CICADA「BED ROOM」 | Rotten Apple

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[Japan,Pop/R&B/TripHop]

01.ふたつひとつ
02.Naughty Boy
03.君の街へ
04.夜明けの街
05.フリーウェイ
06.月明かりの部屋で
07.Colorful
08.雨模様
09.あなたの影
10.熱帯魚
11.door


国内インディに黒さを感じさせるアーティストが増えてきているというのは周知の通り。いくつか名前をあげると、10人組ヒップホップチームSANABAGUN、ジャズ/ヒップホップバンドSuchmos、京都のアコースティックユニットDADAKAKA、そしてインディR&BユニットN.O.R.K.もここにカテゴライズして良いだろう。もっと広げるならShiggy Jr.も「Baby I Love You」や「サンキュー」でポップとブラックミュージックをクロスオーバーさせていたし、ブラックコンテンポラリーを取り入れたEspeciaもこの流れに含めて良いかもしれない。何がきっかけでこの流れが生まれたのか定かではないが、EDMをはじめとするド派手でイージーなものに対するカウンターのような気もするし、90年代J-POPの再評価がきっかけのような気もする。何にせよリスナーはこの流れに火が着くのを待っていた。明確にブラックミュージックを取り入れたポップスを鳴らす存在を待ちわびていた。

東京の5人組バンドCICADA(シケイダ)はまさにその待ちわびていた存在だろう。MASSIVE ATTACKの名の元に集まった5人はErykah BaduACOUA一十三十一などをフェイバリットにあげる都会的上質ポップミュージックバンド。全体的にジャジーな曲調でミニマルなドラムに甘い歌声が乗る。先行公開されていた「Naughty Boy」が象徴的なように聞き手の耳を引き寄せる劇的な展開は少なめに、心地よく落ち着いたテンションを最後まで維持する。エレクトロニカ要素強い人力ビートの「フリーウェイ」、パーティ感溢れる「Colorful」、ピアノジャズバラードな「雨模様」、エモーショナルに歌い上げる「door」などポップチューンからクラブやカフェで流されることを想定された黒い曲まで。様々な要素を取り入れつつも自分達の芯は曲げず、安易に聞き手の心を揺さぶるキャッチーな展開を入れない。そこに彼女達の強みを感じる。
しかし同じテンションで進むからという理由ではなくどこかこのアルバムを聞き終えて物足りなさを感じたのは事実だ。それは彼女達に膨大なポテンシャルを感じているからなのだろう。今年中に出したいと言っている次のアルバムこそ真価が問われるように思う。よりミニマルへ寄るのかポップに寄るのか楽しみだ。

EDMがデスクトップで聞かれ、J-POPがクラブで流れる今の時代においてクラブ、ライブハウス、フェスなどどこで鳴らされても違和感のないサウンドが重要視されている。それがTVの音楽番組やヒットチャートで鳴らされたとしても構わない。そう考えるとこの流れは90年代後半に宇多田ヒカルMISIADragon Ashがヒットチャートへブラックミュージックを持ち込んだときを思い出す人も少なくないだろう。それを引き合いに出しても劣らないほど今の国内インディシーンは素晴らしい才能に溢れている。まだまだTLに良い音楽が流れ続ける日々は続きそうだ。