9月20日 琵琶湖 釣行 後編 | 初心者が行く!印旛新川ベイトでオカッパリ

初心者が行く!印旛新川ベイトでオカッパリ

バス釣りド初心者の中年バサーがベイトオンリーで印旛新川に挑みます。

単に「琵琶湖」と聞いた時、人々が思い浮かべるイメージはなんでしょうか。


滋賀県にあるということでしょうか?

日本一の湖であるということでしょうか?


あるいは、人によっては「鳥人間コンテスト」なんて言葉が出てくるかもしれません。



おそらく、一般の方々が思い浮かべる琵琶湖とは、なんとなく漠然としたイメージをもつものなのではないか、と想像するのですが、

一方で、世の中の「とある人種」に属する人間にとっては、そのイメージは非常に明確なものです。



「とある人種」が思い浮かべる琵琶湖とは、200馬力のボートをかっ飛ばし、手のひらよりも大きなルアーをブン投げ、10kgを超える巨大な魚を釣り上げて、どやー!と写真を撮るという、

それが琵琶湖というものだと、「とある人種」は主張するでしょう。



そして、「そうだ、それが琵琶湖というものだ」と同意した、とある人種こと関東バサーに属する僕は、そのイメージを実現するために釣行の用意を進めていたというわけなのでした。





「関東とはアベレージが全然違うよ、釣れりゃ大体40アップだから」


…琵琶湖を訪れた人は皆そう言います。


が、その人には琵琶湖まで遠征して魚を釣ったという興奮もあるでしょう。

そもそも関東とは釣り方が違うという向きもあるでしょう。


そういった要素を考慮して、多少話を割り引いて考えたとしても、アベレージは10cmほどは違うと考えてもよさそうです。



…25cmが35cmになるということか。あるいは、40アップを釣る感覚で50アップが釣れるということか。




…とんでもない話です。

しかしそういうことならば、それを前提にした釣り方というものを考えていってもよいのではないでしょうか。


ワームならば、4インチ以下は置いていってもいいでしょう。

ハードルアーであれば、3/8オンスに満たないルアーに用はない。

ラインは極力太くしたほうがいいでしょう。

持っていけるロッドが3本なら、持っているロッドの中から強い順に3本持っていって間違いないのではないでしょうか。


…こうしてタックルを整理した僕は、未だかつて無い高い目標を胸に、琵琶湖への釣行に臨んだわけなのでした。







前回の続きです







岸際までフローターを運んだ僕は、一息ついてあらためて湖を見やります。


目の前にあるのは水と空と雲。

上空にはトンビが舞い、水面ではカワウがしきりに水中を気にしています。


琵琶湖は日本でも屈指の生態系を誇る、生命の宝庫であるとも聞きます。

一日水面に浮かべば、きっと多種多様な生物と触れ合う機会もあるでしょう。


オカッパリの邪魔にならないように、距離をとってからエントリーしようと、周囲の様子を探ります。

左手側には一人のオカッパリがいて、その手には2本のバスロッドが…、






…おや?


あれはひょっとして、スピニングタックルではないだろうか。

僕の目の錯覚なら良いのだけれど、あれはもしかしてスピニングタックルと呼ばれているものではないだろうか。


…思わずサングラスを外してオカッパリを凝視しますが、やはりスピニングタックルに間違いありません。

しかも手に持った2本が2本ともスピニングタックルとはどういうことか。

関東のオカッパリだって、2本持っているならば片方はベイトタックルというのが普通ではないか。



…一瞬、来た場所を間違えたかと妙な心配をしましたが、

間違いのはずはないのです。

目の前に広がる広大な湖は琵琶湖でしかあり得ないのです。



―スピニング、で、琵琶湖??


