幹は時々トランプマジックを見せてくれた。
手先が器用だった。
自分のことをスペードのジャックに例えた。
暗闇は嫌い
スペードのジャックは
黒のスペードを避けてみないようにしていて
自分のことみたいだといった。
介護士の資格を取って仕事をしたら
結婚しようといってくれた。
そんなことは無理だっとおもったけど、わたしは笑って聞いていた。
わたしの職業はウエディングドレスのデザインだったが、成功して一人で暮らしているわたしが頼もしくもみえたのかもしれない。
百合子がわたしに託した理由は
かれの闇を救って欲しかったからかもしれない。
わたしも一人きりの生活より、より幹に救われていた。
幹の闇は
わたしは聞いたことがなかったけど、かれの家庭の中のことは少しづつ聞いていこうとおもった。
ぼくには兄がいるといった。
妹もいるといった。
一人っこでないといった。
謎めいた話だった。
百合子の家庭はどんなだったのだろうかー
いつか、話してくれる時が来る日まで、待っていようとおもった。
どんな闇があるの?と聞いても
答えたくなさそうだった。
「おふくろは最低だったけど、あなたと出会わせてくれたことだけが感謝だ」いうー
いつかかれの聞く時もあるのだろうかー
百合子の自殺とも関係しているとおもった。