斬新でありながら実にウルトラマンらしい作品であり、平成シリーズでは珍しい対話群像劇でした川崎郷太監督の力量が爆発した見応えのある作品でした

 

 

滅びを呼ぶ怪獣、人類の環境破壊の影響で凶暴化するクリッター達

 危機に対してはシビアな対応をせざるを得ない人類

 悲劇を繰り返さないために、そして妹の幸せを奪ったクリッターを殲滅するために!士気が上がるシンジョウ

 人類の生存をより確かなものにする為に武装強化を望むヤズミ

 それに違和感を感じ、たとえ理想論だとしても異議を唱えずにはいられないレナ

 ともかく現実的な対処をするしかないと諦めるホリイ

 そうした人々の行動に厳しい視線を向けるマユミ

 おかれた状況、限られた戦力の中でも全力を尽くそうとするムナカタ

 人類や地球にとっての怪獣出現の意味に想い悩むイルマ隊長

 

「うたかたの・・・」は交錯する様々な想いを通し、未完成で未熟だが前進しようとする人類の姿を描き出す。そして変身後、ウルトラマンの視点を獲得したダイゴには人々の姿が不完全でもたまらなく愛おしいものとして映る「みんな好きだからみんな仲間だから」

 

この作品は、正論の中に暴論が潜み、暴論の中にある種の真実が含まれる不思議な構成でしたけど、前半から後半へと物語の視点が少しずつ高みに上っていく。いかにもSFらしい作りが魅力。ラストカットでは、人類の葛藤などお構いなしに広大な宇宙へと旅立って行くクリッター達から見た青い地球が象徴的で美しい

 

作中、超古代のタイムカプセルにも多少の言及あり(ジョバリエが超古代怪獣かどうかは微妙ですね)

  また、この「うたかたの・・・」の前に「幻の疾走」を見ておくと、マユミの言動が理解しやすいかも。この「うたかたの・・・」はクリッター3部作のまとめでもありました

 

キャラクター拾遺

 

 この話、ネットとかを歩き回っていると賛否両論いろいろあるんですね。さらに、この作品を良しとしている批評でも登場人物の誰それの意見は納得できない、とかの意見をよく目にします。そのこと自体にどうこういうつもりはないんですけど、私的にはどの登場人物の考えもその人らしくて好きなんですよね。もちろん、それぞれに危険性や欠点はありますが、そもそも完璧な人間なんていないしね。川崎監督/脚本、とてもよく各キャラクターの特徴を短い時間の中にうまく練り込んだと思います

 

シンジョウ

 

 シンジョウは妹のマユミのこともあるし、もともと大切な人を命がけで守るという意識の高いひとなんで、小難しい理屈抜きで危険を排除するために戦う気満々なのはうなずける。後のマユミとの会話で、クリッターという言葉を使うのを避けて妹の心の傷を気遣うあたりの優しさと根は一緒なんですよね、きっと

 

ヤズミ

 

 ヤズミはもっと理屈で考えているんだろうけど、危機に対処するにあたって装備不足や優柔不断、中途半端な方針は致命的だというのはもっともだし、理屈の通じない相手は結局は徹底して排除するしかないというのも分かる実直で若者らしい考え方です。そして、自分も実戦に出たいとはやる気持ちもにじみ出ています

 

レナ

 

 レナが、「原因は人間側にあっても、相手を皆殺しにしちゃえばそれで解決」という考え方を情けないと感じるのはまっとうな感覚だと思えます。レナのような感覚がないと、同じことの繰り返しで人類は成長できないしょう(まあ、他の生物を殺すのに正当性を気にする生物は地球では人間くらいなのかもしれませんが)。レナはそもそも予防的先制攻撃って嫌いなんですよね。それに、殲滅戦に反対するレナだって命令を受ければ粛々と戦いに赴いたわけで、巷で言われる程わがままだとは思えないんです。簡単に現実が変わるわけはないと分かっていても、おかしいことをおかしいと言わずにいられないのがレナらしいと思いました

  ある生物は駆除し、ある生物とは共存するという基準の設定は本来難しい問題です。

害虫や病原体は絶滅を目指すことが多いし、猛獣は人間を襲う恐れがあってもなるべく捕獲しようとするしね。まあ、レナとしては一つの生物種を絶滅に追い込む決断が安易になされる事に嫌悪を感じるということなんでしょう