僕の琵琶湖バサーのイメージとして、ことごとく極太のベイトタックルを持参しているに違いないと勝手に思い込んでいたのですが、

これは一体どうしたことでしょう。


…もしや、関東の激渋フィールドをホームとしているフィネスの達人が、

その周辺ではフィネス神として誉れ高い職人芸の持ち主が、

どれ、ひとつ揉んでくれようかと、僕と同じように琵琶湖まで出陣してきたと、そういうことでしょうか。


顔色一つ変えずに次々とバスを仕留めていくその姿から、「房総のアイスマン」とまで呼ばれた伝説のフィネサーが、

2年間の沈黙を破っていよいよその狙いを琵琶湖に定めてやってきたと、そんな尋常ならざる事態だということでしょうか。



…しかし振り返って駐車場を見やると、アイスマンのものと思われる車のナンバーはしっかりと「滋賀」ナンバーです。




軽く混乱する僕。



…何やら不穏な気配が漂ってきましたが、無理矢理それを振り払うと、僕はそれを見なかったことにして、静かにエントリーを開始したのでした。



岸を蹴って、水中へ。


いよいよ、僕にとって記念すべき一日が始まります。



気温は22度。

水温もおそらくその程度でしょう。

西の方に位置しているだけあって、まだこのくらいの時期では夜もそれほど気温は下がっていないのかもしれません。


水質は…、





―案外、汚い。


もちろん、地元の印旛水系と比べれば、比べる事自体が失礼なほどの水質ではありますが、しかし、河口湖や桧原湖を経験している僕にはやや意外なほど水が濁っています。



―とはいえ、逆に透明度が無いほうがいいのかもしれない。

このくらい濁っていたほうが、バスの警戒心も和らいでいるでしょう。




岸から50mほど沖に出ましたが、水深はあまりなさそうです。

おそらく2mちょっとというところでしょうが、ブレイクは果たしてどのあたりにあるのでしょう。


岸際からゆるやかに続いているシャローは底が全体的にウィードに覆われていて、巻物で底付近を泳がせることは難しそうです。



…この時期に2mは浅すぎるか。もう少し沖の水深のあるところをやってみたい。


スイムベイトでざっくりと反応を確認しながら、沖へ漕ぎ続けます。



…10分後。

撃ち物のリグを投げて、また水深を確認してみます。



…あれ。

やっぱり2mちょっとくらいしかない。

さっきから全然水深が変わってないってこと?


…岸を見ると、岸際に立っている人が確認できない程度には沖に出ています。





―これで水深2m?


琵琶湖くらいの規模になると、ブレイクに到達するまでに何百mも沖に出なければならないのか?


…とたんに不安になります。


今日はやや風が強く、水面も波が立っています。

ボートならともかく、フローターでここまで沖に出ること自体が危険な行為ではないでしょうか。



…引き返すか。


我ながらやむを得ない判断だとは思いますが、同時にこの判断は、今日一日を水深2m程度のシャローエリアだけでやり通すということになります。


とはいえ、この周辺が悪いポイントだとは思わない。

時期が時期ならフィーディングの魚が入ってきてもおかしくありませんし、そういった実績があるからこそオカッパリの有名なポイントになっているのでしょう。


しかし、この時期にはどうなのでしょうか。




―このポイントに来るなら、もう少し早い時期のほうがよかったかもしれない。




そんなことを考えながら、やむなく岸側に引き返します。



岸から100mほどまで戻ってきて、さて、では早速本格的に魚をねらっていきましょう。

水深はざっと2m。

底はウィードに覆われていて巻物には辛い。


トップか、水面直下を探るようなルアーか、

あるいはワームでウィードの上をズルズル引っ張ってみてもいいかもしれません。

去年までの僕なら、そのいずれかを選択してやってみたことでしょう。



…ところが、今年の僕には新しい武器があるのです。


そうです、ジャークベイトがあるのです!



あまり潜らない、フローティングタイプのジャークベイトを使って、

この広大すぎるシャローをテンポよく探っていってみましょう。



さっそくMHのタックルにジャークベイトを取り付けると、岸の方向に向けてキャストします。





…ジャッジャッ!




