基本的に映画を観る時は前売りを買うかレディースデイで観ると決めている。
1800円払って観る事は滅多に無い。


1300円の前売りでもお金のムダだと思う映画もある。
1000円のレディースデイで観て、定価1800円払ってでもお釣りが来る程だと満足する映画もある。


この映画は久々に通常料金で観て、しかも払っただけの事があったと大満足した。
ミステリー好き、謎解き好き、アクション好き、誰が観ても満足できる内容だと思う。


スウェーデンを舞台とした『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』はベストセラーとなった『ミレニアム』三部作の第一作。物語は雑誌『ミレニアム』編集責任者ミカエル・ブルクムヴィストが事実に悖る報道による名誉毀損裁判で有罪判決を受けるシーンから幕を明ける。


裁判での敗訴を受け、雑誌編集を離れる事を決めたミカエルの元に仕事の依頼が入る。仕事はスウェーデンを代表する複合企業・ヴァンゲル・グループの前会長であるヘンリック・ヴァンゲルから依頼された1966年に失踪した姪・ハリエットについての調査。ハリエットが失踪したその日、ヴァンゲル家のあるヘーデビー島ではヴァンゲルグループの家族会議が行われ一族が集結、更にその日はヘーデビー島とスウェーデン本島を繋ぐ唯一の橋が事故により封鎖されていた。ハリエットが一族の何者かにより殺害されたと信じるヘンリックの依頼により、ミカエルは30年以上昔の事故の真相を探り始める。


調査を進める内にミカエルは見知らぬ差出人からのメールを受け取る。そのメールにはミカエルが個人的に使用しているPCに保存していたテキストファイルが添付されていた。不審に思ったミカエルはヘンリックの弁護士にハリエット調査を依頼しているのが自分だけなのかを確認。そこで、ヘンリックがハリエット調査を依頼するに当たりミカエルの身辺調査を頼んだリスベット・サランドルの存在を知って…。


ちなみに私は原作既読。原作を夢中になって読んだので正直『ダ・ヴィンチ・コード』のように原作は面白く、映画はつまらないのではとの不安を抱きながら観たのだけれど、あれだけ長い原作を2時間程度の映画にしているので端折っている部分は多いのに関わらず、原作の世界観を崩さず、きっちりとしたストーリー展開で内容としては十分見応え有り。


何より、登場人物のイメージを崩さない俳優陣の演技は一品。当初ミカエルは「もうちょっとスマートで若い俳優が良いかも(個人的にはヒュー・グラントに少しばかり知性をプラスした感じがベスト)、とか『ミレニアム』編集長のエリカは『恋愛小説家』の頃のヘレン・ハントぐらいの若々しさが欲しいと思ったけれど、この映画の決め手は何と言ってもリスベット・サランドルの配役がいかに合っているかに掛かっている。そのサランドルは怒りに駆られた時の一種狂気に包まれた非情さや、パソコンを前に情報を引き出す際の冷静さ、ミカエルの前で垣間見せる孤独感や不安定さ等、どんな顔を見せても超が付くほど魅力的。


男性による女性への暴力に対する批判が作品のテーマの一つになっていることから、レイプ・殺人シーンは思わず画面から目をそらしたくなる程、凄惨なシーンも多く、グロイ・エグイという批評が多い事もよく分かる内容で。


それでも、封鎖された孤島での失踪事件、失踪したハリエットが残したメモから判明する連続殺人の犯人解明、ハリエット失踪の真実、ミカエルが有罪判決を受けた企業の実態解明等、多くのプロットが同時に進行し展開していく様は見応え満点。


久しぶりに「もう一度スクリーンで観たい」と思った映画だった。
第二部の『火と戯れる女』の公開が待ち遠しい。


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パブリック・エネミーズ

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私は自分が出演者で観る映画を選ぶタイプでは無いと思う。

それでも何故かジョニー・デップが出ている映画はよく観てしまう。


そんなジョニデ好きが高じてか、上映終了直前に観に行って来ました。『パブリック・エネミーズ』。


舞台は大恐慌直後のアメリカ。州をまたぎ銀行を襲う強盗集団に対し警察は“社会の敵”と戦線布告。戦いを挑まれた相手はジョン・デリンジャー。銀行を襲うが居合わせた個人客の金は盗らないという、ユニークな一面を持ちつつ、その場に居合わせた警官は容赦なく殺害する冷酷さを併せ持つ。


