全て娘のせいにしてお荷物扱いしておりました。
そんな折り、モガミの名前に興味を持った三流貴族のフワ家がキョーコに息子のショーの婚約話を持ちかけたのです。
普通だと、身分違いだとはねのけられただろうその婚約話も、モガミの現在仮の当主であるキョーコの母親は興味がないとばかりにあっさりとその話を呑んだのでした。
『あんたには三流がお似合いよ。』
キョーコは実の母親に鼻で笑われ傷付きましたが、それでもショーに一縷の望みを掛けて、婚約話を受けていたのです。
キョーコは雪の降る季節の始めに16歳になったばかりでした。
クオンが18歳の誕生までは15歳以上だった招待も、19歳の年には16歳以上の男女に変わっていた為、今回が初めての舞踏会の招待だったようです。
クオンは、調べて行くうちに、もっとキョーコの事を知りたいと思うようになっていきました。
人にここまで興味を持ったのは初めてで、クオンはその気持ちに戸惑ったものの、どうしても好奇心が勝ってしまったのです。
ーーー私が王子と知らずに会ったら、あの子は私にどんな反応をかえしてくれるのだろうか?
クオンは王子としての自分ではなく、クオンとしての自分を見てくれる人をずっと探し続けていたのです。
キョーコなら自分にどんな反応を示すのか…。
王子と分かれば皆が平伏し、心など見せてはくれません。
素顔を晒せば、その素顔に気を取られ、心などどうでも良いとばかりに気持ちを押し付けられます。
でも、王子とわからないように素顔を隠して会えばどうでしょうか。
クオンの中では好奇心がムクムクと膨れ上がりました。
キョーコは舞踏会に出た日から、ずっと自分の部屋に閉じこもっていました。
母親は外出ばかりで、家には滅多に帰ってきません。
前に顔を合わせたのはいつだったか…キョーコはそれすらも思い出せませんでした。
切なさと、遣る瀬無さがキョーコを襲います。
広い家の中に独りぼっち。
慣れているはずのその空間にさえも堪らない寂しさがキョーコの中に積もります。
ーーーショー様からあんな風に思われてたなんて…。
舞踏会に行くまでは、ショーと出掛けられることがキョーコは楽しみでなりませんでした。
ショーの両親に連れられて、趣味で作っていたデザイナーも顔負けのとっておきのドレスを着てパーティーに出席しました。
最初は側にいたショーでしたが、両親の目が離れると、さっさとキョーコからも離れていきました。
お城にキラキラとした目を向けていたキョーコは、ショーが勝手にいなくなったことにもしばらく気付かず、気づいた時にはダンスパーティーまで始まっていたのです。
楽しみにしていたお城での舞踏会。
ーーーやっぱり王子様と踊りたいわ。
そう思ったキョーコは、すぐに自分の王子様となるはずのショーの姿を探しに行きました。
しかし、どこを探してもおらず、キョーコはダンスが行われてる広場から離れ、お城の中を遠慮気味に探し回りました。
すると、お城の豪華な柱の影で、一組のカップルが口づけを交わしてるのを見つけました。
キョーコはお城の舞踏会で囁かれてるジンクスを思い出して顔を真っ赤にしていました。
ーーーわ、わわわ!!私ったらなんて場面に遭遇してしまったの!!は、早く立ち去らなきゃ!!
