腕枕 | 赤い糸、絡ませて。

腕枕





久しぶりに二人でのんびり過ごした日のこと。






平和な時間とは正反対に、

何故だかわたしは苛々していたらしい。



確かに、

一緒に居るのに楽しめなくて

テンションが下がりっぱなしで

「テツカ楽しくなさそう」の言葉に更に凹み



凹みつつ。

そして、虫の居所まで悪くなる一方で。



Tさんに対する愚痴と言うか、

不満がどんどん頭の中で言葉になっていった。



彼が、

指輪を失くしたこととか


久しぶりの二人一緒の休日なのに、

夜に自発的に仕事の予定を入れたこととか


指輪2号購入の話も、亀の速度でしか進んでないこととか



いつもは気にしないような事にまで。


なんだか苛々。

心に引っかかる。



そうして、



話を蒸し返すような言葉を浮かべる自分がイヤで

一緒に居ること、だけで満足出来ていない自分がイヤになり、



ああ、なんかもう全部ヤダ。



と、なってしまっていた。





疲れたのか、何か自分が仕出かしたのか、と

声を掛けてくるTさんにも。


何でもない。


の、一点張り。(可愛くねぇ)




と言うか、

あまりに気持ちが一杯イッパイになっていたので

声を張ったり、言葉を長く連ねたりするならば、

かなりの高確率で涙が出そうだった。


どうして自分の気持ちがここまで不安定なのか、原因不明。





彼の部屋に戻っても、わたしの態度は相変わらず。

つんけんしたままのわたしを見兼ねて、Tさんが助け舟を出した。




はい。



いきなり抱きしめられたわけですが。




その体勢で目を閉じてると、

かなり気持ちが落ち着いていったのは確か。


ざわざわしていた気持ちが

フラットになって、丸くなっていくのがよく分かった。




「今日仕事入れてごめん」と、謝るTさん

もっと会いたいよね、と最近のすれ違いを詫びたり。




いえいえ、そんな事は怒ってないんですよ。

ただちょっと何故だか気持ちが不安定なだけですよ。


ごめんね我侭で。




と思いながらも、

言葉を返す気力も削がれて

彼の腕の中でうとうと、まどろんでいると。




気が付いたら腕枕で寝てました。




Tさんも同じくその体勢で寝てましたが。

小1時間ほど、二人共に落ちておりました。



寝覚めはとてもすっきりしていて、

それまでの苛々だとかモヤモヤした気持ちは何処へやら。


疲れて眠くて苛々して、八つ当たりかよ、と。

しかも本人は自覚が無かった。


この日の不安定っぷりの原因は、恐らくそれ。




「疲れてるんだろうねぇ」




と言ったTさんに、優しさを感じた。