自民党内に『日本産酒類振興PT』が発足し、幹事にご指名いただきましたので第一回の会合に参加しました。
2015年の農林水産物・食品の輸出額は7,452億円。政府目標は2020年に1兆円ですが、その中間目標である2016年7,000億円を一年前倒しで達成しました。農水産物の輸出は順調に拡大傾向にあります。一方で、清酒、ビール、ウィスキーなどの日本産酒類の輸出額は390億円にすぎません。
フランスのワイン輸出額7,951億円(2012年)注、イギリスのウィスキー輸出額6,721億円(2012年)注と比較すると、日本産酒類の輸出額はあまりにも少ないです。
私は、日本産酒類の輸出額を増やすために、という視点で意見を言わせていただきました。
 
日本産酒類の輸出を増やすための国の役割は三つです。
一つは「環境を整備する」こと。国によっては、日本酒の関税はフランス産ワインや英国産ウィスキーよりも著しく高く設定されています。これでは日本酒は他国のワインやウィスキーと対等の土俵で戦うことができません。
二つ目は「日本酒のブランディング」です。国の役割は“株式会社日本酒”として、日本酒をしっかりブランディングすることであり、個別の企業や蔵元を応援することではありません。スポットで補助金を出したり、日本酒セミナーや試飲会を開催するといったことは国の役割ではありません。
 三つ目は「自立した企業・蔵元を応援する」ということです。明確な輸出戦略もなく、「補助金がつくなら輸出にトライしてみようかな」といった中途半端な気持ちの企業や蔵元を支援しても、結局成功することはできません。

 私は現在、中小企業・小規模事業者の経営力強化、地方創生、農業の発展、クールジャパン推進などのプロジェクトに関わっております。これらのすべてに共通するのは、国の役割は「環境を整備する」「ブランディングを支援する」「自立した企業を応援」の三つだということです。

ある研究によりますと、自働車やカメラなど日本が競争力を持つ成功産業においては、大規模な補助金政策や競争への介入など、政府の支援は全く存在しなかったとのことです。
 農業においても、国の保護政策が強かった日本産コメは世界市場では価格の面で弱く、ほとんど保護されていなかった野菜や果物は世界市場にどんどん攻めていっています。趣味的兼業農家をいくら補助しても、日本の農業は強くなりません。

 結局、国が直接的に産業をリードしても成功できないのです。国は環境を整え、応援団に徹するべきです。そして、自立した企業に対して応援するべきです。強い意志や変革する勇気を持たない企業を護送船団方式で支援しても、業界全体が浮上することはありません。
セーフティネットをしっかりと整備することを前提に、産業に対する国の在り方も見直す時期にきています。
注)農林水産省公表額は10,053百万US$、および8,498百万US$。2012年の平均為替レート79.09円で換算。