Mの結婚 | ホタル舞う夜の空

Mの結婚

かつての学友、Mはアメリカ人。

ちょっと話はずれるけど、
私の知っている限り、アメリカ人やカナダ人の女の子ってドイツ人学生からいつでもモテモテ。
って言っても、今までに4人しか居なかったけど。
見た目も性格も好みもそれぞれに違う彼女達だったけど、やっぱり皆ドイツ人学生からモテモテだった。
私なりに推測するに、

1) 大学に言っているドイツ人学生は英語が出来る人が多い、が、本当に英語圏にいったことある人はあんまり居ない、英語はやっぱり世界共通語という認識があるので、インテリそうである彼らは英語をブラッシュアップしたい。だから英語圏出身者とおしゃべりしたい。

2) 北アメリカの人って、男女関係無く「フレンドリー」。表面的っていう意見も多いけど、いつでもにこやかだし、感じが良い。人見知りをするし、他人に無関心なドイツ人に囲まれていると、フレンドリーな人って、天使に見える。

3) 北アメリカの女性は、ドイツ人女性よりも「女性的」。っていうより、ドイツ人女性って「男らしい」。←ドイツ人男性+様々な国からドイツへ来ている外国人女性の見解。ドイツ人女性の多くは、主義主張を持っていて、周りの目なんか気にせず自分の意見をはっきりと主張するし、ディスカッションでもひるまない、ところがカッコイイ、けど、「わがまま」と「個性的であること」を履き違えている迷惑極まりない娘達が多いことも事実。普段そういう子達に囲まれていると、北米人ばかりでなく、東欧人でもアジア人でもラティーナでも、女性的な対応に感激する男性ってかなり多いらしい。

さて、話を戻して、
1学期目から既にモテモテだったMだけど、彼女が素敵と思える相手にはめぐり合わなかった。
連絡をくれて誘ってくる友達は何人もいて、みんなと仲良くするけれど、それはあくまで友達。

2年ほどの学生生活がそろそろ終わりに近づいたある日、
いつものように大学のジムで筋トレをしている時に、それは訪れた。
一目見た瞬間、カッコイイって思った。
ジムの器材の調整を手伝ってもらって、楽しく会話して、結構良い雰囲気。
今度外で会おうか、という話になり、番号を交換した。

しかし彼女はアメリカ人。
いくら素敵って思っても、自分からいきなり言い寄ったりはしない。
やっぱりデートに誘うのは男の役目。
自分から言い寄るなんて、飢えてるみたいでみっともないし、あきれられちゃうかもしれない。
電話を待ちつづけるM。

しかし相手はドイツ人の大学生(インテリ層)。
プライドが高いのか、単に度胸がないのか、イニチアシブを握るのは女の方が多い。
少なくとも、女のほうで気のある素振りを見せなければ、一歩を踏み出してはこない。

彼女が家を空けているときに電話が来たり、
彼女が電話を掛け直したのに彼が忙しかったり、
そんなすれ違いを繰り返し、
しびれを切らした彼女が、思い切って自分から電話を掛けて誘ってみると言った。

不安でナーバスになっていたMを励まし、背中を押して電話を掛けさせる。
電話を切った後、興奮して頬を高潮させていた。
初めてのデートの後、別れ際に「あ、これはキスのタイミングだ」と思ったのに、
繊細なドイツ人の彼は何もして来ない(笑。
「もう、思わず自分からキスしちゃったわよ!」

それから後は展開が早かった。
「離れているのが耐えられない」と、彼が涙ぐむので、自分の部屋に帰る回数が激減し、
数ヵ月後には二人で暮らすための部屋を見つけた。

Mの誕生日、彼から連絡が来る。
「今日、彼女の誕生日だからサプライズパーティをしたいんだ、来てくれる?彼女の好きな寿司を作りたいんだけど、お願いできるかな?」
アパートメントを訪ねると、彼がケーキを焼いていた。
本当は内緒だったんだけど、Mは戻ってきて部屋に入った瞬間、甘い香りで彼がケーキを焼いたことに気付いてしまった。(そりゃあそうだろ)

ちなみに、ケーキやパンを焼く男、もちろん料理をする男も、全然珍しくない。
こういうドイツ人男性に、マッチョー大国出身の女性人はひどく感激するものだ。
私も、はじめの頃はひどく驚いて耳を疑った。
しかし、本人達にしてみればいたって当たり前のことのようだ。
「美味しくって健康的な物を食べたいから自分で作るんだ」

Mも、彼がケーキを焼いたり、手袋や帽子を編んでプレゼントしてくれることに、ひどく感激していた。
いや、そこまでやるのはさすがに珍しいかも・・・。

それからさらに数ヵ月後、彼らは婚約した。
「彼がバラの花を一輪握り締めて涙ぐんでたの。どうしたのかと思ったら、感極まって泣いちゃったみたい。それからプロポーズされたの」
とても繊細でロマンチックな男である。

そして結婚式。
淡いピンクのシンプルなウェディングドレスに身を包んだMの顔は幸せに輝き、見たこともない位美しかった。
その隣で涙ぐんでいる彼・・・。

別の友人が私に耳打ちする。
「あのウェディングドレス、彼が自分で縫ったんだって」
ウェディングドレスを新郎が製作?
ビックリして思わず私の口から出てしまった言葉、
「すてきね、うらやましいな」
に対して友達の冷静な一言
そうかあ?
「ぅ・・・・・。」