4月8日 北國新聞朝刊より


放棄農地 28万ヘクタール 耕作に使えず
農水省調査 森林、原野化進む


 農林水産省は7日、耕作が放棄された農地の実態に関する初の全国調査結果を発表した。現状で耕作に仕えない農地は約二十八万四千ヘクタールと推計、うち琵琶湖の面積の約二倍に相当する約十三万五千ヘクタールで森林・原野化が進み復元が実質的に不可能な状態であることが分かった。


 農家に耕作の意思がない農地は三十八万六千ヘクタール(二〇〇五年農林業センサス)とされていたが、手入れされない農地の荒廃が急速に進んでいることが初めて明るみに出た形。農水省は食料自給率向上のため、耕作放棄地の営農再開を推進しているが荒廃は大きな壁となり、抜本的な対策が求められそうだ。


 調査は〇八年度に実施した。農地がない地域などを除く千七百七十七の市区町村や農業委員会を通じて、現状のままでは耕作に使えない状態の二十三万一千ヘクタールを確認。これに調査未了分も勘案し、全国で二十八万四千ヘクタールが耕作に使えなくなっていると推計した。


 このうち、草刈りや整地を行えば復旧できるのは八万二千ヘクタール、復旧に大規模な基盤整備が必要なのは六万七千ヘクタールだった。


 報告があった石川県内の耕作に仕えない農地は六千八百八十九ヘクタールで、復旧できるのは二千三十三ヘクタール、基盤整備が必要なのは五百八十ヘクタールだった。




 水田フル活用計画に冷や水と言うか熱湯を浴びせかけるようなお話。先日の、当ブログのエントリ休耕田は農業用地足りえるか? にソースがついた格好です。
 それにしても酷いのは、この調査についている「初」の文字。予想されてたことではありますが、今まで調査もしてなかったんかい


 ちなみにこういうのが、おそらく復元不可能な耕作放棄地の状態です。

農家こうめのワイン-耕作放棄地


 一見どう見ても農地に見えませんが、田んぼ(だった)です。人の背の高さくらいにまで雑草が伸び、もうこれは木です。


 しかしこれはまだマシなもので、酷いのは中山間地です。
 中山間地の土地には特有の問題があり、それは登記が全くしっかりしてないことです。登記簿図面をとってみると明治時代から伝わる手描きの図面をまだ使っているところなんかがザラで、ややこしい形の土地がまたややこしく何筆にも分かれ、正確な隣地境界線や持ち主は地元の長老が口伝で知っているのみとか、だいたいが持ち主はもうとっくに町に移住していてしかも2世代くらい降りているので本人は見たことも来たこともないとか、図面が古過ぎて地形がまるで変わっている(けど登記上はまだ農地)とか、こういう事情がごく当たり前に存在します。こんな場所を有効活用しようなんてそりゃ無茶が過ぎると言うものです。


 で、たぶん農水省は甘めに調査したんじゃないかなあと勝手に思うのですが、それでも復元不可能な農地が、耕作放棄地の三分の二以上に及ぶと言う事が明るみに出たわけです。
 しかも、当然ですが、この事情は年々悪くなります。来年になれば復帰不可能な農地はさらに増えるでしょう。再来年はさらにもっとです。もっとも、復帰可能な農地も増えるんじゃないかと思いますけどね・・・リタイアする農家が増えますので。


 実は2年位前、遊休農地は固定資産税を上げて、ちゃんと耕作したり人に貸したりしないと税金が増えるというペナルティ的なことをしたらどうかと言う話が政府だったか与党だったかから出たことがあります。この話が結局どうなったかは知りませんが、たぶんそんなことをしても、農地(実質は原野)の所有権放棄が増えるだけじゃないかと予想します。


 農水省は中山間地に田んぼを1ヘクタールくらい持って毎年職員みんなで耕作するべきなんじゃないだろうか。


koume