商経アドバイス3月29日号より


 過剰、米価下落を否定
 赤松農相 転作助成は半年後判断


 赤松広隆農相は23日の会見で、戸別所得補償制度に起因して米価が下落するとの予測をあらためて否定するとともに、半年後の法案化に伴って自給力向上対策を見直す考えなどに言及した。
 赤松農相は、「戸別所得補償の定額部分1万5000円によって米価が下がるとの懸念がある」との指摘に対し、「米価が下がれば変動部分で見てもらえ、損する仕組みになっていない。無理に安売りする必要はない。(生産数量目標の)割り当てが守られ、(生産調整に)参加してくるため、22年度以降は米が過剰に生産されることはない」と過剰生産の懸念を否定した。
 さらに「需要以上に供給があったという意味で下がるわけだから、そういう事態にはならない」と語り、生産数量目標が守られる限り米価下落が起こらないとの考えをあらためて繰り返した。
 「1万5000円でコストが安くなり、流通や量販店が安く買い叩くという懸念もある」との指摘に対して赤松農相は、「所得が少ないから離農し、耕作放棄地にするんだと(言う事態への議論を)やってきた意味がない」とし、取り合わなかった
 「転作奨励金(=水田利活用・自給力向上対策交付金)の中断はないか」との念押しに赤松農相は、「半年後には(戸別所得補償制度の)法案を(国会に)出さなければならない。その時期に検証して決める。品目横断(的経営安定化対策)の形でやるか、この制度そのものに基本的に取り入れてやるか、農業者の意見も聞いて決めればいい」との考えを示した。



 戸別所得補償制度の意義はその名の通り、農家の所得を補償するためのもので、それによって米価が下がっては意味無しだというのは正しいです。んがこれらの懸念はあまりにも当然のもので、もちろん現実にはこうです。


 同じく商経アドバイス3月29日号より


 全農 米販売価格戦略転換
 戸別所得補償の導入受け 需給変動に応じ弾力的に


 全農は24日、都内のホテルで第42回臨時総代会を開き、平成22~24年度の3カ年計画と22年度の事業計画を可決・承認した。22年産米におけるコメ戸別所得補償制度の導入を受け、従来の「硬直的な価格」から今後は「需給に応じた価格」に販売方針を転換。集荷における仮渡し金でも、従来の最終生産額を意識した設定から「慎重な概算金対応」に切り替える方針を示しており、事実上、価格水準を下方修正する考えを示している

 事業計画の中で全農は、22年産における戸別所得補償制度モデル事業について、「”消費者負担による価格支持”から”納税者負担による所得補償”へとコメ政策が転換される」意義を指摘している。
 補償額の見通しについては、22年産の販売価格(出回りから23年1月までの全銘柄平均の相対取引価格)が60キロ1万2500円となった場合を事例に示し、変動部分の交付はないが、定額部分(60キロ1725円)と合わせて1万4725円の手取りになると試算。さらに販売価格が1万円に下落しても、変動部分で1978円が交付されることにより、定額部分との合計で1万3703円(補償米価とイコール)が確保されるーとの政策的効果を見込んでいる。
 これを踏まえて事業計画では、「”需給均衡を前提とした価格維持と統一的販売”から”需給変動に応じた価格形成と弾力的販売”」に軸足を移し、事業を再構築することが必要」という対応方向を掲げた。


(後略)



 はい当然のごとく、戸別所得補償をアテ込んだ値下げをすると明言されております。懸念は完全に的中しています。全農に「んなことするな」と強制することも出来ないでしょうが、それにしてもこんな明白な問題に対して警戒心がなさ過ぎます。


 だいたい、米価下落時に補填するから大丈夫って言うのが意味不明です。全農の言う「硬直的な価格」って、年間数%ずつ下げておいて何が硬直的かと思いますが、米価下落というときの基準価格は確固として決まったものではなく、最近数年の価格の平均で決まりますので、じわじわ価格を下げていけば数年後には基準価格のほうも下がっていきます。米価が下がった分補償も大きくなるというわけではありません。
 だいたい、記事に上がっている試算でも、変動分の価格補填があっても米価は1000円も安くなっており(1000俵つくる農家にとって100万円の減収)、下落時の補填があるから安心なんてどの口が言っているのか分かりません。


 で、硬直的ではない=大胆な値下げ(値上げはありえない)に加え、数年前に物議をかもした仮渡し金の大幅減額も盛り込まれています。JA離れ、というかJA頼りの農家の廃業はますます加速するでしょうね。


 過剰はありえないとするのも疑問です。生産調整は選択性になり、応じるところは増えるかもしれませんが応じないところにも罰則は無くなり、そういうところはたくさんつくります。
 もっともそっちの影響は大した事はないかもしれませんが、確実に影響がありそうなのは、生産調整の枠外にある加工米の食用転用です。こちらは政策目標でも大増産の号令がかかっているもので、価格は安く、食用に転用する業者が現れないわけがありません。もちろん違反ですが、それを取り締まるための体制作りは充分とは思えません。


 結局のところ、農水省なり全農なりが考えている「コメの適正価格」っていくらなんでしょうか。とにかく安いものが欲しいのなら素直に中国米でも輸入してればいいじゃないですか。