最近某サティのワイン売り場をチラッと覗いて軽く驚いたのですが、国内産ワインの品揃えの7割ほどが「酸化防止剤無添加ワイン」あるいは「有機ワイン」でした。前々からあることはありましたが、いつの間にこんなに増えたんでしょう??
 普段ワインを買うショップには国産ワインなどほとんどないので、気づきませんでした。


 もっとも最初に、酸化防止剤無添加ワインと有機ワインは違うものだということを説明しておかなければならないのですが、日本国外ではともかく国内で作られ日本語のラベルで売られるワインにとって両者はしばしば似たようなものになります。ちなみに海外においては、オーガニックワインであっても酸化防止剤(亜硫酸)の使用は認められています


 私が見た店・売り場だけが、特異的に多く酸化防止剤無添加ワインを扱っていたのなら分かるのですが、どうも様々なメーカーから出ているようですし、ニーズが確実に存在しているのは間違いないでしょう。

 ところでこういうワイン、海外では作られているのでしょうか?フランスにも、亜硫酸は最小限しか使わないという生産者はたくさんいるのですが、全く使わないことを売りにするものはあるのでしょうか。フランスのスーパーマーケットを見てみたいものです。


 本題に戻りますが、酸化防止剤無添加というフレーズにメリットを感じる消費者というのは、想像力が貧困なのか、あるいはメリットについて中身の検討など全然しないのか、たぶん両方かと思いますが、単純に考えて酸化防止剤を添加しないということは酸化してしまうと言う事です
 ワイン作りにおいて、酸化防止剤は醸造時に添加されるのですが、ワインを仕込むブドウ果汁が酸化するてのは要は切って放って置いたリンゴの断面が茶色くなるのと同じで、ジュースが茶色くなりせっかくの色が台無しになりますし、ワインになっても酸化に弱くて抜栓後あっという間に劣化するワインとなり、保管しておくだけでもどんどん劣化する為に発売後すぐに消費されなくてはなりません。
 また、酸化防止剤(亜硫酸)は醸造中の腐敗酵母や雑菌の繁殖を抑える効果もあるので、それらを原因とする悪臭を防止することができますし、加えて亜硫酸を添加しないがために発生する雑菌に対しては熱処理かフィルターろ過(通常ワインに使われるフィルターろ過とは別)を行う必要があり、味わいすら失われ、無残に不味いワインに成り果てます


 それでもなお酸化防止剤無添加にこだわる消費者は、品質や味などよりも安全・安心にこだわる意図がある(少なくとも味にこだわっているはずがない)のでしょうが、亜硫酸の残留基準値は0.35ppmで(マンガ「ソムリエ」4巻の「ワインの自由」中にあった350ppmは誤り。死ぬ)、酸化防止剤を添加した普通のワインであっても検出量はほとんどの場合において基準値の数~数十分の一で、安全です。


 もっとも想像力のない消費者が損をしようと個人的にはどうでもいいのですが、酸化防止剤無添加なんてフレーズが売りになるような日本市場というのは対外的にものすごく恥ずかしいのではないでしょうか?


 これに限らず、防腐剤などの食品添加物を忌避する消費者は本当に多いのですが、例えば防腐剤無添加の商品を買って「腐ったじゃないの、どうしてくれる!」というクレームをつける神経はどういうことよと問い詰めたくなることはあります。



※追記のエントリをアップしました。

http://ameblo.jp/vin/entry-10305205643.html