9月5日

 【70%の未知の領域】



 一年ほどの前のことです。母校の高校で【キャリア教育セミナー】の講師を引き受けました。卒業生が20人ほど集まり、社会人としてのそれぞれの領域のことを在校生たちに向けて話すという年に一度の企画です。在校生たちは、20程あるセミナーのレジュメを見ながら、興味のある講義を二時間分聞くのです。

 高校ともなると同じ学年の人間であっても全員知っているわけではありません。ましてこのセミナーでは、上は還暦越えから下は20代まで、職業も様々な同窓生に会えて話ができるので、私自身も本当に勉強になったセミナーでした。



 このセミナーに来ていた同窓生に、教育関係の出版会社に勤めている人が居ました。彼女から聞いた話は、私には非常に興味深く記憶に残っているのです。

それはアメリカでの研究結果ですが、小学生に将来どんな仕事に就きたいかを尋ね、実際にはどんな職業に就いたかを追跡調査するという研究でした。その結果、70%の人間が、小学生の時には存在して居なかった職業に就いていたと言うのです。

小学生の時に夢に描いていた仕事に就けなかった人が70%と言うのではなく、存在すらしていなかった職業に就いていた…小学生から社会人になるまでに10数年、そのたかが10数年の間に、社会の70%が変化していくという事なのです。



その70%の未知の領域は、もちろん技術や科学の進歩による新たな産業の創出の場合もあるでしょう。この10年で言えば、携帯電話の普及、スマホの登場は、技術の進歩とともに大きな産業の創出の場となったはずです。そして同時にもう一方で、その時の社会の問題に取り組んだ結果としての仕事の創出もあったはずです。介護の領域の仕事がその代表だと思いました。

その場その場での問題に目を向け、その解決を社会システムに組み込む…仕事として成立させる…これこそ、問題に対し、自分で考え判断する、自律的市民のリーダーシップが力を発揮するところなのではないかと思うのです。



【フロント‐エンドの教育】の限界は、10年単位で社会が劇的に変わっていく現代社会の、当然の帰結だと私は考えます。そしてそれは教育の在り方だけでなく、社会人としての、仕事や生活に対する意識も変わっていかざるを得ない事なのだと、私は思うのです。