…ジャッジャッ!





いい具合に水面とウィードの間を攻められているような気がします。

この、「気がする」というのが僕にとっては非常に重要で、自信をもって投げることが実際の釣果にも繋がっているように思えます。


ふと空を見上げると天は高く、いつぞやの桧原湖のように天気に苦しめられることはなさそうです。

晴れ空にたなびく風は、上空を舞っているトンビにもさぞ心地がよいものでしょう。


僕は気分よく、ジャークベイトを投げ続けます。





…ジャッジャッ!




…ジャッジャッ!





ふと、前方を見ると先ほどのトンビがぐるぐると周囲を旋回しています。




…あれ、

さっきのトンビ、ずいぶん低く飛んでるな。

獲物を見つけたのか?てことはこのあたりにベイトがいるということか…。



…上空を舞っていたはずのトンビがゆっくりと高度を下げてきます。

やがて狙いを定めたのか、一気に急降下して水中に脚を突っ込みます!







―おお!!

とらえたか!!




遠目でよくわかりませんが、あきらかに脚には何かを掴んでいる。

野生のトンビが獲物をとる瞬間を、こうも近くで見れることになr…?





…ガガガガガガ!!!!




手に持っているタックルに強烈な振動が伝わってきます!


―魚!?

とんでもないアタリ…、




が…、













え?







手に持っているタックルの先、ラインは水中ではなく上空に向かって伸びています。

その先には…、




とっさの事でなかなか状況に頭が追いつきませんが、ここにきてようやく僕は理解しました。


さっきのトンビが持っていったのは僕のジャークベイトで、僕は今まさに凧あげならぬトンビあげをしている状態にあるということを。











…この状況は一体なんでしょう。



広大な湖に小さなボートのような浮き輪のようなものを浮かべている人が、天に向けて釣り竿を振っている。

釣り竿の糸の先には何故かトンビがくくりつけられていて、トンビに浮き輪を引っ張ってもらっているようにも見える…。



一目見て、この状況を正確に理解できる者はいるのでしょうか。



僕がもし傍観者の立場なら、「これは琵琶湖発の、何か新しいスポーツなんだろうか」くらいに勘違いをしたかもしれません。

しかし残念ながら僕は傍観者ではなく当事者で、これがスポーツでもなんでもない、信じられないようなトンビの勘違いによって発生した事故であることを知っています。


その当事者である僕に対して、岸に立っているオカッパラー達から、一体何事が起こっているのかと熱い視線が注がれています。

僕は耳まで真っ赤にしながら、「いや違うんです」と、「とにかく違うんです」と、何がどう違うのかさっぱりわからないながらも、一人一人に説明して回りたい衝動を抑えつつ、急いで思案を巡らせる必要がありました。




―もし、ここでラインを切りでもしたら、コイツはルアーもラインも絡まったまま、いずれは死んでしまうだろう。

かといって、ルアーを外すためにはどこかに着陸させなければならない。



…しかし岸の方を見やると、ここからはあまりにも距離が離れすぎています。

そこまでこのトンビがおとなしく空を飛び続けてくれるとはとても思えません。


―どこか近くに、不時着させられそうな場所は…、



グルリと周囲を見渡すと…、



…あった。

ウィードが重なって浮島のようになっているポイント。


ここしかない。




…ゆっくりと、少しずつ、トンビに無理な負担をかけないように浮島へ移動していきます。

ケェーッ!と、声をあげて空中で抵抗するトンビ。


―分かっているよ、お前も必死だろうが僕も必死だ。

絶対助けてやるから、お願いだからおとなしく従ってくれ!



…祈りながら足を漕いでいくと、ゆっくり、ゆっくり浮島が近づいてきます。

さて、近づいたところで、次はどうすればよいだろうか。


なにしろ水中から地上へ生き物をランディングさせた経験は数あれど、

天空から地上へ生き物をランディングさせるようなことになるとは、つい5分前まで考えてもいなかったことです。



…ゆっくりとラインを巻き取っていくべきか…、

考えているまさにその時、急激にトンビがバランスを崩しました。




―あっ、落ちる!