 

ホリイ

 

 ホリイの意見は一番現実的でしょう。人間がその文明に深く依存していて修正がきかないから、武力行使以外に解決法がないというのは正しくなくても仕方ないことだとも思えます。彼の台詞からは色々悩んだ末の結論である事が伺えてホリイらしいといえるかも

 

マユミ

 

 マユミの意見はかなりエキセントリックに聴こえますが、意外と本質をついているようにも思えます。TPC自体が我が身を振り返ることを忘れて武力に頼り切った考え方しかできず、結果、戦いの中で怪我人や死者ばかりが増えていく。もちろん、武器を捨てればただちに危機が去るわけはなどありませんが、武器に頼りきった思考法からは平和的な解決は生まれてこないのかもしれません。恋人の命を奪ったクリッターに憎しみを向けるのではなく、身勝手で野蛮な問題解決法しか提示し得ない人間の業に苛立を募らせていくというのが何とも言えませんね。これでキャラクターに深みがでましたよね

 

ダイゴ

 

 ダイゴの見いだした戦う理由「みんな好きだからみんな仲間だから」ってのも、冷静に考える正当性があるかどうかは疑問がないわけじゃあありません。多くの戦場で兵士を支える心情はといえば、「戦友や仲間をおいて逃げ出すわけにはいかない」というものであり、その事をもってその戦い自体の正当性がいつも保証されるわけではないからです。もっとも、逆に言えば愛おしいものを守る以外の理由で命のやり取りを始められちゃかなわんというのも正直なところです。しかし、いままでのダイゴの優しさやいい人ぶりがあって初めてそれなりの説得力を発揮している台詞なのではないでしょうか?そういう意味ではダイゴのキャラクター造形はすごいなと思いました

 

想いは果てなく

 

 でも、この作品で一番いいと思うのは、結局、誰の意見は間違っているとか、誰の意見がもっとも妥当だとかなんて結論は出さなかったことです。代わりに、いまだ成熟途中の人類、というもう一段上の視点から余韻の残る形でまとめていると思います

 

 

あらすじ

 

主人公:GUTS+シンジョウマユミ

 

 

 GUTSは上層部の決定したクリッター殲滅作戦と突如出現した怪獣ジョバリエへの対応に追われていたクリッターは元々人類文明の放つ電磁波で凶暴化した怪獣だ。ジョバリエも地下から出現しただけで特に積極的な行動をおこすでもないクリッター作戦の正当性にについて揺れるGUTSの面々

 

 GUTS内でも意見が分かれる中、クリッター殲滅作戦とジョバリエに対する作戦は同時に進行していく。対ジョバリエ戦ではTPCの部隊に甚大な被害がでるが、最後はティガに変身したダイゴが勝利を収める戦いの中、ダイゴは戦う意味を見いだす

 

 一方のクリッターは人間側の攻撃を軽くはねのけ、その上で次第に高度を上げに広大な宇宙へと旅立って行った。まるで、人間に愛想を尽かしたかのように

 

今回、印象に残った台詞

 

 

レナ「だとしたらそれは情けないことですよね」

イルマ「そうね人類にはもう少し賢くあってもらいたいものね」

 

 

 

ウルトラマンティガ・レナ隊員

「ありがと」のシーンを意識したのですが、イマイチ画力が足りないいっそのこと、へたくそなりにもっと思いっきりデフォルメするべきかなあ?   

 

 レナ「ティガはそれをやろうとしているのかな?」中略「あ~なんかすっきりしちゃった」

レナ「ありがと」

 

マユミ「死んじゃうとね好きな人に会えなくなるんだよ」

 

ヤズミ「死ぬのが、恐くない訳、ないだろぉぉ!」

 

マユミ「一度、武器なんか捨ててみるといいわ!そしたら怪獣なんか出なくなるから!」

 

シンジョウ「追わなくていいんですか?また戻って来ますよ!」

レナ「いいえもう戻っては来ないわ地球に、いえ、私たちに愛想を尽かして出て行くんですもの」

 

動画がな――――――――ーい( ノД`)シクシク…