最近、農薬関連で結構大きいトピックがこれです。ただし農薬業界の人はほとんど問題にしていません。マスコミや市民団体、一部の医者などが、この科学物質過敏症の原因を農薬のせいにして騒いでいるだけです。
 化学物質過敏症はアレルギーやシックハウス症候群(シックビル症候群)に似ています。しかしもちろん、違いがあります。アレルギーには原因としてアレルゲンが存在し、シックハウス症候群も新建材からのホルムアルデヒドや有機溶剤などが原因といわれてますが、化学物質過敏症の場合は原因がわからない。どうも精神的な疾患ではないか、要するに本当に化学物質に過敏になっているのではなくて、そう思い込むことで発症しているのではないか(プラセボなど、普通にもよくある現象です)と言われています。

 日本では、環境省で科学物質過敏症についての実験が行われた記録があります。
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=4700
 この実験では、化学物質の濃度によって本当に影響を受ける人と言うのは患者全体の2割でしかありません。この2割に関して言えば、本当に化学物質過敏症なのだと言えるかも知れません。しかしどうも、精神的な要因は少なくないようです。


 マスコミなどは農薬のせいとしょっちゅう言っていますが、実は農薬は一番最初に容疑を解かれるべきものです。理由はいくつかあります。
 ・暴露時間、暴露量が極端に少ない(一般の「化学物質」に比べても数万分の1以下)。
 ・いろいろな実験で毒性について調べつくされていて、そもそも影響力が少ない。


 マスコミが主張する化学物質過敏症の最もわけわからない点は、農薬なら何でもかんでも発症するところです。ある特定の物質の、ある特定の部分に反応する(←普通のアレルゲン)ならわかるのですが、「農薬」なら何でものべつまくなしに反応するなんて事はありえません。前回の記事でも取り上げましたが、農薬とは数100種類の化学物質の総称で、全てに共通する構造などは存在しないからです。
 農薬を普通に使った、慣行栽培の野菜では発症していた物が、有機栽培の野菜に変えると治まったというのは精神的疾患であることを典型的に表す事例です。なぜなら、慣行栽培の野菜でもほとんど農薬は残留していないし、有機栽培の野菜にも(ごく一部ですが)農薬は残留しているからです。
 だいたい、野菜にはもともと化学物質が山ほど含まれています。種類も多く、発ガン性も強く、量は残留農薬などと比べて10万倍も多くです。そちらに反応せずに、ごく微かにしか含まれていない農薬に反応するとはいかにもおかしい。だからこそ、農薬は原因から真っ先に除外されるべき物だと言えるわけです。


 報道では、農薬散布のそばにいた人が発症した、と言うものもありましたが、シックビル症候群などはホルムアルデヒド等に長時間(家にいる時間はずっと)暴露されて発症する物で、それに対して農薬はせいぜい数分です。暴露量も、ものすごく少ない。無人ヘリでの農薬散布は怖い、と言う報道はあちこちで見られますが、農薬散布に関する規制の強さ、気の使い方、調査の徹底などについて何も知らない無責任な報道としか思えません。そういう記事が出るたびに、農薬工業会からはテレビ局等に対して抗議が出ているのですが、なんら改まりません。
http://www.jcpa.or.jp/ibox/ntvk.html
http://www.jcpa.or.jp/ibox/nknpkg.html


 もともと、異常に清潔な環境が過敏症を生んでいると言う話もあります。というか、農薬を批判しているマスコミたちは、農業業界にいったい何を期待しているんでしょうか?農薬を使うななんて、言うのは簡単だけど、それがどういう影響を生むのかわかってるんだろうな。


 私には、化学物質過敏症の大きな原因は精神的なものしか思えないのですが、もしそうだとすると、最大の害悪は無責任で下劣なマスコミ、不勉強な市民団体ということになりそうです。農薬について無知でバカな報道ばかりして不安を増大させているんだから、主犯と言っていいでしょう。それで発生した化学物質過敏症患者をまた取り上げるんだから、これはもっとも醜悪な形でのマッチ・ポンプと言えるでしょう。


koume