現在ネット上の、特に医療業界や科学業界ではホメオパシーに関する話題でもちきりといった状態ですが、その中心にいるのはまず間違いなく、朝日新聞社特に長野剛記者でしょう。


 朝日新聞のネット版医療ページ「アピタル」 ではホメオパシー問題に関してほとんど非のうちどころの無いような記事及びブログエントリを連発し、その動きに反応してかどうかはわかりませんが(少なからず影響はあるだろうが)日本学術会議、日本医師会、日本医学会などそうそうたる団体が「ホメオパシーは荒唐無稽だ」とする声明を発表し、しかもアピタル編集部はそれらの会見をツイッター(http://twitter.com/asahi_apital/ )を通して実況するという試みまで見せ、GJと言う声は引きも切れません


 これらの動きはほとんど衝撃的です。発端には痛ましい事件があったとはいえ、もともとホメオパシー批判、あるいはもっと大きくニセ科学批判などは長年行ってきた人がいるとはいえ、一般にはほとんど浸透せず、むしろ詐欺的なニセ科学・ニセ医療の勢力はどんどん広がっているかのように見えていたからです。
 ところが今回、ホメオパシーに対して明らかに、強力なブレーキがかかりました。朝日新聞は本紙の1面トップとしても扱い、今までホメオパシーなんか知らなかった層にも確実に影響を与え、ホメオパシー団体当人もほとんど青息吐息に見えます。これまでほとんど動かなかったものが、ほんの数週間でこれだけ動くのを見るのは痛快です。そして先ほども言ったようにこの中心にいるのは朝日新聞社で、大手マスコミの力強さをまざまざと見せてもらった感じです。


 これまで医療問題を扱う人々の間では、マスコミに対しては「まずこれまでの報道について謝罪しろ。全てはそれからだ」という意見が強くありました。ところが(責めるわけではなく、そもそも朝日は医療報道に関しては「やれば出来る子」扱いでしたが)、朝日新聞社は謝罪などしていませんが、大きな賞賛を得ています。ホメオパシー団体やホメオパシーに傾倒している個人からは批判されていますが、それらにも正面から応えていて、その態度もカッコイイ。
 今の世の中には自然・天然をわけもわからず賞賛する、かなり残念な風潮があり、ホメオパシーはそちらに近い理念を持っています。でそれを批判するような記事はいろいろ難しいものがあったんじゃないかと思うのですが、一方で「よくぞやってくれた」と思う人もいるし、何よりそんな「誤解」はどんどん潰していった方が結局は社会の利益になります。


 今回の朝日新聞社・長野記者の記事にはバックボーンとして、丁寧で妥当な取材があったことが伺えます。それは考えてみれば当たり前のことのようですが、しかしマスコミがマスゴミなどと言われてきたのは、そんな気配が見えなかったことが原因でしょう。報道各社はこれこそ真のサクセスケースとして取り入れていくべきでしょうし、そういう方面へ舵取りできれば低迷する出版業界にも追い風が吹くと思います。「500億で足りようから金を出せ」などと言うよりよほどいいですよ。


 もしかしたら今年は、ニセ医療に対する新しい夜明けの年になるのかも・・・と言う人がいますが、大手マスコミもその気になれば今年をものすごく良い年にすることが出来ますよ。きっと。


 なんかエラソーな話になったけど。