「やっぱりはっきりしないね」
「もっと大きくできないこともないみたいだけど、これ以上伸ばしてもね」
「デジカメみたいに簡単にはいかないのよね」
「あたしが見た映画では、カメラマンが自分で現像してたから」
「自分が思うようにできるんだよね。調整したり、よくわからないけど」
「たしか写真は白黒だったような」
「モノクロームか」
ハイソックスの写っている部分をズームして大きくしてもらったんだけど。
結果的にはハイソックスそのものがぼやけてしまった感じになってしまった。
「でもこれは間違いなくあの人だよ」
僕も嫁と同意見。
ここに移っている人物の醸し出す雰囲気は間違いなく彼女のそれと同じに思えた。
「でもあの人がこの写真を欲しがる意味が分からない」
「どんなふうに撮れてるかわからないからね」
「それに、僕たちが気づかない何かがあるのかもしれない」
嫁は納得したようにうなずきながら、まだ考えている。
しばらく考えたあと、ケータイを取り出した。
「ユキちゃんからメール来てる」嫁はニヤニヤしながらメールを読んでいる。
「ユキちゃんも興味あるみたい」
「ユキちゃんに話したの」
「メールしただけ。写真も添付したけど」
もし何かあるとすればユキちゃんは巻き込まない方がいい。
何かある可能性は低いと思うけど、全然ないわけじゃない。