日本は人口減少社会に突入したと言われる。日本の人口は2007年の1億2777万人をピークに、2008年7.9万人、2009年18.3万人減少をした。だが、その内訳となるとこうだ。2009年は自然減5.9万人、外国人流出4.7万人、日本人流出7.7万人となる(20100907「エコノミスト」42P)。

 日本人流出による減少の方が自然減よりも多い。更に言えば、流出する人口がなければ、未だに日本は微かながら人口増加を続けている事になる。少子高齢化による人口減少社会とは常日頃、よく聴く話なのだが、そうとばかり言えないところに問題がある。

 更にこの内訳を語るとなるとどうなのか。日本社会の底辺を支えている外国人労働者の雇用は正に雇用の調整弁として削減傾向ある。確かにホワイトカラーやIT技術者などの外国人労働者の国内需要は依然根強くても、それとは比較にはならない。また大阪などで中国人がまとまった数で日本に定住し生活保護を受給した件は問題になったのだが、それでも日本での定住外国人はまとまった数字では純減だ。嘗ては中韓などからの密航による不正居住者が問題になったのだが、何しろその中韓自体が日本を尻目に経済成長を続けている。確かに不法入国者や偽装結婚による日本への定住者は依然として記事になるのだが、日本が機会の国でどこまであり続けているのかは疑問だ。

更に問題なのは日本人だ。先に日本人のノーベル賞受賞者の話題を記事にしたが、ノーベル化学賞受賞者の内、9人が国内での研究で、6人がアメリカでの研究だ。国内研究者にしても海外留学を前提としている。日本の研究環境はアメリカはいうに及ばず、中韓と比較しても劣っている。

だが、それでもこの十年で海外に流出する研究者の数は半減している。これは帰国しても就職先がない事によるのだが、日本自身に見切りを付けるに至る研究者はさすがに多くはない。

 では、どんな人々が海外に流出しているのか。一つは日本で就職の機会を逃した若年層。雇用機会は新興諸国の方が多い。日本企業の現地法人に勤めればやがては正規雇用の途も拓ける。もう一つは国内でのセミリタイヤ、リタイヤ組。日本での仕事に見切りを付けて新興諸国を中心に現地日本人を基盤とした事業展開なども期待できる。また純粋に年金生活を送るにしても、物価水準に鑑みて、支給額に対して海外の方が通貨価値が高い。既に新興諸国などを中心に、リタイヤ組に対する勧誘も事業として広く行われている。

 これは日本自身の少子高齢化による人口減少社会の到来よりももっと深刻な問題だろう。日本人自身が日本に見切りを付けている。既に企業自身も生産拠点のみならず、研究開発部門や中枢機構まで海外移転を図っている。総務から経理など多くの事業分野での海外への外注もその現れた。雇用機会が海外に流出している。

 寧ろ、この中で日本に残される日本人は海外流出など必要としない層と海外移住が出来ない層だけになると言って良い。これは日本を、その郷土を愛するゆえ、と言う積極的な意味があっての事では片付かない経済現象だ。この流れは日本がより沈滞する事によってより進行するだろう。