スタン・オニールのメリルリンチ(WSJ 10月8日) | カフェメトロポリス

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ウォールストリートジャーナルをじっくりと読むことの面白さは、リアルタイムで、今、資本市場で起こっていることの展開を追いかけることができることだ。しかも、現在に至るまでのプロセスを、かなりしつこく、人間的に書き込んでくるので、読み物としても、かなり楽しめるのだ。このあたりが米国の金融ジャーナリズムの奥深さの土台を形成している。サブプライム問題に端を発する信用危機は、証券会社や、銀行の損失の発表や、それに伴うトップの責任問題などと、日々、動いている。メリルリンチのCEOスタン・オニールが引いた、リスクを取っていく路線がどのように今回の巨大損失につながっていったかという108日付のRandall Smithの記事だ。

メリルリンチのCEOとしての5年間の在職期間中に、アフリカ系アメリカ人としてウォールストリートの大手証券会社のトップを占めているだけでもかなり稀有なスタンレー・オニールはアメリカのトップ証券会社の大改造を行った。彼は、マザーメリルと呼ばれた、温かい企業文化を、よりダーウィン主義的な、業績重視の文化へと変革し、高リスクの大きな賭けを重要視し、株式をただ売買するということへの依存度を下げようとした。

オニール氏は、リスクへの許容度は高いが、その結果、生じた過ちへの許容度は低い。彼は、定期的に、時折は暴力的ともいうべき、トップ経営陣の刷新を行ってきた。先週起こったのもそのなかの一つである。

とはいえ、企業文化の変化によって、メリルの収益は向上した。収益性の主要尺度であるROEは、オニール氏が指揮を取る直前の2002年の7.5%から現在の21.3%にまで上昇している。

しかしメリルの変身には大きなコストが伴っていた。先週の決算発表で明らかになったように、サブプライムモーゲージ担保証券というリスクの大きな証券の巨大な在庫の45億ドルという評価減を発表し、利益予想を下方修正したのだ。

トップダウンのやり方で、ある意味、独断専行で、企業文化を変えてきた、スタン・オニールの手腕が、今回の信用危機の大波をどのように乗り切っていくのかが注目されている。

The "cultural change" and the accompanying turnover may have cost Merrill a loss of "more institutional memory than they would have liked," said analyst Mike Mayo of Deutsche Bank AG. But he said that even after the loss, the firm's 18% return on equity for 2007 should still comfortably exceed its historical average of 15%.

企業文化の変化と、それに伴う離職によってメリルは、同社が望む以上の組織的記憶を失ってしまったかもしれないと、ドイツ銀行のアナリストのMike Mayoは言う。しかし、彼は、こういった損失の後にも、2007年のROE18%は同社の過去の平均である15%は、十分に上回っているのだ。

Merrill executives defend Mr. O'Neal's management style. "Stan is a smart, tough, successful CEO, and you need to be very capable and confident to interact with him; he doesn't suffer fools gladly," says Gregory Fleming, who was named Merrill's co-president in May.

メリルの経営陣はオニール氏の経営スタイルを擁護する。「スタンは、スマートで、タフで、成功しているCEOだ。そのため彼に対応するためには、有能で自分に自信がなければならない。彼は愚か者とつきあうのを喜んで耐えるタイプじゃない。」と、5月にメリルの共同社長に任命されたグレゴリー・フレミングは言う。

Other executives at the firm point out that even after the multibillion-dollar hit Merrill is taking on its mortgage-linked bonds, the firm expects to report its second-highest profit ever this year, a testament to its ability to absorb such a big loss.

同社の他の経営幹部は、数十億ドルの損害の後でも、メリルはモーゲージ関連債券を引き受け続けており、今年は、過去2番目の利益を計上している。これは巨額の損失を吸収できる能力の証明である。


"I don't think there's a choice in the modern capital markets for firms like us not to take risks," Mr. O'Neal said in a video shown to Merrill employees Friday. Clients demand it, he said, and won't pay for mere "execution." The alternative, he said, would be to accept "sub-par returns" or become part of a "larger entity," depriving Merrill of the ability to "control our own destiny."

金曜日のメリルの従業員向けビデオのなかで、オニール氏は、「現代資本市場において、我々のような企業にはリスクを取らないという選択はありえないと思う。」と述べた。顧客が我々にリスクを取ることを要求し、単なる、取引執行には、お金を払わないようになってきているのだ。リスクを取らない場合には、「最適とはいえないリターン」を受け入れるか、「大企業」の傘下に入るかどちらかである。この選択肢はメリルが「自分の運命を自分で決める能力を奪うことになる。」

Merrill's stock has trailed that of some major rivals. Since December 2002, the start of Mr. O'Neal's tenure, Merrill's stock has risen 102%, compared with 236% for Goldman Sachs Group Inc., 140% for Lehman Brothers Holdings Inc. and 122% for Bear Stearns Cos. Only Morgan Stanley, which like Merrill had less exposure to bonds during a booming bond market, trailed Merrill Lynch, with a 101% increase counting a stake shareholders received in June in Morgan Stanley's Discover credit-card business.

メリルの株価は主要な競合他社の株価に比べて低迷している。200212月に、オニール氏がCEOに就任以来、メリルの株式は102%上昇している。同時期に、ゴールマンザックスは236%、リーマンブラザーズホールディングは140%、ベアスターンズは122%上昇している。メリルと同様、債券市場のブームの時に、あまりリスクを取らなかったモルガンスタンレーだけが、モルガンスタンレーのディスカバークレジットカード事業が6月に受け取った分を入れても、101%と、メリルの株価の動きを下回っている。

Mr. O'Neal has a harsh side that can intimidate colleagues and, critics say, discourage debate and dissenting views. Until May, he was also reluctant to share power, holding all three top jobs at the firm as chairman, chief executive and president.

オニール氏には、同僚を恫喝し、論争や異なる意見を封じるという非情な面があると、批判者は言う。5月までは、彼は権限を共有することさえ拒否してきた。その結果、会長、CEO,社長という3つのトップタイトルをひとりじめしていたのである。