映画を観た感想としては、どっちつかずだな、という印象。アメリカの歴史に大して詳しくない私でも知っている伝説のFBI長官・フーバーに着眼するのであれば、州をまたいだ犯罪を摘発するFBIの機能確立までの過程をもっと警察寄りで描いた方が面白いだろうし、警察から“社会の敵”と言われるにも関わらず大衆に人気がある強盗団を描きたいのであれば、ジョニー・デップがロビン・フッド並みに盗った金銭をばら撒くとか、アルセーヌ・ルパンのように、明らかに汚職等に手を出している悪人からしか金を盗らない、人は殺さないみたいなポリシーを持って国民に人気のアンチ・ヒーロー的な描き方の方が面白かった気が。


仲間は裏切らない、一度惚れた女性にとことん尽くす等々、悪者だけれど憎めないキャラはジョニー・デップの十八番だなとは思ったけれど、個人的には結局は人を殺して悪事に手を染める強盗の枠を出ていなかったな、とあまり感情移入できず。警察側の代表、メルヴィン・パーヴィスについても「手段を問わずデリンジャーを捕らえる」事についてのジレンマをもう少し深堀して欲しかったな、と。いきなり最後に字幕でその後を語られるだけだと、ちょっと消化不良…。


辛口評価になりましたが、悪人の世界にも時代の流れがあって、銀行強盗が古い手段となり、悪人仲間からも見放され、警察の包囲が徐々に迫る中でのデリンジャーの苦悩は見応え有り。

ジョニー・デップファンはDVDでも良いので(←オイ)ご鑑賞ください。


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ラブリーボーン

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今年初めての試写会は『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン監督、アカデミー賞候補との呼び声も高い『ラブリー・ボーン』。感動物との事でハンカチを握り締めて観に行って来ました。


アメリカ郊外に住むスーザン・サーモンはごく普通の女の子。木の棒切れを飲んで窒息しそうな弟を助けるために奮闘(この助け方がスゴイ)したり、憧れの男の子を物陰から窺ったり。祖母役のスーザン・サランドンから「若さを楽しんで」と言われる言葉のままに目一杯生きていたその生活が、『生きる価値無し』という風情の異常者の手で突如奪われてしまいます。


レイプ・殺人と言葉にすると禍々しい表現になりますが、殺人そのものは生々しい映像は一切無く、スーザンが「殺された」という事実はスーザンが死後の世界を一歩一歩進む過程の中で幻想的な映像と共に説明されます。このまま進めば天国、という段階になり、スーザン(スージー)は天国へ踏み出さず生前の世界と天国の狭間に留まる事を決意。死体が見つからず、最愛のスージーがいなくなった事で崩壊していく自分の家族のその後を見守り続けます。


スージーが居る“生前の世界と天国の狭間”はピーター・ジャクソン本領発揮、という言葉そのままの美しい映像が次々と繰り広げられて。私は一見して「(ロード・オブ・ザ・リングの)ロスロリアンみたい」と感じましたが、罪も無く命を奪われた子供が存在するのに相応しいとしか言えない、ありきたりだけれど「美しく幻想的」という言葉そのままの映像は一見の価値有り。


映画の特徴としては、死者は生きている人達とコンタクトを取る事ができないという点。一時期大ブームだった「死後の世界から残された人々への贈り物」系のストーリーにありがちな、死者から生存者へ「生き続ける力になるようなメッセージ」が送られるような事は一切ありません。スージーの家族は、自分の身近に今でもスージーが居るのでは、と気配を感じる事は出来ても、彼女が狭間の世界から必死で話しかける言葉を耳にする事はできません。スージーは彼女が居なくなった現実を家族が受け入れる事を見守り、自分自身が居ないまま世界が進んでいく事を自分自身でも納得する以外にできることは無い。


スージーの家族がスージーを殺した真犯人に気付く理由についてはイマイチ説明不足、真犯人の末路についても納得いかない部分もあり、鑑賞後の気分爽快、とは言いがたいというのが率直な感想。


それでも静かな感動が物語の底辺に満ちているのは、スージーは自分を殺した犯人を憎む気持ちよりも、自分の居なくなった家族を案じる気持ちが強い、その家族の絆の強さにあるのでは、と感じました。

映画の中で展開された美しい映像を思い浮かべながら、原作も読んでみたいと思います。


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