クローズアップ現代 NHK総合 4/15

日本は地熱発電ではアメリカ、インドネシアに次いで世界に三番目の潜在力を有する。1982年当時、第一次石油危機に対して、地熱発電に取り込み、以来、世界でも先端を走っていた。しかし原油価格の下落で、現在稼働中の地熱発電所にしてもその他の開発計画にしても、10年前で停まってしまった。以降新規開発は日本では行われていない。石油価格が下落した事により、当面の経済的誘因が消失したからだ。以来、アメリカやインドネシア、フィリピンでの地熱発電の急成長の後塵を拝し、停滞を続けている。地熱発電は二酸化炭素を殆ど排出しない。また自国産のエネルギー確保という安全保障上の問題で、アメリカでは地熱発電に積極的だ。

地熱発電は地中深く井戸を掘り、高圧高温の熱を水蒸気により取り出し、タービンを回して地下に戻す、アメリカの開発した地熱発電所1300kWは

原子力発電所、12基分に相当する。

 インドネシア。ジャワ島では地中マグマで熱せられた高圧蒸気を地中より深度2千mの井戸より掘り出して発電を行っている。23kWでも太陽光パネルを敷き詰めたら野球場3千個分に相当する。既に4箇所で操業中だが、将来は33箇所、現在の10倍の発電量を見込んでいる。

インドネシアは石油産油国だが、同国のエネルギー消費は経済発展で急増している。15年で原油の減産も迫られている。

 地熱発電は他の自然エネルギーと異なり、天候には殆ど左右されない。

地熱発電で世界の先頭を走るのはアメリカだ。ネバダ州で開発が進んでおり、この半年で25%の増産が見込まれる。完成すれば25万人の雇用増に結び付く。

地熱発電事業には多くの投資家が集まっている。Googleもその一つだ。地熱発電が大きな事業機会であるという認識に基づき有利な投資先と見なしている。

 連邦政府も地熱発電の推進には積極的だ。日本の五倍の面積の土地を地熱発電開発のために民間に払い下げている。

 日本での地熱発電は18箇所に渡っているが、いずれも20年前以上の計画だ。福島の地熱発電所43kWは10万世帯分の電力需要を賄っている。

とは言うものの、国の支援は原油価格の下落で縮小した。

 二年前、出光興産は調査チームを設け、地熱発電の事業化を模索している。政府も地熱発電の事業化に向けての経済性を検討したが、初期費用が掛かる。井戸4本の掘削には25億円、専門技術を必要とする。更に送電線の建設を現在、基幹とする火力・原子力発電所と結ぶ既存の送電線と連絡する形で図らなくてはならないが、6kmでも20億円が必要だ。総費用には150億円が必要となり、民間企業では対応できない。

 費用計算では、火力発電所との比較に置いて、最初の10年間は地熱発電所の方が割高だ。だが、以降の運転費用は地熱発電の方が割安となる。だが、民間企業では対応できない。

 日本は中長期的にはどうあろうとも、安全保障上の問題はどうあろうとも、当面の低費用化・低価格化を、公共性の高い発電事業に対しても要求している。

 カリフォルニア州では2020年に現在13%の自然エネルギーを33%に高める予定だ。同州州法では電力会社に対して毎年1%以上の地熱発電等の買取りを義務付けている。太陽光、風力発電と連携しての電力網を確立し、費用削減を図っている。また、地下の地熱分布を公表して地熱発電の為の掘削の最適地の地図も提供している。高い初期費用に対して、投資可能年数の融資保証を行い、具体的な投資回収の展望を示している。

 果たして日本では何が可能なのか? 自然エネルギーによる電力高値買取制度は太陽光発電においてしか行われていないし、飽くまで例外とするのが現在の政府の方針だ。地熱発電は地方自治体が積極的に乗り出しても、国からの支援は得られずに頓挫している。凡そ地熱発電の可能な自治体は過疎地に属しており、自主財政力は乏しい。

 世界で先陣を切っていた筈の自然エネルギーの開発も、短期的な収益事業である事を求められる限り、推進される筈もないのだが、果たしてアメリカの追随という形でも、どこまで促進される事が可能なのか、総合的な国家戦略としての位置付けが不足している。

 本題とは外れるが、政府は介護用ロボットや燃料自動車の開発を行う中小企業に対して、300億円の融資を行う事を決めた。ほぼ間違いなく将来の日本にとっても世界にとっても重要な意味を持ってくる事業の一つなのだが、短期的に有利な資金運用を求められる民間金融機関なら融資を躊躇う所だろう。何にしても心許ない。