Yさん、またお目にかかりましょう。 | 紺碧の、活力ある伝承物

紺碧の、活力ある伝承物

大人気ない大人の日々の暮らしと、独断と偏見に満ち溢れた独りクルマ談義

先日、事業所に一通の封書が届きました。


ごく普通の白い封筒に綺麗な楷書で、私の名前が書かれています。


しかし、差出人は・・・何も書かれていません。






・・・以前担当していた利用者さんのご家族の方だろうか。


利用者さんが亡くなられたり施設に入所されたりして、担当としての私の仕事が終わった時など、


ご家族から金品を渡されそうになり、平身低頭でお断りしたことが過去何度かある。


もちろんお気持ちは大変ありがたいが、私は担当としてやるべきことをやっただけのこと。


いや、利用者さんとお別れしなければならなくなったということは、


それがどんな事情であれ、私の力量不足もその一因であるはず。


介護報酬以外に金品をいただく権利も資格も、私にはない。



しかし、直接お目にかかって渡される分には固辞することもできるが、


こんな風に郵送されてきた場合、どう対応すればよいのだろう。


ただ送り返すのでは失礼にも当たりかねないし、


言葉を尽くして感謝の想いをお伝えした上で、法人への寄付という形にさせていただくか・・・。






・・・そんなことを考えながら、封を切ってみました。






中に入っていたのは、手帳かノートから切り取ったと思われる紙が二枚。


書き出しは「vigorist様」。


利用者さん直筆の、私への手紙でした。


紺碧の、活力ある伝承物-Yさんからの手紙。
86歳の女性、Yさん。山奥で長年独り暮らしをしておられた方です。

過疎化の波が容赦なく押し寄せ、頼りにできる近隣の方も一人また一人といなくなり、

ご家族の勧めに従って山を下り、施設に入所されたのが今年の年明けのことでした。





先月の上旬、私はYさんの入所しておられる施設に足を運びました。


Yさんとは別の入所者の方の、要介護認定調査を行うためでした。


調査を終え、せっかく来たのだからYさんに面会したいと思い、


施設の職員に頼んで部屋に案内してもらいました。



約5か月ぶりの再会です。


かなりの難聴ではあるものの、顕著な認知症状の見られないYさん。


私の顔を見て、一瞬「?」という反応をされたものの、すぐに思い出して下さいました。


手紙には、その時の感謝の想いが綴られています。


あの綺麗な楷書の宛て名書きは、どうやら施設の職員の手によるもののようです。



私が面会した際、あいにくYさんはお腹を壊し、


しかも感染症の可能性ありということで、検査結果が出るまで自室から出られない状態。


私も事前に職員に指示され、マスクを着用しての面会でした。


しかし元々大の話し好きのYさん。口の方は至って絶好調で、


施設での暮らしの様子をたっぷり話して下さいました。



そして先日届いた、この手紙。


どうやら体調は回復されているようで、何よりです。


それにしても、実にしっかりした字で、しっかりした文面で書かれた手紙。


とても86歳とは思えないほどです。


Yさんには今もなお、こんなにも活力が残されているのです。


・・・本当はきっとまだまだ、あの山の中で暮らしたかったことでしょう。






「vigoristさんも、何時までもお元氣で。

 皆さんをたすけて上げて下さい。

 厚(暑)くなります。体に氣をつけられて

 又近くに来られる時が有りましたら 御元気な御姿を見せて下さい

 其の日の来るのを 一日千秋の思でお待ちして居ります」






・・・Yさんの心中を想うと、仕事中であるにもかかわらず目頭が熱くなりました。






Yさん、どうもありがとうございます。


またお目にかかりましょう。


必ず。


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