とっさにラインを手でたぐり、浮島へ落ちるように誘導します!




…バスッ



乾いた音とともに、トンビは無事に浮島へ着地しました。








―オッケェェェェェェェイ!!


思わずガッツポーズをする僕です。


さぁ、しかし、これでようやく第一段階をクリアしたに過ぎません。

次はいよいよ、トンビの足に絡まっているジャークベイトを取り除かなければなりません。


トンビはどこか覚悟をしているのか、僕が手をのばしても特に暴れる様子はありません。



…爪、するどっ!



…思わず口に出してしまいましたが、何しろ生きた野生の猛禽類とここまで間近に触れ合うことなど動物園でも無理な話です。

クチバシもまたエグい曲がり方をしていて、これで魚やらネズミやらをバラバラにするのかと想像すると、ジャークベイトに伸ばす手にも緊張が走ります。



不幸中の幸いというべきか、どうやら足に刺さっているフックは一本だけ。

―よかった、これなら簡単に外せるはず。



グルグルと絡まったラインを慎重にほどき、ジャークベイトを手に取ります。

落ち着いているながらも、視線は僕から外さないトンビ。



―…ちょっとだけ、我慢してくれよ!


…ズボッ!




…取れた!




ラインからもルアーからも無事に解放してやって、いまだ大人しくしているトンビからゆっくりと距離をとります。


10mほど離れたところで、トンビはゆっくりと身を起こし、両の翼を大きく広げました。




…バサッ!!




―飛んだ!






―良かった、どこか骨折でもしているんじゃないかと心配したけれど、どうやら大丈夫らしい。

サングラスを外し、汗を拭ってフローターの背もたれに寄りかかります。



―やれやれ、大変な目にあったけど、しかし、さすがに琵琶湖だ。

釣れる外道のクオリティも、地元とはだいぶ違うわい。



ペットボトルのお茶をぐいっと喉に流し込んで、文字通り一息ついた僕だったのでした。








…さて、釣りを再開しようかと思いますが、しかしジャークベイトはもう怖くて投げられない。

自分でも思いもよらない理由で封印されてしまいましたが、しかしそれならどうすべきか。


当初の考え通り、トップにするか、あるいはワームで…、









浮島




…目の前には、さきほどトンビを不時着させた浮島が広がっています。

浮島はそれなりの広さがあって、ひょっとしたらこの下にバスが潜んでいるかもしれません。



―パンチング?



今までまともにやったことのない釣り方を、ここで初めてやってみる?

幸い、フローターバッグの中には1オンスのバレットシンカーが入っているけれども…。



―まぁ、時間はたっぷりある。

思いついたことはなんでも試してみよう。



XHのタックルからスイムベイトを取り外し、1オンスのバレットシンカーとストレートフックをセットします。

シンカーはペグ止めでビタビタに固定して…、


聞きかじりの知識を思い出しながら、リグを作ってみます。



―これで大丈夫か?



試しに目の前の浮島に向けてリグを放り投げてみますが、

ドスッ!と勢い良く着地したものの、厚みを貫くには至らない模様。


ならば、と、ほぼ真上にキャストして、勢いをつけて着地させてみます。




…ズボッ!!




―貫いた。

なるほど、これは気持ちがいい。



リグを回収して、もっと厚みがありそうな箇所に、さらに勢いをつけて着地させてみます。




…ズボボッ!!!





―いい!!






