霧ヶ峰高原で夏合宿をした時のお話です。私達の同期マネージャーは3人いたのですが、なぜか苗字が同じでした。私と同じ語学クラスのK子ちゃん、方向音痴のディフェンスキャプテンSと同じクラスのU子ちゃん、そして卒業と同時に結婚して開業医夫人になったM由美ちゃんでした。

マネージャーも当時は3年ともなると練習には週に1、2度くるくらいでしたが、合宿には帯同してくれ、水の補給や食事の支度、汚れ物の洗濯などをしてくれてました。

1つ上のマネージャーは就職活動で来ておらず、1つ下と2つ下の二人とも青森出身のマネージャーと一緒にかいがいしく働いてくれてました。


そんなある日の朝、共同の洗面所でU子マネージャーが「ない、ない」と騒いでいます。夏合宿というのは朝は6時半に起床、体操と散歩をして身体を目覚めさせ、7時半くらいから朝食、1時間ほど休憩があって、9時過ぎから正午まで午前の練習、昼飯後やはり1時間くらい休憩があって午後の練習が5時くらいまであります。夜は夕食後にミーティングをして夜の11時くらいには就寝するのですが、U子マネージャーが就寝前に洗面所ではずしたコンタクトがなくなっている、と騒いでいたのです。


まだ、今のように1週間の使い捨てとかワンディ○○なんて廉価なものがない時代です。コンタクト一つで結構な値段がしていて、彼女も就寝前の歯磨きの後、部屋にあった茶碗に水を張ってその中にコンタクトを入れていたらしいのですが、部屋に持ち帰らず、洗面所に置きっぱなしにしていたようでした。もちろんその茶碗も見当たりません。どうやら彼女の後に洗面所を使った部員か、夜に見回りをしてくれた宿の従業員の方が出しっぱなしの茶碗と見て、中身を流し、回収してしまったようでした。


私は老眼になるまでコンタクトや眼鏡のお世話になったことがないので、わからなかったのですが、その後合宿が終わるまで、彼女の視線は宙に浮いていたように感じたのは私ばかりではなかったようです。