先日、事業所に一通の封書が届きました。
ごく普通の白い封筒に綺麗な楷書で、私の名前が書かれています。
しかし、差出人は・・・何も書かれていません。
・・・以前担当していた利用者さんのご家族の方だろうか。
利用者さんが亡くなられたり施設に入所されたりして、担当としての私の仕事が終わった時など、
ご家族から金品を渡されそうになり、平身低頭でお断りしたことが過去何度かある。
もちろんお気持ちは大変ありがたいが、私は担当としてやるべきことをやっただけのこと。
いや、利用者さんとお別れしなければならなくなったということは、
それがどんな事情であれ、私の力量不足もその一因であるはず。
介護報酬以外に金品をいただく権利も資格も、私にはない。
しかし、直接お目にかかって渡される分には固辞することもできるが、
こんな風に郵送されてきた場合、どう対応すればよいのだろう。
ただ送り返すのでは失礼にも当たりかねないし、
言葉を尽くして感謝の想いをお伝えした上で、法人への寄付という形にさせていただくか・・・。
・・・そんなことを考えながら、封を切ってみました。
中に入っていたのは、手帳かノートから切り取ったと思われる紙が二枚。
書き出しは「vigorist様」。
利用者さん直筆の、私への手紙でした。
先月の上旬、私はYさんの入所しておられる施設に足を運びました。
Yさんとは別の入所者の方の、要介護認定調査を行うためでした。
調査を終え、せっかく来たのだからYさんに面会したいと思い、
施設の職員に頼んで部屋に案内してもらいました。
約5か月ぶりの再会です。
かなりの難聴ではあるものの、顕著な認知症状の見られないYさん。
私の顔を見て、一瞬「?」という反応をされたものの、すぐに思い出して下さいました。
手紙には、その時の感謝の想いが綴られています。
あの綺麗な楷書の宛て名書きは、どうやら施設の職員の手によるもののようです。
私が面会した際、あいにくYさんはお腹を壊し、
しかも感染症の可能性ありということで、検査結果が出るまで自室から出られない状態。
私も事前に職員に指示され、マスクを着用しての面会でした。
しかし元々大の話し好きのYさん。口の方は至って絶好調で、
施設での暮らしの様子をたっぷり話して下さいました。
そして先日届いた、この手紙。
どうやら体調は回復されているようで、何よりです。
それにしても、実にしっかりした字で、しっかりした文面で書かれた手紙。
とても86歳とは思えないほどです。
Yさんには今もなお、こんなにも活力が残されているのです。
・・・本当はきっとまだまだ、あの山の中で暮らしたかったことでしょう。
「vigoristさんも、何時までもお元氣で。
皆さんをたすけて上げて下さい。
厚(暑)くなります。体に氣をつけられて
又近くに来られる時が有りましたら 御元気な御姿を見せて下さい
其の日の来るのを 一日千秋の思でお待ちして居ります」
・・・Yさんの心中を想うと、仕事中であるにもかかわらず目頭が熱くなりました。
Yさん、どうもありがとうございます。
またお目にかかりましょう。
必ず。