匠乃固鞄が始まったときのこと | 匠の固鞄通信

匠乃固鞄が始まったときのこと

$匠の固鞄通信-50年トランク


このチョコレート色に日焼けして年季の入ったトランクは、私が匠の工房を始めた訪れた時に部屋の片隅に置かれていたトランクです。当時で「40年前くらいに作ったかなあ」と言われていたので、今ではアラフィフ・・・おっと、50歳近い年季の入ったトランクです。

ビクともしていません。現役です。

これを見て、「トランク屋やりたい!」と思ったんです。

そして、サイトを作った時に書いた文章がこちらです。



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型枠鞄、旅行用トランクなら国内一いや世界一!匠の技

良い鞄は成長する! 始めて氏の職場を訪れて知った事である。
私がバッグ好きになったのは、以前10年程勤めた雑貨輸入会社の仕事で度々イタリアの工場をまわっていた事が大きな原因だろう。
毎シーズン10数社の鞄工場をまわって商品を仕入れていた。
イタリアの革製品は確かに素晴らしいものである。デザインや革の加工技術、どれをとっても世界最高水準である。そんな工場の製造現場に接してきたのである。
そんなことで、以前から沢山のバッグを入手し使用してきた。
確かに鞄は成長する、といっても、使う人の癖に合わせて馴染んでくるのである。こんな経験は誰にだってあると思う。ナイロンのバッグならくたびれてくるだけであるが、革は伸びたり硬くなったり、使う人に馴染んでくる。使い込む程に馴染んでくる。しかし、いつかはくたびれて擦り切れたり破れたりして寿命を迎える。

匠の鞄は成長する。確かに日に焼けたり擦切れたり破れたりもする。しかし、そうではない成長がある。
トランクのベースは木枠である(主に桐)。その周りに革を貼ってある。これが本体で、そこに内装のポケットや間仕切りや把手等が付いている。大体先にくたびれるのは内装や把手からで、もちろんこれらは作りなおせる。

成長するのは本体である。ベースの桐と革とが長い年月で馴染んでくるのである。日に焼かれ、乾燥し、湿気を吸い、伸びたり縮んだりしながら馴染んでくる。
匠の作業場に古いトランクが置いてある。40年物の現役だ。

チョコ色のトランクは今なお現役である。初めは深紫のヌメ革だったそうである。チョコトランクは今でもピッタリと蓋がしまる。成長したからである。
それ以外にも多くのトランクやバッグが無造作に置いてある。埃をかぶったり光に焼かれたり、ただ置いてある。
こっちが20年位、そっちは実験的に作ってみた・・・等々。日常的な保管でどう変化するかを観るためだと言う。

桐の箪笥は引出しを閉めると他の引出しが飛び出てくる。気密性が高く内部の空気の逃げ場が無いためである。匠のトランクも蓋を閉める時に空気を孕む。あと 1cmでエアクッションがかかったようにフーッと閉まる。これが10年30年と経つにつれもっと馴染む。そう、成長しているのである。

匠は革と桐枠の癖を熟知している。。革は使う部分によって全く違った性質を持つ。自分の体の皮膚を考えてみてもすぐ解る。背中と顔・腹・脇など場所によって張りや柔らかさが全然違う。これに皮から革へ加工される工程で色々な性質が生まれてくる。それを見極めながら、永年の経験でバランスよく貼ってゆく。これをきちんとこなせるから匠である。

「難しいのは糊だ。新しいのがどんどん出てくるで。糊も何十年経つとどうなるかみんならんけど、なかなかそうはいかんで」
匠はまだまだ勉強中と笑って答えた。


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チョコレート色のトランクは、今でも工房を訪れると「社長室」の棚の上に鎮座しております。
鍵も立派で、一度も壊れたことが無いという東京新橋の「堀商店」のオリジナル。
同社は帝国ホテルとかのドアの鍵なども手掛ける、鍵の匠です。

ただ、この鍵は堀商店の許可がないと使えないのであります。残念。


もう一つご紹介は、トランクをやりはじめて初めて注文頂いたものです。


$匠の固鞄通信-第一号別注トランク


昨日書いた初めてサンプルのトランクを作ってから、地元の神戸新聞にでっかく掲載され、(コチラが記事)その記事を見て電話を頂きました。

「嫁さんが、鞄作ってくれるところがあるって新聞の切り抜きをくれたんだが、アタッシュケース作ってくれるカア?」と。

丁度、当時事務所があった六甲アイランドからすぐのところだったので、早速にお伺いして仕様をお聞きしました。


サイトで紹介している内容:




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祝!第1号別注企画商品~HORIKOSHIトランク

これは2003年1月に匠乃トランクとしてはじめて別注企画したトランクです。土木関係のお仕事の方で、とにかく頑丈に!ダンプにぶつけても壊れないように!1週間の出張で帰りにお土産が入れれるようにとの御希望でデザインしました。

角は補強の革当てが付き、型は丈夫な合板で本体木枠を作り大きな面にはウレタンのクッションが断衝材として入っています。
中仕切りは着脱式で、外せば本体と同素材のトートバッグに早変わりです。お土産入れに作りましたが、沢山のお土産はちょっと厳しいですね。
内張りは落ち着いたペイズリー柄。内ポケットも機能性十分です。

頑丈に作りましたが、ダンプにだけは踏まさないで下さい。




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ここから「別注革トランク」が始まったのでした。

では、また。

革トランクケースのPDFカタログ請求はこちらにあります。