ある当直の日の出来事から | 文武両道を目指す!~ペンは剣より強し~

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先代の白頭山は格闘家ですが、勝手に二代目を襲名した白頭山は文筆で勝負します。

時間外外来での出来事を少し…。

病院には時間外外来がありますが、基本的に「急を要する症状の方」向けにこじんまりと開放しています。

僕は内科医ですが、当直帯は1人で外来も病棟も担当しています。

当然、病棟で容体が急変した患者さんが出ると外来がストップしますし、外来が多いと病棟に手が回りません。

医者は基本的に不足しているので、このような状況でも一晩支えないといけません。

だからこそ、「コンビニ受診」を止めるようなアピールもあるのです。



そんな中、直接時間外外来の窓口に、16歳男子の母親が受診依頼に来ました。

本来、上記のような事情があるので、前もって電話をしてもらい、診察可能かを聞いてもらってから受診の案内をするようにお願いしていますが、直接病院に来られる方がいます。

この点についてはいいのですけどね。


この16歳男子は、37℃台の発熱、咳嗽がメインの症状でした。

この子の10歳の弟も同じような症状で、時間外の小児科医を受診しています。

しかも、8歳の妹が前の週に同様の症状があり、他院でマイコプラズマと診断されてたというではありませんか!


それなのに、この母親、16歳男子が発熱してるのを3日間放置してたのです。

「いつから発熱が?」と僕が聞くと「3日前から」とのことで、その時点で眉を顰めてしまいます。

時間外外来はあくまで緊急処置向けであるにも関わらず、3日前から発熱しているのに、それまでに検査や投薬がふんだんにできる通常時間内の外来を一切受診させていないし、薬局で売ってるようなお薬も飲ませていないとのことでした。

愕然として理由を問うと、「私が仕事を抜けられなかったし…云々」と、口籠るように言い訳する始末でした。

「コンビニ受診は止めてくれ」と、今や色々な所から散々アピールされているにも関わらず、お構いなしに自分の都合で病院に連れてきたのです。


マイコプラズマ肺炎は、何故か夏季オリンピックが開催される年を中心に流行する肺炎なのですが、比較的若い世代でも感染、発症します。

38℃を超える高い発熱、咳嗽などの症状が出て、胸部レントゲン写真で肺炎の陰影が分かります。

ただ、血液検査が特殊であり、時間外外来では確認できないどころか、採血しても結果が出るまで3日程度は必要とします。

時間外外来は、院内の検査室も当直の技師1人だけなので、ごく一般的な検査しかできません。


ただ、16歳男子は熱が37℃台と高くなく、喉が真っ赤に腫れてましたが、聴診器を当てても肺炎を思わせる雑音が聞こえません。

マイコプラズマが関係してるかは判断に困りますが、少なくとも咽頭炎が発熱の原因のようです。

僕より前に10歳の弟が小児科受診を終えており、僕の診察結果と同様の状況だったようです。

この状況も踏まえて、咽頭炎が原因の発熱であろうと診断しました。


すると、母親はかなり不服な顔になりました。

マイコプラズマの件を切りだしてきますが、僕が「心配なら、何故もっと早く受診しなかったのか? 3日間も発熱があるのを分かってても受診させない間に重症化したらどうするつもりだったのか? 仮にマイコプラズマ感染としても、時間外である現時点では精査できないし、投薬で経過を見る以外に手段が無い」と切り返すと、むくれ面で下を向きます。


そして次に発した言葉が、「じゃあ、インフルエンザは?」でした。

心の中でずっこけました。

何が何でも検査しないといけないようです(笑)

16歳男子に聞いても周囲でインフルエンザは流行していないとのことですし、大体がインフルエンザは発熱から48時間以内が勝負なのです。

48時間以上経過すれば、タミフルをはじめとした薬剤の適応が無く、発熱などの症状緩和(対症療法)が治療法となります。

このことを踏まえて説明すると、本当に渋々と言った感じで納得し、「明日の通常時間の外来を受診させます」と、やっと言いました。

そして最後の最後には、薬の希望を言ってきました(笑)

何が何でも自分が優位にならないといけないようです…。



こんな困った人もいます…。

時間外外来、医者も精一杯頑張ってるので、本当にしんどい時にだけ受診して下さいねm(__)m

しかし、最近は会話が通じない(意思疎通が難しい)人が増えてます。

こういうのって、ネットだけじゃないんですねー(+_+)