雪融け。 | 紺碧の、活力ある伝承物

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大人気ない大人の日々の暮らしと、独断と偏見に満ち溢れた独りクルマ談義

まさに波乱万丈と呼ぶに相応しかった1月も、いよいよ今日と明日を残すのみとなりました。



今日は午前中に訪問1件。私が担当する37人目の利用者さんのお宅です。


契約と、役場への事業所変更の届け出が、ようやくこれで全て終了となります。



ちなみにこの利用者さんは、以前の記事 でご紹介した、11月末から担当をさせていただいている方。


鬱症状と認知症状による完全な閉じこもり状態で、離れで独り寝起きする生活を続けています。


これまで何度か訪問を続けているものの、まだサービスの導入には至っていません。


しかしお嫁さんによれば、「vigoristさんと話している時の顔は、ここ数年にないほどの笑顔」なのだとか。



元々この方は、明るく穏やかなお人柄。お嫁さんにもとても優しかったそうです。


長い年月の間にさまざまな辛い想いを経て閉じこもりに至ってしまったわけですが、


大きな救いなのは、お嫁さんがとても大らかな愛情を持って接して下さっていることです。


若い頃、ご本人に優しくしてもらったことに対して感謝の念を持ち続けているお嫁さんとしては、


それ故に今のご本人が不憫でならず、何とか本来の明るさを少しでも取り戻してほしい一心なのです。


だからこそ、それがなかなか思うに任せない現状に対するストレスも、強く感じておられます。



年末に訪問して以来1か月以上ご無沙汰してしまっていましたが、


幸いご本人は私のことを、しっかり憶えていて下さっていました。


顔の色艶もよく、至って健康なようです。


やはりなかなか外に出ようという気にはなれないようですが、厳寒のこの時季では無理もありません。



「・・・それじゃ、また顔を見に来させてもらいます。お元気でお過ごし下さいね」


「来てもろうても、何も変わったことはないで」


「いえいえ、何も変わりがないのはいいことですよ。またお会いしましょう」



・・・こんな言葉のやり取りでご本人との面談を終えた後は、お嫁さんの話も伺います。


とにかく離れの部屋から一歩も出ようとせず、年明け以降入浴すらもできていないとか。


衣類も1か月以上、ずっと着たきり雀とのこと。


尿や便を失禁していても「出てない」と言い張り、パンツの交換もなかなかしたがらないようです。


しかしその割には汚れも臭いも特にひどいとは感じなかったのですが、


冬場の閉じこもり故にあまり汗もかかず、汚れることもないのでしょう。


私自身、もっと激しい方をこれまで何人も目にしていますから、感覚が麻痺しているのかも苦笑



現状では、お嫁さんが希望されているデイサービスの導入に至るまでには、まだまだ時間がかかりそうです。


しかし元々最初に話を伺った時点で、これは決して一筋縄ではいかないと確信し、


長丁場になることを覚悟していたケースです。


いささか不謹慎な表現ですが、個人的にはこういうケースに対する苦手意識はなく、むしろ得意。


慌てず急がず、まずはじっくりと時間をかけてアセスメントに専念することができるからです。


もちろん介護保険サービスの利用に至っていない現状では、


私がこうして何度訪問しようと報酬は得られないわけですが、今はそれでいいと思っています。


サービスの導入を焦って無理に引っ張り出すようなことをしては、


それこそ修復不可能なダメージをご本人に与えてしまいかねません。


粘り強く関わりつづけることが肝腎なのです。



今はじっくりと、ご本人が立ち上がって下さるのを、いや立ち上がろうという気になって下さるのを待つ。


そうなって初めて、背中を押すことができる。手を引くことができる。


私はそう思います。



冬来たりなば春遠からじ。


今のこの厳寒もいつしか緩み、春がやって来ます。


その春の雪融けのように、ご本人の重い腰も少しずつ軽くなってくることを信じて、


私はこれからも、ご本人に会いに行きます。


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