萩の花は 「心の花」2016年2月号掲載作品 | わたる風よりにほふマルボロ

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「心の花」2016年2月掲載分(2015年11月提出分)詠草

 

梶間和歌


 

萩の花は落つるおもひの面影の消えかつ消ゆる夜の残り香

 

チェック秋の空はとほくなりゆく萩の葉の下露たえてまぼろしのうち

 

チェックあはれとは秋の夕べとのみをかはしぐれ止む間のほそき月影

 

くれなゐは君にはひと日流れ出づる時は永劫月満ちてゆく

 

そは夏の秋の夢也てふは死にもみぢ散るべきうつせみにして

 

チェック死に人は置き去られつる哀しびを知らねば羨(とも)しともしかりけり

 

冬衣月にかよへる風冴えておもふおもひの消ゆるあとさき

 

チェックひとゝせを夢かと思ふ朝あけに降りは止みぬる雪のおと哉



チェックのあるものが掲載されました)
 
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【本歌、参考歌、語釈】

 

 

秋の空はとほくなりゆく萩の葉の下露たえてまぼろしのうち

 見しことも見ぬ行く末もかりそめのまくらにうかぶまぼろしのうち
 (式子内親王 式子内親王集97)

 

 

あはれとは秋の夕べとのみをかはしぐれ止む間のほそき月影

 見わたせば山もとかすむ水無瀬川夕べは秋となにおもひけむ
 (後鳥羽院 新古今和歌集春上36)

 

 あはれとは秋の夕べとのみをかは:

  思わずため息の出る美しさとは、

  秋の夕べのみを言うものだろうか。

  いや、それだけではない。

  本歌の主眼は「夕べといえば秋となぜ思ったのか」、

  それを逆転させたもの。

 

 

そは夏の秋の夢也てふは死にもみぢ散るべきうつせみにして

 そは:それは

 

 てふ:蝶

 

 うつせみ:ここではこの世、現世の意。

 

 

死に人は置き去られつる哀しびを知らねば羨しともしかりけり

 僕は、春妃を激しくうらやんだ。少なくとも彼女は、

 こうしてたった一人置き去りにされる悲しみだけは

 味わわずにすんだのだから。

 (村山由佳 『天使の卵』)

 

 

冬衣月にかよへる風冴えておもふおもひの消ゆるあとさき

 おもふおもひ:

  同義の動詞と名詞を重ねた、永福門院の好んだ表現。

  さても我が思ふおもひよつひにいかに何のかひなきながめのみして
  (永福門院 風雅和歌集恋一、979)

  夏深き草のしげみのしげくのみ思ふおもひは道もとほらず
  (永福門院 自歌合58)

 

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『天使の卵』は私のバイブルのひとつです。

 

この主人公がこの続編に現れる時

実に男ぶりの好い魅力的な男になっていて。