39章 芝居
彼は「自分は異常では無い」と思っていた。
彼の生物室での睡眠の半分は寝たフリであった。
彼は狸寝入りをしながら周りの会話を盗み聞きしていたのだ。
周囲の人が彼の事をどう思っているか知りたかったのだ。
これは彼が中学生時代からよく行っていた行動であった。
ある日、アイツと彼女の親密な会話を仮眠中の彼は聞いてしまった・・・
「彼女をアイツに取られるのはイヤだ!」と彼は考えていた。
そこで彼の執った行動は・・・・
「悪夢にうなされるフリ」であった。
彼は「私が苦しめば苦しむほど、彼女は私の事を心配してくれる」
「アイツより私の事を彼女は考えてくれる」
と考えていた。
彼の狂気の芝居で周りの人達が右往左往している様子が、彼には快感であった。
だんだん彼は演技をエスカレートしていった。
彼は見えてもいない幻覚を見えると言いだしたのだ。
彼は幻覚が見えて恐怖している「芝居」を演じていただけであった。
狂気の発作の演技をしている時、彼はこころの中で
「これは芝居だ!私は正常だ!」
「これは芝居だ!私は正常だ!」
「これは芝居だ!私は正常だ!」
と何時も呟いていた。
彼は「意識を失って倒れている演技」を、誰かが彼を発見するまで何時間でも
演じながら待っていた。
その時も彼はこころの中で
「これは芝居だ!私は正常だ!」
「これは芝居だ!私は正常だ!」
「これは芝居だ!私は正常だ!」
と叫んでいた・・・