雲のすみか「テテロルルロ」 | Rotten Apple

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[Japan,HipHop/Electronica]

01.Y.M.O
02.made in 泥団子
03.おぼろげ雲天すすだらけ
04.散っても咲く花
05.ルミナの青
06.a local tent war
07.てふてふ乱舞
08.yaa la
09.夢の夢の夢
10.ナイトメアロールシャッハテスト


彼の目にはこの世界がどんな風に見えてるんだろう。普段誰も気づかないようなところにフォーカスし、どんな風景もまるで画像アプリで加工したかのようなくすんだセピア色に映し出される。そんな風に世界を感じられればこんなアルバムが作れるのかもしれない。
ラップ、トラック、そしてアートワークも自ら手掛ける雲のすみかの1st作品集。このアルバム、KOHHよりもAKLOよりもGAGLEよりも重要作な気がするよ。

ヒップホップ×エレクトロニカ×民族音楽をクロスオーバーしたサウンド。様々な楽器とフィールドレコーディングした音を重ねたトラックは、それのみでも曲として成立するほどの完成度。その高水準なトラックの上に現実と空想を行き来する詩でノスタルジックな物語を作り上げていく。耳に心地よい抽象的な言葉を並べ聞き手に情景を浮かばせる彼のラップは、完成されたトラックの世界観を崩すことなく耳に入ってくる。
何故かわからないけれど「made in 泥団子」からは物語が動き出す序章めいたものを感じるし、「夢の夢の夢」からは空想から解き放たれる切なさを感じる。美しいピアノループと、最後に心の深いところを突いてくるリフレインが涙腺を刺激してたまらない("夢の夢の夢とは 触れていたいその夢とは 溢れていたいその夢とは 惚れていたいその夢とは 溺れていたいその夢とは")。

アルバムを聞き終えて思ったのは、まるでジブリ映画のようだなと。明確な1つのテーマがある訳ではなくさりげないテーマが至るところに散りばめられている。それは1回聞けば気づけるようなものではなく、繰り返し聞くことで徐々に全体像が明確になっていく。そう考えるとラスト「ナイトメアロールシャッハテスト」の場違いなハイテンションサウンドはアニメのエンディング曲のように聞こえてくる。世界観を引き摺ったまま終わらせるのではなく、確実に現実へと戻って来させるためにこの曲はあるのかもしれない。

ラップ5曲インスト5曲トータル35分弱という物足りなさを感じるボリューム。すぐに全体像が掴めるアルバムであればこれほど繰り返し聞くことはなかっただろう。
抽象的で深みを持たせた物語性のあるヒップホップ、このような作品こそ日本で生まれ育った人がやっても違和感のないヒップホップだと思うのだけれど。




(ちょろっとだけ出てきます)