医業って言葉はあるんでしょうか。医療と言えばいいのか。けど医療行為を業として行わないことは出来ますよね。医療業とも言わんだろうしやっぱり医業でいいんでしょうか。まあその話は後です。


 前のエントリでもやしもんについて書きたいことはそれなりにあって、そのためにぐだぐだと書いたわけですが、4巻の巻末にほとんど答えに近いことがちゃーんと書いてありました。ちゃんと読んでから書けと言われたようで恥ずかしかったです。
 要するに、「もやしもん」は農学のマンガであって、農業のマンガではないということです。こんな簡単に表現できる言葉を捜すのが案外難しいんだよなぁ(←ただのアホで気づかなかっただけ)。


 誤解を恐れず単純に言うなら、稲や野菜などの作り方を勉強するのが農学です。しかし農業の場合は、出来た米や野菜などを売ってお金にして農家が生活できるところまでやらないと、農業として完結しません。それと農学の場合は栽培するための前提になる投資やなんかは(全部または一部)無条件で用意されることがありますが、それらをゼロから揃えるのも農業のうちです。死ぬほど単純に言えば農業にはお金が絡みます。


 お金と言えば農学には農業経済学ってのはありますが、一流の農業経済学者であっても一流の農業経済人とは限りません。農業を無視して経済学だけとっても、「経済学者はたいてい、貧乏である」ってのは経済学部古くから伝統のジョークです。


 もちろん、農学+お金=農業というわけではありません。農業にはできなくて農学ならできることはたくさんあります。典型的には「もやしもん」4巻でやっていた、東京都内で山田錦を栽培「してみる」ってのがそれに当たります。
 登場人物が言うように、酒造好適米を栽培するにはそれに相当適した条件が必要で、ごくありきたりな場所で作るのはかなり無謀なことですが、もし栽培に失敗したとしてもそれはそれで農学の一環としてなら成果になります。しかし農業の場合は失敗してもこれっぽっちの成果にもなりません。コシヒカリを作っていればちゃんと売り上げがあったところを失敗してゼロにしてしまうと下手をすると人の生き死にの問題になります。


 さて、普通の社会人ならば誰でも常識なことをまたうだうだやりましたが、それにしても農業と農学はよく混同されることではあります(ちなみにもやしもんの作者さんは混同していません)。ガーデニングでちょこっと野菜を育てているだけで農業とか呼ばれることはしばしばありますが、いつも違和感を感じています。他の業界だったら、こういう混同はあんまりないんじゃないかと思うんですけどね。


 ・・・と思ったんですが、もしかしたら医学と医業(?)ってかなり混同されていますか?
 私は「医学」がわからないのであくまで想像で書きますが、もし医学と言うやつにマンパワーとかコストとかを無視して成立している部分があるとしたら、心筋梗塞患者にはPCIを行うべきであった、と言う意見は医学的には正しいことになります。
 いや、それは正しいには決まっているけど実際にはそうじゃない、てな話は医学ではなく医業的な話になるのでしょう。


 もしかしたら医療訴訟の問題というのは医学と医業が混同されている点にあるんでしょうか。だとしたら例えば、「大野病院事件は医学的見地からするとミスと言えるものはなかった」てな言い方は誤りで、「医業的見地からすると・・・」と言うべきなのでしょうか。


 ムチャクチャ細かく言えばですけど。


koume