韓国映画の大作は、古くは「シュリ」「JSA」、近くは「白頭山大噴火」と、ジャンルは様々なれど、バックボーンに北との関係性が横たわり、それが物語に得も言われぬ深みを与えている。日本映画の大作と比較するとき、世界公開を視野に入れたお金の掛け方とか、激しくメリハリの効いたストーリー構築の上手さとか、いろいろと差を感じるのだが、一方「国情」をストーリーに加えて深みを与えれるのは、正直「羨まし」くも思ったりしていた(無論、実際の社会では全く羨むような状況にはないわけだし、韓国の人に言ったら怒られるだろうが)。

しかし、今回の「非常宣言」には、そのような国情のバックボーンはない。それでもこの面白さと深み。恐れ入るしかない。堂々たるパニック大作である。導入から緊張の糸が緩むことなく、しかも韓国映画らしい情感にも満ち溢れている。
ソン・ガンホとイ・ビョンホンという、もはや韓国内だけでなく、世界的トップスターをツートップに据えて、それぞれが地上と上空に分かれてバイオテロと戦うという構成も含め、脇役に至るまで描写が行き届いている(個人的には、パニック状態の機内で、恐怖に押し潰されそうになりながらも、チーフパーサーとしての職責を果たそうと努めるキム・ソジンの凛とした佇まいに♡)。
緊張と興奮のフライトを終えたあとの、静かな余韻を湛えるラストも素晴らしい。