でも日本にくると税金で倍になちゃうのかな



成長著しい新興国の総称「BRICs」の一角を担うインド。そのインド国内の大手自動車メーカー「タタ・モーターズ」が今年1月に発表したコンパクトカー「ナノ」が、わずか10万ルピー(日本円で約29万円)という超低価格で世界の注目を集めている。インド国内の発売は9月を予定されているが、実現すれば新車での世界最低価格(2008年3月現在)の乗用車になるという。

気になるスペックは、4ドア5人乗りのボディに624ccのエンジンを搭載。エアコンやパワステなどの快適装備は一切ナシで、ドアミラーやワイパーも1本のみという必要最低限の構成ながら、近未来的なデザインが印象的だ。29万円といえば日本では125ccスクーター並みの価格帯だが、果たしてインドではどのように受け入れられるのだろう? インド専門のコンサルタント会社、インド・ビジネス・センターの須貝氏に質問してみた。

「インド人にとっての10万ルピーは、日本人の物価感覚にすると100万円前後といったところでしょうか。想定される主な購買層は、インドの都市部に暮らす約2億人の中間層と呼ばれる人々です。彼らの生活の足である2輪車の相場が大体4~5万ルピー、商用に使われるオート3輪が15万ルピーほどですから、『ナノ』は2輪車と競合する新セグメントの4輪車だといわれています」

現在、インド国内の乗用車市場は、スズキの子会社である「マルチ・スズキ・インディア」がシェア全体の50%弱を占めている。しかし、これまで2輪車に乗っていた中間層が「ナノ」の登場をきっかけに4輪車へ乗り換えれば、乗用車市場そのものが一気に巨大化して変革が起こる可能性もある。

「タタ・モーターズの母体であるタタ財閥は、大規模な海外M&Aなども数多く行っており、インド企業のなかでも国際感覚の強さで知られています。すでに、イタリアの『フィアット』やドイツの『ダイムラー』など海外メーカーとの提携を進めているほか、2007年末からはイギリスの高級車ブランド『ジャガー』と『ランドローバー』の買収にも乗り出しており、成功すれば世界の自動車産業界でより強い影響力を持つことになりそうです」(同)

ちなみに、「ナノ」はインドのタクシー業界でも期待が寄せられているほか、数年後には中東諸国やアフリカ、ヨーロッパにも輸出が検討されている。日本での発売は今のところ予定されていないが、近い将来、旅行や出張で訪れる様々な国や地域で、「ナノ」に乗る機会があるかもしれない