ボディーアーマー貫通を目的として設計されたロシアのSPS | ジャック天野のガンダイジェスト

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スモールアームズ(小火器)に関するエッセイです。同じアメブロで書いていたブログを継続して、不定期で更新して行きます。

ソ連軍の要請によって、ピョートル・セルジュコフによって設計され、おもにボディーアーマーを貫通する目的で試作されたのがギュルザとか、ヴェクトールSR-1と呼ばれる強力な自動拳銃です。専用の9mm×21弾(SP-10)を使用し、専用の徹甲弾を併用すると、ボディーアーマーだけでなく、車体も貫通したと言われています。開発されたのは1990年代ですが、ロシア軍は結局、9mm×19(9mmパラベラム)のMP-443を採用してしまいます。


このため、試作に終わるかと思われたギュルザですが、FSB(連邦保安庁、KGBの後身)やFSO(要人警護局)が興味を示して、採用することになりました。そして、名称をSPS(サモザリャドニ・ピストレット・セルジュコヴァ)、つまりセルジュコフ自動拳銃として正式採用されることになったのです。


このSPSの作動方式はワルサーP38やそれに影響を受けたベレッタM92Fのように、ショートリコイル方式で、トリガーはダブルアクションですが、ハンマーを指で起こすことでシングルアクションにも使えるようになっています。弾倉はダブルコラムで18発を装填できるようになっていますが、このため、グリップはかなり太く、弾倉は長いものになっています。全体のデザインはPM(マカロフ拳銃)に似ていますが、ひと回り大きく、そして重い拳銃です。


欧米ではセルジュコフSPSとも呼ばれているようですが、ロシアでも一部で使われているような特殊な自動拳銃のためか、ゲームをのぞいて、映画などには登場しません。



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