シェール革命の死角(上)(7月15日日本経済新聞)
「安いガス」開発・利用に逆風
人件費高、出光は工場断念

(1)米国発シェール革命に異変が起きている。
活況の裏側で人件費などのコストが上がり、頓挫するプラント計画が続出。
ガス田の採算は悪化し、メジャーでも損失の計上が相次ぐ。

(2)出光興産と三井物産と組んだ米テキサス州での化学品の共同生産。
1年前に合意したばかりの案件だ。
「賃金や資機材が大幅に上がる。このまま続けるのは難しい」。
プラスチックや洗剤の原料を作る工場を1千億円で建設する予定だった。
シェールガス由来のエチレンを使えば収益性は高く、短期間で投資回収できると踏んでいた。

(3)米国で安価なガスを当て込んだ液化天然ガス(LNG)プラントや化学工場の建設ラッシュが続く。
人材争奪戦は激しさを増している。
資源バブルに沸いたオーストラリアで労務費が急上昇したのと同じ構図だ。
1月に初めて北米でLNGプラントを受注した日揮。
現地法人の首脳は「もはや期待感だけではない」と、先行きに神経をとがらせる。
 
(4)英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは昨年12月、シェールガスから液体燃料をつくるルイジアナ州のプラント計画を撤回した。
日揮は受注を狙って接触していたが、シェール関連事業にも落とし穴が潜むことが露呈した。

(5)シェールガス事業が想定通りに進まない理由は2つ。
まず頁岩(けつがん)と呼ぶ硬い地層に閉じ込められ、ガス田の良しあしを見極めにくい。
「掘ってみて、期待した量のガスが出ない事態は多い」と明かす。
もう一つは市況。シェールガス増産に伴い、北米のガス価格は低迷している。