【ゆのみん企画・傾く
ユノ31歳(日本では30歳)お誕生日記念作品

『心が傾く時』1

心が傾く時がある。

信念がぐらつくとか、うまい話に乗っちゃうとか・・・そう言うことでなく、僕が言いたいのは、今までそんなこと思ってもなかったのに、あることがきっかけでぐらりと心が動くことだ。

「それなら心が動くでしょ?」と、いわれそうだけれど、そうじゃなくて・・・僕が体験したことは本当に心が傾く経験だった。

 

 事務所に入って、ダンスのレッスンやら歌のレッスンやらを日々の勉強をこなしながらやっているうちにデビューの話が来た。

どうやら僕は異例中の異例だったらしく、まわりの練習生達が驚いていた。

そして、一緒にグループを組むことになった先輩方の名前を聞いて、再度大きく驚いていた。

 今の僕なら、それはすごいことなんだった理解できるけど、当時の僕は日々のレッスンをこなしていくことと勉強の両立がすべてだったから、「これからもっと大変になっていくんだろうな。」という漠然とした思いと、人前で歌えることへのわずかな喜びを持っているだけだった。

そして、メンバーの一人がユノ先輩だって言うことにも、少し不安を覚えていた。

 ユノ先輩の第一印象は、正直言うと最悪だった。

「いい加減な気持ちなら、すぐにやめろ。」そんなこと、面といわれたら誰だってカチンとくるはずだ。

そんな言葉を言うだけあって、すごく厳しいし、怖い。

ときどき出る方言が、すっごく怖い言葉で・・・マジで苦手だと思っていた。

でも、まわりの練習生から聞くと、「ユノ先輩ってやさしいよね。」とか「ダンス教えてくれたんだ。」とか良いことばかり。

もしかして僕一人嫌われているのか????そんな気分になった。

こんな苦手意識を持ったまま、僕達はグループのメンバーとして、ダンスや歌の練習をともにするようになった。

 メンバー5人のうち3人はユノ先輩と同じように練習生として長くやってきた人たちだった。僕より2つ、または一つ上の年齢だ。

もう一人はアメリカでのオーデイションに受かった人だった。僕よりも2つ上の人だった。僕はグループのマンネで、この世界のことを全く知らない普通の高校生だった。

 僕は4人のヒョン達に一生懸命ついていった。

ユノヒョンはグループのリーダーになった。

いろんなことに厳しかった。時にはほかのメンバーとぶつかることもあった。

そんなヒョン達を僕は黙ってみていた。くちなんて挟めない。だって僕には何もなかったから。ダンスがうまいわけでもないし、歌の技術もなかったから。

「チャンミンは、歌は上手ね。それに男の子なのに素晴らしい高音がでるわね。」と歌の先生に言われたことだけが自分の特徴であり武器なんだと思っていた。

ユノヒョンからは、いっぱい怒られた。怒られたって言う表現は良くないな・・・指摘された。特にダンス。あとは、受け答えの声が小さいだとか、姿勢が悪いだとか。

でも不思議だけど、腹は立たなかった。悔しい時はあったけれどね。

ユノヒョンの言うことは、間違っていなかったから。

ユノヒョンに怒られると、そのあと必ず他のメンバーの誰かが「大丈夫だよ、チャンミン!!」と慰めてくれた。

だから、ユノヒョンは、怖い人・・・そのイメージはぬぐえなかったけど、僕は何とか皆についていっていた。

 そうこうしている2月18日、僕は学校からいつもどおりに事務所のトレーニングセンターへ直行していた。移動の電車の中で、明日やった教科の復習をする。

なんのへんてつもない日に思えるかも知れないが・・・実は僕の誕生日だった。

「今日も遅いの、チャンミン?」母さんが朝僕に尋ねてきた。

「うん。」

「残念ね、お誕生日なのに。」

「仕方ないよ。」

「日曜日は夜レッスンはないわね。じゃあ、その日にお祝いしましょう。」

「うん、ありがとう、母さん。」

朝の会話が思い起こされる。

「あー、誕生日なのになあ・・・。」

そう思ってみても仕方ない。

いつも通りのレッスンをこなす。

一番最後は個別のボイスレッスンだった。僕はこのところ高音を無理なく出す練習をずっとしていたからだ。メンバー合同のダンスのレッスンが終わると、僕以外はレッスンはないようだった。

「チャンミン、これからボイスレッスン?」ユノヒョンが僕に聞いてきた。

「ハイ、ヒョンは終わりですか?」

ユノヒョンは光州の出身だ。高校在学中は週末にソウルに来てレッスンを受け、平日は地元の学校に通っていたらしい。

けれど、今年高校を卒業した。今はソウルで事務所の宿舎に入っていた。

僕ももうすぐその寄宿舎に移ることになる。僕だけじゃない。ソウルに住んで実家から通っているほかのメンバーも移ってくる。そう、みんなで一緒に暮らすことになるのだ。

「俺は終わりだけど・・・。このところ毎日帰り遅いだろ?今日も?」

「はい、遅くなると思います。時間通りには終わらないですから。」

「そっか・・・。」

「ヒョン気を付けて帰ってくださいね。」

「ああ・・・。」

「じゃあ、失礼します。お疲れ様でした。」ぺこりと頭をさげてその場を後にした。

 

やっぱりレッスンは時間通りに終わらず、30分ほど延長していた。

僕のレッスンが、先生の最後のレッスンだから延長しても問題ないのだ。

そして、延長するほどに力を入れて教えてくださっていることに感謝していた。

高音は、今の僕の唯一の武器だから・・・。

帰り支度をして部屋を出ると・・・

「よう。」ってユノヒョンが廊下に立っていた。

おなじお題で記事を書いています。
素敵な記事はこちらから→http://yunomin.seesaa.net/article/393960313.html

to be continued・・・・

<つぶやき>
やっと今上がりました!!
ユノのお誕生日記念作品!!
そして、まさかの続き物!!(長すぎて1話におさまらず・・・(◎_◎;))
本日2月8日正午に更新いたします!!
白おおかみ