かん水 | ラーメンを作る

ラーメンを作る

うまいラーメンを自分で作る。
番外編で、信州上田(地元です…)のあんかけ焼きそばとかもつくりたいなぁ。

いわゆる、中華麺作りに使うかん水、調べる程に奥が深いので、今の段階で自分が把握している情報をまとめておきます。

かん水の効果
・中華麺独特の風味をつける
・コシのある麺になる(グルテンを締めて生地を弾力的にする)
・中華麺の黄色い色をつける
・変色防止、食味向上、保存性向上など(主にリン酸塩)
特に、グルテンを締めるという効果は顕著で、温度に左右される生地の硬さを考慮して、夏場はかん水濃度を上げ、冬場は下げるなどの調整がなされる場合もある。
メモ:最近の研究によると、良質の小麦粉であればよりグルテンを形成しやすいため、かん水を使わないでも塩だけで腰の強い麺は可能であるという意見も見られる。《中華麺 - Wikipedia》

かん水濃度について
かん水は一般に比重で濃度を計測する。使用されるのは塩の濃度を測るボーメ計で、ボーメ度が使われる。ボーメ度は水温15℃での比重を表したものであり、水温が変わればボーメ度も変わる。珪酸ソーダの比重を参考にすると1℃の変化でボーメ度は0.04変わることになるが、《究極ラーメン 麺を科学した新製麺術》によるとおおよその値との前置きのもと、1℃あたりの変化量は0.02~0.03となっている。

かん水の歴史
かん水は、昔中国の特定の湖や沼から湧き出る水で、小麦粉をこねたところ、弾力のある素晴らしい舌触りの良い麺ができることを発見したことにより始まりました。代表的なものとして、炭酸ナトリウムを主体とした内蒙古、四川省系のアルカリ性の碱湖、碱井から汲み取った水を濃縮したもの。そして、炭酸カリウムを主体とした広東、台湾系のもので植物の灰汁を濃縮したものがあります。《(有)エヌアールフード》

かん水の定義
中華麺類の製造に用いられるアルカリ剤で、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及びリン酸類のカリウム塩又はナトリウム塩のうち1種以上を含む。

ここであげている「炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及びリン酸類のカリウム塩又はナトリウム塩」には以下のものが含まれています。カッコ内は組成式と別称。
無水炭酸カリウム(K2CO3)
リン酸二水素カリウム(KH2PO4/第一リン酸カリウム、リン酸一カリウム)
リン酸水素ニカリウム(K2HPO4/第二リン酸カリウム、リン酸二カリウム)
リン酸三カリウム(K3PO4/第三リン酸カリウム)
ピロリン酸四カリウム(K4P2O7/ピロリン酸カリウム)
ポリリン酸カリウム(K5P3O10/トリポリリン酸カリウム)
メタリン酸カリウム((KPO3)n)
炭酸ナトリウム(Na2CO3/炭酸ソーダ)
炭酸水素ナトリウム(NaHCO3/重曹)
リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4/第一リン酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム)
リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4/第二リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム)
リン酸三ナトリウム(Na3PO4、第三リン酸ナトリウム)
ピロリン酸四ナトリウム(Na4P2O7/ピロリン酸ナトリウム)
ピロリン酸二水素二ナトリウム(Na2H2P2O7/酸性ピロリン酸ナトリウム)
ポリリン酸ナトリウム(Na5P3O10/トリポリリン酸ナトリウム)
メタリン酸ナトリウム((NaPO3)n/ヘキサメタリン酸ナトリウム)
メモ:上記一種以上を含めば良いので、重曹も立派なかん水と言える。リン酸系は身体への影響が議論されているが、詳細な結論は出ていない。まぁ、麺に使う程度の微量であれば、人体に影響はないとの意見が大半のようですが…。

よく見かけるかん水の成分とその特徴
基本的には炭酸カリウムが主成分となったものと、炭酸ナトリウムが主成分となったもに大別されます。そこにリン酸塩をはじめとした他の塩類が補助的に加えられることが多いようです。補助的に加えられる塩類は変色・乾燥・酸化などを防止し、保水効果や歯切れ良さをにも効果があるとのことです。《かんすい資料(合名会社河村仁沃社)》

炭酸カリウム(K2CO3)
麺生地はよく締まり、粘弾性が高まるが、多加水で柔らかく、濃度は他に比べて薄くする。色相と風味は良いが、やや乾燥しやすい。《究極ラーメン 麺を科学した新製麺術》
麺の酸化防止、発色・香りを促進。同量の場合、炭酸ナトリウムよりボーメ度が低くなる。炭酸ナトリウムより発色あり、生麺時の伸びがある。《かんすい資料(合名会社河村仁沃社)》
上品な色調、上品な香り、多用すると苦み、しなやかで締まりのある麺、乾燥に強く水切れは悪い。《麺について・4-かん水(さすらいラーメン知識)》

炭酸ナトリウム(Na2CO3)
柔らかなしっとりとした麺ができる。製麺操作は少加水でも良くつながるが、色相と風味はやや優れない。《究極ラーメン 麺を科学した新製麺術》
多用するとソーダ臭あり、甘味がある、ややボキついた麺でシコシコとした仕上がり、乾燥しやすく折れやすい。水切れがよいが煮えがたく芯が残りやすい。《麺について・4-かん水(さすらいラーメン知識)》

・リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)
保水性は高い、柔らかな麺ができる。色相はやや黄緑色を示し良いが、特有の臭いがある、麺のつながりは良い。《究極ラーメン 麺を科学した新製麺術》

・リン酸三ナトリウム(Na3PO4)
保水性は良く、粘弾性に富んだ麺ができる。色相は黄緑色がかって冴える。発色は第二(Na2HPO4?)より深い。臭いは少なく、つながりは良い。《究極ラーメン 麺を科学した新製麺術》

・リン酸水素二カリウム(K2HPO4)
保水性はやや良く、柔らかい麺生地は粘弾性がある。色相は黄緑色がかり冴えるが、やや甘みを持った独特の風味を持つ。麺のつながりは良い。《究極ラーメン 麺を科学した新製麺術》

・リン酸三カリウム(K3PO4)
保水性はやや良く、麺生地は粘弾性があり締まる。色相は黄緑色深く冴える。臭いは少なく、つながりは良い。《究極ラーメン 麺を科学した新製麺術》

どうも意見が分かれる部分もあるようです。
どんなかん水で、どんな結果になるのか、こればっかりは自分で試してみるしかないんでしょう。
いやぁ、それにしてもかん水だけで、奥が深すぎw
笑うしかないねぇ、これは。

ただ、一般で購入できるかん水は、ある程度成分が決まってくるので、その中での試行錯誤からとなります。それでも、簡単ではないですが。

現在ネット上で入手可能なかん水、また成分確認できたかん水
富沢商店さんの粉末かん水、前使っていたのですが成分の控えとらずにパッケージ捨ててしまいました…。もしご存知の方いたら、教えて。

天竜牌雪白かんすい30度(ツクバネ食品工業株式会社)
成分:炭酸カリウム(無水)20.6%/炭酸ナトリウム5.3%/ポリリン酸ナトリウム0.6%/ピロリン酸ナトリウム(無水)0.4%/水73.1%
液体かん水。ポリリン酸ナトリウムは変色防止、コシの強化を、ピロリン酸ナトリウムは…よくわかりませんでしたが、ポリリン酸と合わさってキレート効果云々とか…。勉強不足ですいません。

天竜牌雪白かんすい35度(ツクバネ食品工業株式会社)
炭酸カリウム(無水)26.7%/炭酸ナトリウム(無水)5.0%/ポリリン酸ナトリウム0.6%/ピロリン酸ナトリウム(無水)0.4%/水67.3%
今、私が自宅で使用しているものです。

蒙古王かんすい(株式会社丹羽久)
成分:炭酸ナトリウム100%
粉末かん水。炭酸ナトリウム系かん水の代表的なもの。というか、成分100%だし。リン酸系の成分がどうしても気になる方はこちらがおすすめでしょうか。

・重曹
成分:炭酸水素ナトリウム100%
かん水を買う程ではないけど、中華麺を作りたい。そんな方は手始めにスーパーで気軽に手に入る重曹を使ってみては? これでも十分本格的な中華麺になるようです。

・龍王號 雲白かんすい(株式会社富士商会)
成分:炭酸カリウム(無水)28%/ピロリン酸ナトリウム2%/水分70%
ネット上で成分を確認。

・粉末かんすい 黄印(株式会社フーディスト・ジャパン)
成分:炭酸ナトリウム57%/炭酸カリウム30%/リン酸水素二ナトリウム7%/ピロリン酸ナトリウム4%/メタリン酸ナトリウム2%
ネット上で成分を確認。

◎実際のかん水濃度の決定
麺の太さ等、目指す麺によってあらゆるバリエーションが考えられます。

タンパク質に作用した結果、炭酸カリウムは麺を硬くし、炭酸ナトリウムは麺を柔らかくする。よって、細麺の場合はタンパク量が多い小麦粉を使用しかん水も炭酸カリウム系を使用する。また、太麺ではタンパク量の低い小麦粉を使用し、かん水は炭酸ナトリウム系を使用する。《究極ラーメン 麺を科学した新製麺術》

多かん水の上限としてはボーメ度8くらいでしょうか。あまりそれ以上の濃度で製麺しているというお店はないようです。使用するかん水の種類によっても結果に差が出ると思われますので、最終的には試行錯誤の世界、なのでしょう。

◎参考サイト
かんすい資料(合名会社河村仁沃社)
食品衛生法に基づく添加物の表示について(公益財団法人 日本食品化学研究振興財団)
食品添加物の表示方法(食品衛生の窓)
東京都中華麺製造協同組合
リン酸塩(太洋化学工業株式会社)
麺について・4-かん水(さすらいラーメン知識)
(有)エヌアールフード
中華麺 - Wikipedia

◎参考書籍
究極ラーメン 麺を科学した新製麺術/株式会社大和製作所

◎更新履歴
2011-12-13 「かん水濃度について」を追加
2011-12-14 「現在ネット上で入手可能なかん水、また成分確認できたかん水」を追加
2011-12-21 「実際のかん水濃度の決定」を追加

にほんブログ村 料理ブログ 麺類(レシピ)へにほんブログ村 グルメブログ 神奈川・横浜食べ歩きへ