英労働党で急進左派台頭(9月1日日本経済新聞)
格差拡大不満の受け皿

(1)英国の労働党が次期党首選で、党内最左派のジェレミー・コービン下院議員(66)が本命候補に台頭し、党内外に衝撃が走っている。
労働党が掲げてきた中道路線を否定し、鉄道や電力会社の再国有化などを主張。
緊縮財政や格差拡大に不満を抱える労働者層らに支持を広げる。

(2)無名に近かった急進左派のコービン氏が最大労組ユナイトの支持を得た。
公共部門労組ユニゾンも投票先の第1希望として指名。
その主張は過激だ。公的支出の拡大をためらわず、公務員の待遇改善につなげる。
鉄道、電力会社の再国有化も掲げる。

(3)金融危機以降の緊縮策に伴う賃上げ凍結などに不満を持ってきた労働者や、保守党との差別化が必要と考える若手党員の支持を急速に集めている。
(4)労働党幹部たちはコービン氏の躍進に危機感を募らせる。
1997年に発足したブレア労働党政権は市場経済を重視する「ニューレイバー」を掲げ、中道路線を取ることで支持者を拡大、政権を奪回した。

(5)「反緊縮」など大衆迎合的な主張を掲げる急進左派勢力は、ギリシャやスペインなど、財政難に苦しむ南欧諸国で台頭。

(6)労働党史上もっとも左傾化しているとされるコービン氏が党首になれば、英政治への影響も大きい。
欧州連合(EU)離脱の国民投票で、労働党が分裂すれば、保守党の強硬派を勢いづかせ、離脱への勢いが増す可能性がある。