10月23日(金)は、下北沢小劇場B1さんにて、劇団東京フェスティバル第15回公演『無心』を観劇。


 沖縄の米軍基地移設反対運動、いわゆる“テント村”を舞台にした作品。
 舞台セットには、“NO BACE NO WAR”や“沖縄の声を聴け!”といったプラカードが飾られています。

 沖縄のテント村を扱った作品で、真っ先に想い出すのが、以前スクリーン鑑賞したドキュメンタリー映画『標的の村(三上智恵監督)』。

 自分は、大学生時代、いわゆる学生自治会役員として、学生運動(もどき)に携わってきた経験がありますが、活動を直接的に見せられると、独特のオーバーな活動に、ともすると何だか胡散臭く感じてしまい、聴衆に一歩引かれてしまうところがあり、ご紹介した映画にしても、一般受けしないことは、少なからずあります。

 ですが、本作『無心』では、愛おしきキャラクターたちによる、たくさんの大切な言葉を散りばめながらも、重くなりがちなテーマを、終始悲壮感を全く感じさせない人情劇に仕上げているところは、社会風刺ものに強い、作・演出のきたむらけんじさんマジックです。

 朝倉伸二さんの「テント村は、現代のガマ。」
 なっつん(小嶋菜月さん)の「テント村って意味があるの?」という問いかけ
 米山穂香さんの「私たちの土地なのに、何で入ってはいけない場所があるの!」という叫び
 江端英久さんの「内地の人から見れば、遠い沖縄は、脚の小指。」、「日米地位協定は、プリン体。」
 岩渕敏司さんの「生活とプライド。」

 …など、印象的な台詞は、枚挙に暇がありません。
 ぜひ台本が欲しいと想わせる舞台です。

 『おねだりするのが悪いのか? こたえるほうが悪いのか?』

 「沖縄は虐待されている子どものようだ。」と独特の言葉で表現するきたむらけんじさん。

 一方的な視点で画くのではなく、米軍兵士を一人の人間として画くなど、多角的に画いている脚本も、秀逸です。

 社会風刺こそ演劇の原点。
 これぞ「芸術である演劇の演劇たるゆえん」と、心から言える、素晴らしい作品を観させていただきました。


 また、軽快に演じられていく8人の役者陣のお芝居も、抜群に上手い!

 時に、コミカルなキャラクターたち。
 一人ひとりの個性が十分に立っており、どんどん愛おしく感じさせていきます。

 役者陣の類い希なる演技力が、米軍基地を巡るお互いの苦悩や関係性により深みをもたらしています。

 テント村のリーダー宮里浩一役に朝倉伸二さん。
 今回も、味わい深い、素敵なお芝居を魅せてくれています。
 ゆったりとした台詞まわしから奏でられる、落ち着いた滋味深いお芝居が、自分は大好きです。

 新垣譲司役の山口良一さんも、味わいのあるお芝居が良かったです。

 朝倉伸二さん演じる宮里の娘・未来役の米山穂香さん。
 はじめてお逢いしましたが、キリッとした雰囲気がありつつも、チャーミングな女優さん。
 とある「うわ~」と言うシーン、表情と合わせて最高です(^_^)b

 そして、我那覇絵美役にAKB48チームAの“なっつん”こと小嶋菜月さん。
 今年は、3月に同じくきたむらけんじさん演出の舞台『code』や、8月の『しずる館』でお逢いしていますが、すっかり舞台女優さんですね。
 そのしなやかなお芝居は、安定感抜群で、安心して観ていられます。


 初日のこの日は、たくさんのなっつんファンたちが、劇場に駈けつけられており、普段はあまり社会的な話題には触れることが少ないであろう層への伝道師の役割を、バッチリ果たされていましたね。

 大手事務所系の女優さんは、終演後の挨拶に来られることはマレなのですが、きちんとロビーに出られて、「ありがとうございました!」とファンや来場客に挨拶をされていきます。
 その姿勢、グッドです。

 舞台『無心』は、10月28日(水)までの上演。
 我那覇絵美役は、小嶋菜月さんと長谷部優さんのWキャストとなっています。

 上演時間は、1時間45分です。

(りょう)