冬の訪れが確実にせまっている東北地方。午前中の晴れ間も見えた天候が入替戦の開始頃には、どんよりとした雲に空が覆われ、気温も下がってきていました。

2年連続の入替戦出場となってしまった日大工学部クロウジャッケルズ。今季初のカラーのユニフォームで登録人数ほぼ全員となる13人がスタイルしていました。一方、単独チームとして正式加盟初年度で2部を制した秋田大オーガーズ。シーズン中のけが人などもいてスタイルは19人でした。


試合開始前のセレモニー、コインの選択で勝った日工は後半の選択権をチョイス、日工のキックで試合が開始されました。

秋田の最初のシリーズ、入替戦出場へのプレッシャーからか、ライン、バックスとも動きが固く、思うようにゲインができず、パントとなります。パントを受けた日工、ショットガンからのラン攻撃は、戦前の予想通りでした。第2ダウンまでに8ydsほど進み、こちらは固さを感じませんでしたが、ここでOLが痛恨のフォルススタート、ダウン更新できずにパントとなりました。


続く秋田の攻撃で日工ディフェンスがビッグプレイを見せます。秋田パワーIからの攻撃は、プレイアクションからのWRへのパスでした。TE#99平野とWR#88高橋がクロスして右のミドルアウトパターンに進むというパスパターン、QB#8岸の投じたパスはリードがきいておらず、この2人のレシーバーの間に回りこんだ日工DB#83工藤が長身を生かしてインターセプトに成功しました。

※ 来季に向けての教訓①パスは常にリードパスを投げること


秋田陣で攻撃権を得た日工でしたが、ここでマルチプルオフェンスの第4幕、ロンリーセンターを見せました。センターとセットバック、QBというボールの位置に対して残りのライン、バックスをアイランドでボールから7~8yds離してセットさせます。秋田はDL、LBともこれに混乱せず、ボールの位置にDL、LB、DBを一人ずつつけ、残りをアイランドに正対させました。

※ 審判の目①ロンリーセンターの場合には、インテリアラインメンは自分のひざから下に手を下ろした場合には、「セットしたもの」とみなします。インテリアラインメンは有資格捕球者を除き、一度セットするとシフトすることができません。ひざより下の手を上げるような動作はスタートとなり、フォルススタートとなります。


プレイはスナップを受けたQBからアイランドのセットバックへのパス。スプリット気味にセットしていたラインは、秋田DL、LBのラッシュを支えきれずに5ydsロスしてしまいました。第2ダウン、今度はプロIからのオプションを左オープンに展開します。QB#18小堀はタックルにきた秋田LB、CBを十分にひきつけてピッチマン#5大平に絶妙のタイミングでピッチアウト、CBの甘いタックル(手を伸ばしただけでした)を振り切るとSS、リアクションしたほかのディフェンスを振り切って一気に秋田エンドゾーンまで走り切りました。TFPのキックもK#9沼田が決め、0-7と先制しました。


先制を許した秋田でしたが、OLはこれで固さがほぐれたようでした。タッチバックとなったキックオフ後の攻撃、第3ダウンロングのシチュエーションから、伝家の宝刀ともいえるRB#21溝口がドロープレイで日工陣深くまで攻め込むとQB岸は日工ディフェンスのLBとDBのゾーンの境目に走り込んだWR高橋へミドルパスを投じ、高橋はそのままエンドゾーンに飛び込みました。TFPのキックは#18堀池が緊張していたのか大きくそらしましたが、先制を許した直後に追撃することに成功しました(6-7)。

※ 来季への教訓②TFPキックは確実に、その1点が勝敗の行方を左右する


ところが、次のキックオフで、私自身もあまり経験したことがないプレイが飛び出しました。秋田のプレースキッカー堀池の蹴ったキックオフのボールは日工陣20yd付近までしか飛ばなかったのですが、これをピックアップしようとした日工リターナー#24三塚がジャックル、それを見た秋田ラッシュ陣が殺到します。あわててボールを拾った三塚でしたが、このタイミングのズレが功を奏しました。ラッシュをあせった秋田のタックルをかいくぐり、何度か体に秋田の手がかかったのですが、秋田タックらーはパックも中途半端、自らが倒れることで動きを止めてしまい、三塚に振り切られてしまいます。キッカーもこのラッシュに加わっていたのが日工には幸いしました。三塚は右サイドラインを激走、TDを上げました(TFPキック成功6-14)。

※ 来季への教訓③タックルは確実にパックして、自分の身体を生かしたまま押し返すくらいのドライブが必要。キックオフなどの場合には、最悪のケースを想定してキッカーもしくはセイフティポジションを一人は残しておく


