シャツハタは創業84年の国内でも最大手の判子メーカーだ。現在は三代目44歳の社長が経営している。日本社会は人口減少社会を迎え、更に企業のペーパーレス化の進展している。国内の事業機会は先が見えて来た。

 一つは海外進出である。21言語に対応出来るまでになった。その中でも判子が伝承してきた中国が最有望市場だ。中国人の氏名の大部分は三文字だから充分、個人用判子として対応出来る。3年前、上海に支店を開設した。しかし需要は限られていた。書家や画家が落雁用として用いるだけだ。事業所では欧米に倣って署名が慣習だ。確かに朱肉の要らないシャチハタは充分同社製品の長所だがそれを活かす機会は少ない。

 そこで富裕層向けに、高級万年筆との組み合わせで販売を開始した。他人と異なるものを持ちたいとする願望に訴えたものだ。日本円で1万2千円。価格水準として妥当な所だろう。

 更に同社は電子社会に対応した出品を都内のIT技術展覧会にて行った。電子印鑑。PCに取り込んで、マウスにて書類に押印する。書類の改竄防止機能も有する。価格は4980円。朱肉付きのシャチハタと同水準の価格帯だ。今までは書類とて印刷した上で押印を行うのが常だったが、電子上でそれが可能となる。

 既に書類は署名が世界的趨勢であり、それは電子署名にも現れているのだが、日本社会は依然として三文判でも判子社会だ。私自身、相続で改めて実印と印鑑証明を造る事となったが、偽造防止や本人確認手段としては、印鑑よりも署名の方が優れているし、本人確認の手段としても生体認証技術も開発が進んでいる。果たして、日本が何時まで判子社会で在り続ける事が可能か、それに懸かっていよう。

 

同社HP http://www.shachihata.co.jp/index.php