山田町の雇用事業NPO休止:137人従事、解雇に怒りの声 軍隊式の組織判明 /岩手
毎日新聞 12月27日(木)11時19分配信
 山田町から緊急雇用事業を受託していたNPO法人「大雪りばぁねっと。」(岡田栄悟代表理事、北海道旭川市)の資金枯渇を理由とした活動休止と給与未払いは137人の全従事者の解雇問題に発展した。従事者からは怒りの声が上がる。編成する町災害復興支援隊に軍隊のような名称を付けるなど異様とも思える組織の実態も分かってきた。【鬼山親芳】

 町が岡田代表理事からの電話連絡で全員解雇を確認した。同法人は27日、町中央公民館に集まってもらい、解雇に至る経緯などを説明する。50代の女性は25日夜、連絡網を使って同僚から解雇を伝えられた。「給与を全額もらっていないうえに解雇されるとは」と唇をかんだ。役場を訪れた商店主の男性は「Tシャツや工具を納入したが100万円以上の未払いが残っている。被害を受けた業者はいっぱいいる」と話した。
 町と県、宮古職業安定所は26日、対策会議を役場で開き、従事者全員に離職票が交付され、雇用保険がもらえることと、町に相談窓口を設けて再就職に全力をあげることを申し合わせた。
 船越地区の町の体育館に開設する支援隊には解雇された人たちが私物を取りに出入りする姿が見られた。関係者によると、隊の組織はおおよそ、岡田代表理事を隊長とし副隊長や、潜水隊員による「特務」と呼ばれる隊長直属の機関のほか物品購入、経理部門の管理中隊、支援物資の仕分けやイベント関係の第1中隊、無料銭湯「御蔵の湯」運営の第2中隊、産業・観光振興のための企画部門の第3中隊で構成。それぞれに中隊長、小隊長がいてその間に伝令長という役職もあった。
 勤務時間は午前8時から午後5時までで、出勤後全員で体育館の周りを2周。その後、腕立て伏せやラジオ体操をするなどして体を鍛えた。岡田代表理事は「いざという時に役立つから」とハッパを掛けていたという。
 体育館の玄関にはカード式のロックがあるなどセキュリティーが厳しいほか、館の内部は半分に仕切られて事務室や食堂がある。岡田代表理事ら少数の幹部は町から無料で貸与された隣接のケビンハウスで生活している。
 賃金は日給月給制で、一般の従事者の日給は6000円。しかし、休日出勤や出張、潜水などの手当が付くほか、小隊長以上には役職手当があった。今年の夏には賞与も出たという。また従事者にはそろいのTシャツやブランド物の制服が配られた。
 上司の中隊長から解雇を言い渡された男性は「被災地の雇用のために雇われた私たちが解雇されるのはおかしい。人件費はどこに消えたのか。組織もなにやら軍隊のようで、不気味だった」と話した。
12月27日朝刊