そこからしばらく、バスを釣るよりも浮島を貫くことに夢中になりながらキャストを続けますが、

キャストごとに「凄い」とか「いい」とか呟いていたもので、

他のバサーから見れば、一投ごとに怪しげな呟きを発する中年男など恐怖以外の何者でもなかったでしょうが、

幸いにもそれに気がつくことのなかった僕は、飽きるまでパンチングをやり通すことができたのでした。





ひとしきり満喫して、どうやらこの下にはいないらしいと気がついた僕は移動を開始します。

進行方向のはるか先を眺めると、ぼんやりと漁港らしきものが目に入ります。


漁港はコンクリートの壁によって囲まれていて、あそこであれば岩盤撃ちに近い攻め方ができるのではないでしょうか。


思いついた僕はオールを手にとり、気長に長距離移動を開始しました。




…移動を続けながら、ふと、沖の方に目を向けると非常にたくさんのボートが浮かんでいます。

本格的なバスボート以外にも、レンタルボートと思われるものが多いということは、きっとこの近くにボート屋さんがあるということなのでしょう。


レンタルボートに乗っているバサーを観察すると、地元千葉の亀山や高滝とはだいぶ客層が違うことにやがて気が付きました。

親子連れやカップルと思われる二人組など、ほぼ全てのレンタルボートは複数人で乗り込んでいます。


さらにその全員がボート屋さんで借り受けたと思われるライフジャケットを装着していて、

タックルも一人一本と、非常にのんびりとした雰囲気を醸し出しています。


山のようにタックルを積み込み、ガッチガチのフル装備で魚探を睨みつけながら釣りをしているバサーがほとんどの地元を思い出すと、そのギャップにいささかの驚きを禁じえません。


これも地域性というのでしょうか。

おそらく、バス釣りというものが千葉よりも一般に身近なんだろうな、と僕は考えました。


釣りを全くやらないか、やるのであればとことん突き抜ける、という二極化の印象の千葉と違って、

琵琶湖という聖地の存在が、千葉には少ない「中間」の人口を押し上げているのかもしれません。



小学校低学年くらいの子供が、スピニングタックルで一生懸命クランクを巻いています。

その横で、お父さんがやっぱりスピニングタックルでクランクを巻いています。


僕が考える以上に、こういった光景は琵琶湖では当たり前なのかもしれません。







…漁港脇に到着しました。

コンクリートの壁に囲まれた湾内ではなく、その外側を岩盤撃ちの要領で攻めてみることにします。


手にとったのは7gのヘビーダウンショット。

僕が岩盤撃ちでもっとも頼りにしているリグです。


ドライブクロウラーの5.5インチをセットし、壁に向けてキャストします。

しばらくはスルスルと沈んでいくラインが不自然に止まったかと思うと、わずかに横に移動したように見えました。





…ゾワッと全身の皮膚が毛羽立ちます。

ここにきて一投目。

手元にアタリらしい感触はないものの、典型的な岩盤撃ちで釣れる時の反応。


―琵琶湖のアベレージは、40cm以上。




…落ち着いてラインスラックを巻き取り、






ガツンとフッキング!







…ガン!







…乗った!!




記念すべき琵琶湖の初バス、絶対に逃すわけにはいかない!

バスに主導権を与えずに、一気に押し切ります!



うおおおおおおおお、ネット、イーーーーーーーーーーン!!























琵琶湖バス



…おや?




…君は、もしかして、あれではないか?

人違いならば申し訳ないのだが、君はひょっとしてノンキー君ではあるまいか?


なぜ君がこんなところにいるのか?ここをどこだと思っているのか?

ここのアベレージが40cmと知ってのことなのか?


5.5インチのワームを飲み込んだ意気込みには敬意を表するが、君は自分で自分を買いかぶりすぎているのではないのか?