これで日工も波に乗るか、と思われましたが、第1Q終盤、ラインの何人かが足をひきずるようになっていました。次のキックは飛距離がなく、秋田が反撃に出ます。秋田はセットバック、WRを伝令代わりに使い、毎回プレイを入れているようでした。オープンでロングゲインを許した日工が外寄りの体型になればダイブを、ダイブを警戒してLBが上がり気味になればガードをリードブロッカーに使ってオフタックルを、ランニングプレイを警戒してくれば、ミドルレンジにパスを、とダウンを更新して再びWR高橋へのアウトパターンのパスが成功します。エンドゾーン間近まで走り込んだ高橋にタックルをあせった日工DBが首付近に手を回す危険なタックルの反則をしてしまいました。秋田は敵ゴール前3ydからの絶好の追撃チャンス。2つダウンを消化してゴール前1ydとせまったところで第1Qが終了しました。

※ 審判の目②ハイタックルには特に注意する。ラリアット気味に首より上へのタックル(特に独走を阻止しようとする場合に多発する)は「危険なタックル」であり、プレイヤーの安全を最優先に考えてプレイを最後まで注視する


第2Q最初のプレイで秋田はQB岸がゴールラインにもぐりこんでTDをあげました。しかし、ここで追いつくことを考えたTFPの2ポイントコンバージョンはパス失敗、14-12と点差を縮められません。

なんとかリードを広げたい日工は中央付近での第4ダウンでギャンブルします。確かに残り1ydでしたし、それまでは普通のダイブで2~3ydsはゲインしていたので、この選択もわからないではありませんでしたが、まだ第2Q、失敗すればリズムが狂ってしまう恐れもあるプレイ選択でした。秋田ディフェンスはこのプレイをノーゲインにしとめました。僅差のゲームであればあるほど、ワンチャンスを確実にモノにする必要はあるのでしょうが、その決断にはまだ早かったようでした。


逆にじっくり攻める考えの秋田はこの後でチャンスをつかみます。1度ずつパントを蹴りあった後の秋田の攻撃、この日のために考えていたスペシャルプレイを披露しました。WRの位置についた#18堀池は浅い位置でフック、ここにQB岸がパスを通します。DBは堀池をタックルしようと堀池に向かい、フォロータックルすべく他のDBやLBも堀池を目指しました。ところが、堀池はキャッチしたパスをインサイドから走りこんできたRB#1阿蘇にトス、堀池に殺到したディフェンス陣は阿蘇への反応が遅れてしまいました。阿蘇は快速を生かしてそのままエンドゾーンへ。TFPのキックは今回も失敗しましたが、前半終了間際に秋田が18-14と試合をひっくり返しました。


第3Q、後半のチョイスをした日工はなんとかこのシリーズで再逆転をしたいところですが、マルチオフェンスにアジャストしだした秋田ディフェンスにダウンは更新するものの、パントに追い込まれる展開となります。再三行うロンリーセンターもプレイのバリエーションが少ないのか、ほとんどすべてがロスタックルになってしまいます。それでも日工はショットガンからのランニングプレイで秋田陣深いところまで攻め込み、逆転のチャンスをつかみます。しかし、肝心のところでOLがヘルピングザランナー(ランナーの後ろを押してしまう行為)、続けて「審判の目①」で指摘した通りのロンリーセンターからのプレイでの混乱からOLがフォルススタートを犯し、ゴール前9ydのチャンスが第4ダウンで残り13ydsとなってしまいます。ここはK#9沼田がFGを決めましたが、1点届かず18-17となって最終Qに突入しました。

※ 審判の目③ヘルピングザランナーは確認が難しい反則の一つです。ランナーがタックラー1人か2人でまだダウンしていないような状況でOLや他のバックスがこのランナーを後ろから押してしまう場合は、まさにこの反則になります


泣いても笑っても入替戦は残り12分、最終Qです。第3Qの日工FG以降もこう着状態だったゲームが、日工のゲームプランの変更から動きました。それまで日工QBはパスを2~3本しか投げておらず、それもターゲットにうまく投げられないものばかりでした。しかし、時間がなく、FGレンジに入れば逆転できるという考えからなのか、本来のショットガンからのパスをQB小堀がWR#96渡辺やWR沼田へ投げ、ゾーンの境目でこのパスが決まりだします。この追撃の芽を摘んだのは秋田OLB#59古田でした。アウトパターンのWRのコースに走りこみ、このパスをインターセプト、日工陣20yd付近までリターンしました。追加点のチャンス、秋田ベンチは時間を消化しながらのランニングプレイを指示します。「1点差であっても勝ちは勝ちですから」(秋田o-coach)の言葉通り、得点できなくても時間を消費しつくしたい、との考えのようでした。それでもゴール前で秋田はダウンを更新します。最後はセットバックに入ったRB#17平光がきれいにOLが開けた穴をまっすぐにエンドゾーンまで走りきりTDを奪いました。TFPキックはK堀池が慎重に決め25-17.最後の日工の反撃もDB平光がインターセプト、秋田が来季からの1部昇格を決めました。



TEAM
1Q
2Q
3Q
4Q
TOTAL
日本大学工学部
14
0
3
0
17
秋田大学
6
12
0
7
25

この記事は下記のKAYAKS監督さんのレポートを参考に作成しました。


KAYAKS監督さんの試合レポート