しかし、キョーコが踵を返しかけたその時、カップルの男の声が聞き覚えのある声であることに気付き思わず振り返りました。
「ショウコさんの唇柔らかいな。」
「もー。ショーったらこんな所で…。」
「いいだろ?別に減るもんじゃないし、大体俺はキョーコみたいな地味で色気のないガキよりも、ショウコさんみたいなフェロモン系の人がタイプなんだよ。なのに、親父の奴、キョーコ何ぞと婚約させやがって。」
「あら?ショー?そんなことを軽々しくいうもんじゃないわよ。破談になってもしらないから。」
「はっ。破談になんてなると思うか?あの母親だぜ?疫病神もらってやるってんだから、もらわねぇ方が迷惑がられるっつーの。親父やお袋は家系にモガミの血を入れたがってるけどさ、あんな板みたいな身体みても萎えるだけだぜ。子供作りたいとも思わねぇし、結婚したら身の回りの世話くらいならさしてやるけどよ。一流貴族なんて何かの間違いなんじゃねぇの?あいつは家政婦がお似合いだっての!!」
「くすくす。ショーったら、やめてよ。キョーコ姫に悪いでしょ?」
「だってよぉ。あいつの前では幾らなんでも言えないだろ?ヘラヘラしたあいつの側にいると疲れるんだよな。…あーあー。キョーコがショウコさんみたいなフェロモン系ならよかったんだけどさ、お子ちゃまじゃん!がっかりだよ。」
「ショー…様…。」
キョーコは、カタカタと肩を震わせショーを見ました。
シンとした廊下には小さな声でも良く響きます。
「げっ。キョーコ…。んだよ。聞いてたのかよ…。」
「…ずっと、私のことそんな風に思ってらしたの?」
「…。」
答えないショーを見て、キョーコは唇を噛み締めると、その場から駆け出しました。
キョーコは広間に戻って走りました。その間涙をこらえる事に必死になっていて、とても大きな男の人にぶつかってしまったのでした。
慌てて謝罪の言葉を口にするも、支えてくれる大きな手に、思わず縋りそうになってしまいます。でも、すぐにショーの声がして、キョーコは楽しみにしていた舞踏会を最悪な形で去ることになってしまいました。
無我夢中で駆け抜けて、気付いた時には、自分の部屋のベットで小さく丸まっていました。
それからと言うもの、キョーコは誰も帰って来ない家で一人、孤独という闇と共に過ごしていたのです。
キョーコは飲まず食わずでただベットに横になり続けていました。
もう、自分が生きる意味すらもわからない…。
そんな中で、キョーコは眠りにつくのでした。
舞踏会から3日目の夜、キョーコは肌寒さで目が醒めました。
寒さの原因を探るように、視線だけを彷徨わせると、寝室のベランダに続く窓が大きく開け放たれていました。
それをボンヤリと見つめていたキョーコでしたが、風で揺れるカーテンの後ろに大きな人影が見え、キョーコはそっと微笑みました。
ーーーあぁ、きっと、あの世からお迎えが来たんだわ…。
キョーコは、ゆっくりと目を閉じました。
もう、生きることに未練などなかったのです。
ゆっくりと人の気配がキョーコに近付いてきました。
「姫…キョーコ姫…。」
今まで、聞いたことがないくらい優しい声で名前を呼ばれました。
そのことが嬉しくて、キョーコは目を閉じたまま、そっと微笑んで涙を流しました。
その涙を、長い指が優しく拭います。
頬を大きな暖かい手に包まれて、キョーコはゆっくりと目を開きました。
「貴方…は…?」
キョーコは目の前の人物を見て目を見開き息を呑みました。
仮面で目元を隠されてはいるものの、優しい光を秘めた綺麗な瞳。整った鼻立ち、美しいサラサラの黒髪…神様は不公平だと思えるくらいの美貌をその目の前の男は持っていたのです。
全身から醸し出すオーラも一般の者とは違う高貴なオーラを醸し出しているようにも思えました。
自分を驚きの表情で見つめるキョーコに、クオンはくすりと笑うとキョーコの手を取り、キョーコの目の前に持ち上げてその甲にキスを落としました。
「私の名はレン。闇夜に紛れて現れた怪盗だよ。」
キョーコは唖然として、目の前の男を繁々と見つめました。
「か、怪盗…?」
レンの言葉の意味を理解するように某然とつぶやくキョーコ姫。
そんなキョーコを楽しそうに見やりながら、レンはゆっくりと頷きました。
「うん。怪盗。」
「…貴方が?」
「えぇ。」
心底楽しそうにニコニコと微笑む怪盗と名乗る男に、キョーコは不思議な気持ちはしても、怖いという気は全く起きませんでした。
あの世からの遣いではなかったということに、キョーコは内心でため息を付きながら、レンと名乗った男から視線を外すと、興味無さげに言いました。
「モガミ家と言っても、今は名ばかりの貴族よ。怪盗レン、貴方のお気に召す物がこの家の中にあるかは分からないけど、好きなものを好きなだけ持って行けばいいわ。」
「生憎、モノには不自由してなくてね。今は君が考えてるものとは別のモノを盗みに来たんだよ。」
「?別のモノ…?」
怪訝な顔を見せるキョーコに、レンはふんわりと笑って見せました。
「あぁ、俺が盗みに来たのは、キョーコ姫、君の…心と時間だ。」
神々しい笑顔が零れるように現れてるのが仮面の下に隠れていてもわかりました。
(続く)
*****
続きはまだ出来てません♪
出来次第またUPさせて頂きますねぇ(=´∀`)人(´∀`=)
お楽しみにー♪
素敵イラストはしずかさんのお宅でご覧下さいませ♪
本日の16時頃しずかさんのブログでアップ予定ということです☆
また後ほどしずかさんのイラストを風月の文章の中にもくわえさせていただきますね♪
しずかさまの素敵イラストも挿入しちゃいました♪