【美味しい寿司を海外でも食べたいが。】
「日本の文化を海外に発信していきたいと思うのですが、相川さんはどのようにやってらっしゃるんですが?」
「はぁ、ノリです」
「ノリですか!どうやってイタリアで、あれだけ有名になられたんですか?」
「コネです」
「コネ!もともとそういうコネクションがおありだったんですか?」
「ノリです」
「ノリ?あの、私たちの商品を海外で、特にヨーロッパで発信したいと思っているのですが、どんな入り方をすればよいと思われますか?お知恵を貸していただければと」
「通販で売ればいいんじゃないですか?」
「はぁ、でも、とっかかりがなくて、売れますかね?」
「無理です」
「ですよね。でも、そもそも、売りたいっていうわけじゃなくて、日本の本当の文化を伝えたいと思ってるんです。海外でマンガやアニメといったサブカルチャーが人気だと思うんですが、日本の本当の文化が正しく伝わってないように思うんです」
「日本に住んでる人はみんなそう言います」
「なんだか、勘違いされて間違って伝わっているのが嫌じゃないですか?ニンジャとか、スパイですよね?ヒーローみたいに言われてるじゃないですか」
「イタリア人がみんなオペラ歌ってると思われてるのと同じです」
「クールジャパンって、政府がやってるのがありますよね。あれに乗っかって、海外の展示会とかイベントにもっていけばいいですかね」
「自腹の観光旅行です、あれ。」
「え?観光なんですか?有名な日本文化の人とか、いっぱい参加してるんじゃないですか?」
「ごく稀です。日本は立派な国内需要があるので、それにこたえて海外に出ない方がはるかにラクです。」
「じゃあ、どうすればいいんでしょうか?」
「どうしたいかによりますわ」
「どうしたいか、、、そうですね。まずはヨーロッパに行ってみたいです」
「チケット買っていってみたらいいと思います」
「そうなんですか?どんな用意をすればいいでしょう?」
「おもしろくすることです」
「おもしろく?通訳とかいりますか?」
「いや、そういうんじゃなくて、パッとみてわかる楽しめるエンターテイメント性が必要ってことです。」
「あーーそうなんですね。でも、それだと、本来の価値が伝わらなくなってしまうのではないでしょうか。日本文化の繊細さも、正しく伝えたいと思うんですが」
「なら、やりたいようにやればいいんじゃないですかねー。」
「そうですね、ちょっと考えてみます」
「みんなそう言いますーーー」
日本は島国。
ほぼ単一民族国家。
移民も排斥して受け入れないので治安抜群。
みんな正直者でまじめで、どこいっても日本円と日本語が伝わる。
どこいっても均質な公共サービスが受けられる、まさに『神の国』だと思います。
先人の方々が築き上げて下さった、国際社会ににおける信頼と尊敬が、どこにいっても概ね通用します。
ああ、日本人に生まれてよかった、、、
とつくづく思うわけですが。
世界は広い。
先人の方々の貯金だけで暮らしてたら、日本の未来はないわけです。
そのためには、創意工夫、積極的に世界に発信していく必要があるわけです。
イタリアに住んで3年。
お世話になっている方々のおかげで、イタリア最大の東洋文化イベント「フェスティバルデッロリエンテ」はじめ、さまざまな場所で歌って剣舞させていただけるようになりました。
去年は通算318ステージを、ヴェネツィア、ミラノ、フィレンツェ、ナポリ、シチリア、ローマなどの主要都市でパフォーマンスさせてもらいました。
ヨーロッパにお住まいの方々と関わって思うのですが、ヨーロッパで暮らすのはサバイバル!
外国人でサラリーマンになるのは至難の業。
失業率だって30パーセントとか、日本の30倍です!
つまり、普通のヨーロッパ人でも就職することですら大変。
まして起業するなんてトホホや。
自国民を優先するのが当然なので、日本人で当地で生きるだけでも超サバイバルなのです。
だから、海外に住んでる先輩の日本人の仲間は本当尊敬だなぁ。
とはいっても、仕事の成功法則は世界共通。
日本の成功法則がある程度通用します。
でも、そもそも、成功しようっていう気持ちにあんまりならない場所かも。
ヨーロッパはほんといるだけで楽しいし、街並み美しいし、歴史があって、食事もおいしいし、人柄もカラフルだからかなと。
充足した毎日になる場所です。
日本から『日本文化を正しく伝えたい!』なんて人たちがしょっちゅうきますが、みててヤバいなと危機感かんじます。
例えば、ヨーロッパでは日本食が人気!って、新聞やニュースで見たことある人多いと思いますが。
あれ、微妙に事実と違ってて、正確には日本風の中華料理が人気です。
というのはジャパニーズレストランの99パーセントはチャイニーズが運営してるからですね。
じゃ、日本人による正しい日本食を広めたい!って言っても無理。欧州で美味しい日本食広めようと思っても、食材全て空輸になっちゃうし、日本人は人件費ものすごい高いし、つまりハイコストでチャイニーズレストランに全然敵わない。
ヨーロッパでも、セブンイレブン方式なら勝てると思います。
当地のニーズを徹底的に分析して、継続的に商売として成り立たないと出店しない企業なら。
そして、当地で絶対商売成り立たせるという覚悟がある人材がいれば。
政府主導のイベントは、発信が目的で、稼ぐつもりがないので、やっただけで満足。継続的に価値を提供するのムリ。
出演させてもらっている東洋文化イベントには、日本だけでなく、韓国、インドネシア、インド、バングラデシュ、タイ、トルコ、エジプトなど幅広いパフォーマーがいます。
ヨーロッパ人からすれば、トルコから東はすべて『東洋』なのです。
まさに、このイベントが彼らの世界観の縮図のように思います。
資本主義経済末期の2016年では、海外に文化を発信するということは、外貨を継続的に獲得するということです。
国内の歌舞伎でも狂言でも、スター俳優が継続的に稼いでます。
伝統を守りつつ、今の人たちが楽しめるように工夫してます。
というか、伝統芸能の原則『守・離・破』からいっても、それができてこそ一人前。
伝統を守り、それを超えてこそ文化継承者。
クラシック音楽の天才モーツァルトは、革新的な音楽で当時の貴族から民衆まで幅広くファンを獲得しました。
今聴いてもスゴイマイッタと感じる音楽家。
ああ、美味しい寿司食べたい。