一瞬憮然としますが、しかし一本釣れたことには違いない。

考えてみれば、初場所でボウズにならなかったというだけでも幸運なことかもしれない。


少し考えを引き締めることにします。


これだけボートが浮いている中で、非常にわかりやすい、目に見える目標をやってみて、それで釣れたのは運が良かった。



…でも、小バスがたむろする場所にはデカバスは付かない、

そう考えた僕は場所移動を決意します。




―やはり、サイズのあるバスは沖の方にいるんじゃないのか。


でも魚探も何も無い中で、大海原にポツンと乗り込むわけにもいかない。

…どうしたもんかと、しばし波に揺られるまま、考え込みます。





思案しながらふと沖のほうを見ると、バスボートが何もない沖で撃ちモノをやっているようです。


―魚探で何か見つけたのかな。

やっぱり水中に目標を見つけられるのは、こういった大場所では大きいなぁ…。



僕の視線に気づいたわけでもないでしょうが、反応がなかったのか、バスボートはやがて別の場所へ移動していきました。


…と思ったら、入れ替わりのように別のバスボートがやってきて同じ箇所を撃っています。



―何か、あるんだ。




あるいは、ひょっとしたら有名なピンなのかもしれませんが、しかし水面からは他の場所と何が違うのか見分けがつきません。



…今やってるボートがいなくなったら、何があるのか確認しにいってみよう。





ソワソワとそのときを待ちます。



15分ほど待ったでしょうか、バスボートがエレキを引き上げて、エンジンをかけて…、

―今だ!




エッホ、エッホとオールを漕いで、そのポイントに急ぎます。

幸いなことに他のボートが来る気配もなく、さぁ、そして到着してはみたものの、やはり何の変哲もない、ただの沖です。


―水深は?





…うーむ、確かなことはわかりませんが、先程までやっていた場所よりは深そうです。

おそらく4mくらいではないでしょうか。



―ブレイクなんだろうか。




見も知らぬ他人のボートに教えられてようやく見つけた水深の深いところ、

早速、10gシンカーのヘビーキャロライナで周辺を探ってみます。




…しかし、何があるのかよくわからん。

底がウィードに覆われているっぽいのはわかるけれど、それは今までやってきたところも同じこと。


入れ替わりボートが入っていたくらいなんだから、他と違う変化が何かあるんだろうと思ったけれど…。






…あ。




思いついてしまった。

すごくいやらしいことを思いついてしまった。


何をしていいかも、どこへ行けばいいかもわからない大場所の沖。

今と同じように、バスボートがやっている場所に絞ってやっていったらどうだろうか。

そうすれば、あてもなくフラフラとやっていくよりは確率が高い気がする。



…しかしそれは、考えて釣るというバス釣りの楽しみを放棄することにはならないだろうか。

結果をとるか、過程をとるか…。





…というか、何を考えてるんだ僕は。

もともと、初めての琵琶湖に一人フローターで挑戦する時点で身の程知らずもいいところだと自分でも思っていたじゃないか。

釣れなくても上等、誰に恥ずかしいこともないはずだ。



…もし今、自分がいるラインが4mのブレイクラインなら、それに沿って岸と平行にやっていってみよう。


そう考えて、僕は移動することにしました。


実際、もっともらしいことを考えているようなのですが、今にして思えばこの時の僕は、「他人には頼らない」ということを言い訳にして、考えることをむしろ放棄していたようにも思えます。

もともとこの場所に来たのは「他人が何を考えているのか考えよう」という目的だったはずなのですが、当の僕はそのことを忘れ去っています。


いずれにしても、わからないなりに好きにやってみようと、僕は移動のためにオールを手にとったのでした。




…時間は既に昼をまわって、家族と合流するまでの残り時間は3時間を切っています。

好きなようにやると決めたものの、相変わらず何も目に見える目標が無い沖。


たぶん、今自分がいる下にブレイクがあるんだろうと信じて、その上を巻いてみることにします。

水深が4mあれば普通のクランクでも問題なく使えそうですが、ここは満を持してアレを使ってみましょう。



…アレとは、もちろんビッグベイトに決まっているではないですか!



もともとスローシンキングのジョイクロを、今はサスペンドにチューニングしています。

これを再びスローシンキングに戻して、ブレイクの上を巻いてみようではないですか!


