コロナウイルスの突然変異はどれくらいの速さで起きるのか
著者:Yasemin Saplakoglu
3月6日【live science】

 

ヒト細胞の表面から出現する新型のコロナウイルスを示す透過型電子顕微鏡の画像

© NIAID-RML)

 
 

新型コロナウイルスは、他のあらゆるウイルスと同様、そのゲノムに変異を起こし、あるいは小さな変化を起こします。

 

最近発表された研究によると、新型SARS-CoV-2は、すでに侵攻性が低めのもう一種へと突然変異を起こしていることが示唆されていますが、必ずしも専門家らを確信させているわけではありません。 

 

この研究では、中国の研究者グループが、流行の発生地である中国の武漢で、新型コロナウイルスSARS-CoV-2によって引き起こされる疾患の急性呼吸器疾患(COVID-19)患者103人から採取したコロナウイルスのゲノムを分析しました。

 

同チームはゲノムの違いを発見し、コロナウイルスを「L」型と「S」型の2つの「株」に分類できると、研究者ら記しています。これは3月3日(火)にNational Science Review上で発表されたものです。

 

 

【関連記事】:科学的に否定されたコロナウイルスに関する12のデマ(英語)

 

 

ウイルスサンプルの70%は、侵攻性が高めと考えられている「L」型であったことを研究者らは突き止めました。また、L型の株のウイルスの患者数は1月上旬に減少していたことも明らかにされています。

 

検疫・隔離などの「人的介入」が「L」型の拡散能力を低下させた可能性があり、現在、一般的に見られるタイプは古めの「S」型です。

 

しかし、イェール大学公衆衛生学の疫学者であり、上記研究には不参加のネイサン・グルーボー氏は、上記研究の著者の結論は「純粋な推測」にすぎないと述べています。

 

ひとつには、研究著者が言及した突然変異は信じられないほど小さなもので、約2ヌクレオチド(遺伝子の基本的な構成要素)程度であると同氏は話しています。(SARS-CoV-2は約30,000ヌクレオチド長)。

 

このようなわずかな変化がウイルスの機能に大きな影響を与える可能性は低めで、たとえ何か影響があるとしてもウイルスの機能においてであるため、この違いから異なる株となるとすることは「不適切」であるとしています。

 

さらにこの研究ではわずか103件のケースについて調査が行われたにすぎず、「ウイルス感染人口と比較すると、サンプルが非常に小さい」もので、世界中でウイルスが起こした突然変異を解明するには、「かなりの努力を必要とし、完了に何年もかかる場合がある」とグルーボー氏はLive Science誌に述べています。

 

他にもこれに同意する科学者がいます。スイスのバーゼル大学の生物学者・物理学者リチャード・ネアー氏は、コロナウイルスが2つの株に変異し、L株がより重篤な疾患を引き起こす可能性が「統計上の不自然な結果である可能性が高い」とツイッターで書いています。

 

この統計的効果は、おそらく武漢のL型グループの早期サンプリングによるものであり、その結果、「より明白に」死亡率が高くなっているとのこと。

 

局所的に発生が急増した場合、科学者は患者からウイルスゲノムをすばやくサンプリングしますが、その結果、ウイルスのいくつかの亜種が過剰に表示される、とネアー氏は書いています。

 

この論文の著者らは、同研究のデータは「依然として非常に限定的である」ことを認めており、ウイルスの進化過程に対する理解を深めるには、より大きなデータ・セットを追跡調査する必要があるとしています。

 

「心配する必要はない」

 

そのような論文が今回の大流行中に発表されることを知ったうえで、グルーボー氏は2月18日のNature Microbiology誌上で、「病気の大流行中にウイルスが変異しても、心配する必要はない」というタイトルのコメントを発表しました。

 

突然変異という言葉は「当然、予期せぬ変化や奇妙な変化に対する恐怖を連想させる」とグルーボー氏は記しています。

 

実際には、突然変異はウイルスのライフサイクルの自然な一部なのです」

 

SARS-CoV-2のような、RNA(リボ核酸)ウイルス、またはDNAの代わりにRNAを主要な遺伝物質として持つRNAウイルスは常に変異し続けています。そしてたとえば、ヒト細胞のようにそういった「ミス」を修正するメカニズムを持ち合わせていません。

 

(画像:https://www.livescience.com/37247-dna.html

 

 

しかし、こういった変異のほとんどはウイルスに悪影響を及ぼします。 

 

突然変異がウイルスにとって有益ではない場合、通常、自然選択が起きます。つまり、その環境によりよく適応した生物が生き残る傾向があるという、進化のメカニズムによって排除されるのです。

 

他の突然変異は生き残り、ウイルスの「平均」ゲノムに組み込まれます。

 

一般的に、複数の遺伝子は、ウイルスの重症度や感染力などの特性がコード化されている、とグルーボー氏。  

 

つまり、ウイルスが深刻さを増し、あるいは感染力が強くなるには、複数の遺伝子が変異する必要があるということです。

 

グルーボー氏によると、一般的にウイルスの突然変異率は高い一方で、そのような短期間で人間間の感染方法が変わるウイルスを見つけることは稀であると話しています。

 

では、ワクチンとなる可能性のあるものを開発することには、どういった意味があるのでしょうか?

 

同氏によると、上記のウイルスは「まだ遺伝的に非常に似ているため、その変異を理由に新しいワクチンを変更するべきではない」とし、「開発者はこれ(この変異)を心配する必要はない」とのこと。

 

しかしワクチンが発売されると、ウイルスはそれに適応して耐性を発現する可能性があるが、他のRNAウイルス(はしか、おたふく風邪、黄熱病など)はワクチンに対する耐性を発現しなかったため、耐性がつく可能性は低いと同氏は見解を述べています。

 

実際には、こういった突然変異は科学者がウイルスの段階を追跡するヒントとなると、グルーボー氏。

 

たとえば最近、COVID-19陽性が確認された2人の患者からSARS-CoV-2ウイルスを分離し、両方のウイルスのサンプルの完全なゲノムの配列を確認したブラジルの研究者グループがあります。

 

二つのウイルスでゲノムが互いに異なっていただけでなく、中国の武漢で配列決定されたサンプルのウイルスのゲノムとも非常に異なっていたことを発見しました。 この研究グループは、2月28日にフォーラム上でこの報告を発表しています(専門家による論評はなし)。

 

 

 

(画像:http://virological.org/t/first-cases-of-coronavirus-disease-covid-19-in-brazil-south-america-2-genomes-3rd-march-2020/409)

 

 

ブラジルの1人の患者から採取されたコロナウイルスは、ドイツで配列決定されたウイルスのゲノムと同様のゲノムを持ち、2番目の患者からのウイルスはイギリスのコロナウイルスのウイルスに似ていました。

 

つまり、このブラジルの2人の患者はヨーロッパの症例とそれぞれ関連していながら、互いに関連しているわけではない、とグルーボー氏は述べています。


【参考】https://www.livescience.com/coronavirus-mutations.html

 

 

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【コメント】

 

私が噂に聞いた話では、「欧州に入ったコロナはより凶悪なL型で、イタリアで死亡率が高いのはそのため」ということでしたが、科学的には「現時点ではわからない」というところなんですね。

 

パニックになっている人の数がとても多く、そういった環境のためか、いろいろな情報が歪曲されている傾向があるように感じています。

 

パニック買いもすごいことになってますしね。。。パニック買いについてのニュースもまとめたいと思っています。