仕事とは、責任とは。 | 紺碧の、活力ある伝承物

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3月24日の記事 の続きです。



「vigoristさん・・・」






「vigoristさん・・・」






不意にYが話しかけてきました。






「・・・はい?」






「・・・ちょっと、話を聴いてもらえますか・・・?」


ひどく思い詰めたようなその表情。消え入りそうな声。






「・・・どうしたの?」


何となく嫌な予感を感じながら、促します。



「私・・・自分の気持ちを伝えることが凄く苦手なんで、上手く言えないんですけど・・・。

 何だか最近、人間不信になりかかってるんです・・・」



「・・・人間不信?どうして?それは誰に対して?」



「・・・誰に対してってわけじゃないんですけど・・・。人間不信という言い方が、

 いいのかどうかもわからないんですが・・・」






どうにも真意を測りかねる発言です。


「伝えることが苦手」なんて言われても、それが私たちの仕事でもあるわけですし。



元々Yという人は、じっくりゆっくりと言葉を選びながら話すタイプ。


それ故に時として話が冗長になってしまい、結局何を言わんとしているのかが相手に伝わらず、


IやKにとっても、Yのそういうところが癇に障っていたようでした。


「連絡や報告はまず結論ありき。相手に何を伝えたいのか、相手が何を知りたがっているのか考えて、

 一番必要なことをまず話せばいい」と助言したこともあります。



しかし今は、仕事に関する連絡や報告ではありません。


私はじっくり腰を据えて、彼女の話に付き合うことにしました。






さて、その話の内容。


要約すると・・・



「Kさんのあの様子を見ていると、あんなになってまで仕事をしなければならないのかといたたまれなくなる。

 あれはとても尋常な状態ではない。

 手術をするということだったが、もしかするとかなり病状は悪いのではないか。

 確かにKさんとは色々あったし、思うところもあるけれど、

 同じ職場で働く同僚として、とにかく早く休ませてあげたいし、休ませてあげられないのかと思う」



・・・大よそこれが、Yの話の内容の大意でした。






「うん・・・。確かにそうだね・・・」


私も言葉を選びながら、彼女に言葉を返し始めます。



「確かに今のKさんを見ていると、もう限界だと思う。早く休ませてあげたいとも思う。

 でもだからといって、僕たちが代わりにKさんの担当の方のところに訪問に行く?

 みんなそれぞれ異動や退職を控え、自分の仕事を抱えている状況で、本当にそんなことができると思う?

 厳しい言い方かも知れないけれど、冷たいかも知れないけれど、

 仕事に出て来ている以上は、利用者さんにご迷惑をおかけすることのないよう、

 最低限の責任は果たしてもらわなくてはいけない。

 給料をもらっているんだから。

 それが仕事なんだから。

 Kさんもしんどいと思うけど、それももう数日間の辛抱。

 ここは何とか乗り切ってもらうしかないと思う」・・・



私の言葉に、Yは俯きながら黙って頷きます。



そのYに、私はさらに言葉を続けます。



「ここ最近のあなたの様子が、どうも気になっていた。

 心ここにあらずという感じで、全く集中できていない。表情も暗い。

 異動の件で色々不安があるのはわかるけど、一体どうしたの?」



・・・返答はありません。Yは黙って俯いたままです。






実はこの日の昼、Yに対して不信感に近い疑問を禁じ得ないことがあったのです。






「vigoristさん、すみません・・・。この方の(要介護)認定調査にまだ行けてなくて・・・。

 もう今月中に行くのは無理なんで、役場に返してもらった方がいいと思うんですが・・・」






当法人では、要介護認定調査の委託を役場から受けています。


月に数回役場から依頼のメールが入り、私が各従業者に振り分けます。


報酬は1件につき3,150円。


今の当法人内の居宅介護支援事業所の状況を考えれば、貴重な収入源です。疎かにはできません。


しかし、当然相手の方の都合に合わせなければなりませんから、


日程調整がうまくいかないこともあります。


ところが、この日Yが言ってきたケースは、それ以前の問題でした。


この方の調査の依頼を受けたのは3月7日。既に半月以上が経過している。


しかも相手の方との都合が合わなかったのならともかく、ただ一度の連絡すらもしていなかったのです。



そのことを知った瞬間、思わずぐっと湧き上がってくるものがありました。


今頃になって何を言い出すんだ。


一体この半月もの間、あなたは何をやってたんだ。


その言葉が口を吐いて出そうになりました。



しかしその時職場には、まだ訪問に出かける前のIが仏頂面でキーボードを叩いている。


今ここでYを問い質すようなことは避けた方がよい。


恐らくIは私に便乗してYを責めるか、


逆にYに便乗して「この状況じゃしょうがないですよ、vigoristさん」などと言い出すか、そのどちらかだ。


そうでなくとも私が訪問に出かけた後で、Yに何を言うかわかったものではない。



・・・ここで、このことを問い質すのはやめておこう。


ここ最近の様子も気になっていたし、二人だけになった時に聴いてみることにしよう。


私はそう思い、湧き上がりかけた怒りを呑み込みました。



ちなみにこの方については、私がこの日に連絡を入れてみたところ、


立ち合いを希望されているご家族の都合が合わず、結局4月に入ってからの調査となったのでした。


これは次期管理者に引き継ぐことになります。




そして今。まさに今は私とYとの二人きり。


私は改めて、Yに問いかけます。



「認定調査が遅れたら一体どういうことになるか、あなたも十分わかっているよね?

 素人じゃないんだから。

 認定調査が行われない限り、審査会にかけられることはない。

 すなわちそれだけ、認定が下りるのが遅れることになる。

 それが一体、どういうことを意味するか。

 相手の方にご迷惑をおかけすることになる。

 しかもこれは、役場から委託を受けている重要な仕事。

 僕らはお金をもらって、この仕事を受けているんだ。

 きちんと責任を果たさなくては、事業所の信用にも係わる。

 そこのところをあなたは、一体どう考えてるの?」



・・・Yは涙ぐみながら、じっと俯いています。






話はここからが佳境です。もう少し続けさせて下さい。


そしてもしよろしければ、皆さんも一緒に考えてみて下さい。


長くなってしまっていますが、次回こそ完結させるつもりです。


ごめんなさい!!


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