GOMESS「し」 | Rotten Apple

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[Japan,HipHop]

01.LIFE
02.笑わないで with いな (QQIQ)
03.海月半角 with 木村仁美
04.keep with 姫乃たま
05.盲目の秋
06.THE MOON
07.Alien
08.カーテンのない部屋
09.終焉
10.ゆうかい with BOKUGO
11.し
12.時間
13.箱庭


自閉症とともに生きるラッパーとして注目されたGOMESSによる2ndアルバム。彼が常日頃感じている「死」について「詩」で綴るという暗いコンセプト。絶望とポップスを融合させ、まるで聞き手と会話するようにリズムやライミングや歌詞カードすら無視してフリースタイルに言葉を吐き出していく。

彼のパーソナルな一面を深く知りたいのならまず「LIFE」を。人間じゃねー俺はエイリアンだと言う彼の日常はそれが冗談とは思えないほど痛々しい。
またアルバム中盤の「Alien」ではたくさんの仲間(高校生ラッパーMC☆ニガリの名前も)が駆けつけた中さらっと聞こえるParanelのコーラスがたまらない。「カーテンのない部屋」は観音クリエイションばりの繊細なビートにストレートな歌詞が彼の不器用な温かさを感じさせる("さようならも言えてないのに、はじめましてを言わなくちゃな ごめんなさいを言えてないのに、ありがとうばかり増える…")。
YAMANEをゲストに招いた詩的な「THE MOON」、中原中也の詩を朗読した「盲目の秋」や女性ボーカルとのコラボレーションなど彼の新しい試みもあるが、ネガティブで始まりネガティブで終わるところがなんとも彼らしくて微笑ましく思えてくる。

もし彼のプロフィールを読んで、ただパーソナルな陰鬱さに浸るアルバムを求めていたなら期待外れかもしれない。確かにネガティブなアルバムではあるけれど、聞き終えて心に残るのは彼の人柄と温かさだ。LOW HIGH WHO?へ入る際に言った "いつでも死ねるので生きている間、尽くします。" という言葉には、もし歌うことで救われる人がいるのなら生きる意味はあるんじゃないかという思いがあった。
彼の歌で救われた人はたくさんいて、彼のことを何故か放っておけないと感じている人もたくさんいる。だからこそ演者と客という関係性を超え親しみを込めて皆ゴメス君と呼ぶのだろう。皆が彼のことをゴメス君ゴメス君と呼び続ける限り、きっと彼は歌い続けてくれるはずだ。