身代金ウイルス、データ「人質」に金銭要求(5月26日日本経済新聞)

(1)企業を標的にネット上で“身代金”を求める新型のコンピューターウイルス。
感染するとパソコン内のデータが閲覧できなくなり、元に戻すには金銭を要求される。
ついた名前が「ランサム(身代金)ウエア」。

(2)情報セキュリティー大手のトレンドマイクロは25日、国内の法人顧客から受けたランサムウエアの被害報告件数が今年1~3月に、650件だった昨年1年間分を上回る。

(3)ランサムウエアは約10年前に欧州で登場した。
日本で一気に広まったのは昨年だ。
自動的に脅迫文を表示するタイプの相場は4万~5万円とされる。
データが消えることを懸念して犯人の要求に屈する被害者が増えたもようだ。
要求通りに支払うと「多くの場合、約束通りにデータを復元してくれる」
「支払っても約束を守らない」という評価が定まれば、犯人にも不都合だからだ。

(4)米国で、2月5日、米ロサンゼルスの病院。
「元通りにしたければ40ビットコインを支払え」。画面上にはこんなメッセージ。
1万7千ドル(約187万円)相当の仮想通貨「ビットコイン」を求めるランサムウエアの仕業だった。
同病院が選んだ解決策は要求に応じることだった。

(5)日本でも昨年7月2日、駅ナカ商業施設を運営するJR東日本ステーションリテイリング(東京・港)で、社員が会社のパソコンで閲覧したウェブサイトにランサムウエアが仕込まれていた。
パソコンからサーバーへと感染が拡大。サーバーに保存していたファイル1万個が暗号化され、閲覧できなくなった。
被害にあったのは売れ筋商品の分析などに使う営業関連のファイル。
同社ではデータのバックアップを取っており、自力でファイルを復元できた。
 
(6)企業はデータを予備のシステムに記録するバックアップで万が一に備える。
NECではバックアップシステムからデータを引っ張り出して業務を継続する体制を整えている。
日ごろから重要なデータを保護する。デジタル時代に当たり前の対策が企業防衛の第一歩だ。