…ドリャアアアアアと遠投して、しばし沈めた後、ヌラヌラと巻いてきます。


ビッグベイトが、ただ巻くだけで釣れたのは、もう過去の話だとも聞きます。

時折止めたり、急にトゥイッチを入れたり、自分なりに工夫をしながら巻いてきます。




ヌラヌラ、ヌラヌラ、



…ガツッ!






―え、根掛かり?




掛かったのはウィードのようです。

あっさりと外すことはできましたが、4mの水深で根掛かりするわけがない。


水深を測ると、やはり2m程度。


いつのまにか4mのラインから大きく外れていたようです。




―風に流されたのか。


ビッグベイトを巻くことに集中していましたが、午後から夕方に差し掛かって分厚い雲が上空を覆い、風が出てきていました。



沖に戻るため、オールを手に取ります。









―ゴゥゥゥゥゥ!!!


強風にキャップを取られないように、僕は軽く頭を抑えます。




…強風?




やや風が強い、というレベルから、いつの間にか天気は完全な強風に移ろっています。

1m漕いでも2m戻されるありさまで、全然沖に戻ることができません。



しばらくは風に抵抗するように必死で漕いでいた僕でしたが、やがてある事実に気が付きました。



…これ、風向きが逆になったらどうなるのか。



今、僕がいる場所は岸から50mほどの距離。

風向きが逆になったとして、果たして無事に岸まで戻ることはできるのか。



気がついて戦慄します。




―悔しいけど、もう沖に出るのはやめたほうがいい。



命には代えられない、と僕は岸際に戻る決断をします。

…とはいえ、オールも足漕ぎもすることなく風に身を任せていれば勝手に岸の方角に流されていってくれるでしょう。


ルアーをシャロークランクに変更し、四方八方に投げ続けていると、やがてフローターは足が着く浅場まで到着しました。

そのまま上陸し、あとはオカッパリでがんばることにします。



いったんフローターを駐車場のロープに立てかけておいて、ウェーダー姿のまま先ほど上陸した岸に戻ります。

若干ウェーディング気味にざぶざぶとシャローに入っていって、先ほどの続きとばかりにシャロークランクを投げますが、

完全な逆風に煽られてほとんど飛距離が出ません。


周りを見渡しても、いつの間にかオカッパラーは全員いなくなっています。

おそらく、逆風を嫌って別の場所に移動したのでしょう。


車があれば僕もそうするところですが、しょうがない。

なんだか尻つぼみな感じもしますが、こんなもんでしょう。


タックルを片付けて、フローターの置き場所に戻ると、家族が迎えに来るまでフローターにもたれかかり、一眠りすることにしたのでした。




2015/9/20(日)

強風→爆風
気温:22度→26度
水温:?度
アタリ:1
バラシ:0
ゲット:1






琵琶湖から千葉の自宅に戻り、今こうして思い出の余韻に浸ってみても、

なんというか、せっかくの琵琶湖、気持ちの面でも物質面でも、もう少し準備をしてから臨みたかったなとか、

行ったからにはもう少し大きなバスを釣りたかったなとか、色々と思うところはあるのですが、

とにかく「トンビが釣れた」という衝撃が大きすぎて、しばらくは僕の中では琵琶湖といえばトンビということになりそうです。



それと最後になりますが、琵琶湖といえばどうしても避けては通れないある問題について。


僕は今後もブログの中でその問題について語るつもりはありませんが、

様々な意見に目を通して、自分なりの考えというものは持つようにしています。


そしてバサーを名乗る人間であれば、全員がその問題について考え、意見を持つことが重要だろうとも思います。


ただし、自分なりの意見がどうだろうが、法で定められていることについては従わなければなりません。

これは一人のバサーとしてというより、法治国家に籍をおく一人の国民としての義務ですから、自分の考えがどうだろうが関係はありません。


人ではなく自然を相手に楽しませてもらう趣味だということを肝に銘じて、今後も釣りを楽しんでいきたいと思っています。