Selve amiche(心親しき森)――歌詞、対訳、発音、解説等 | 水の都で古楽修行♪ヴェルヴェッティーノのVenezia見聞録

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2016年よりイタリア留学中。国立音楽院の古楽科でバロック声楽を専攻しています。
日々勉強中なので、過去記事と最近の記事では発声について見解が異なる時がありますが、最新の記事が現在の発声です。
世界遺産の島ヴェネツィア在住。

Selve amiche

Antonio Caldara(1671 - 1736)作曲
作詞者不明(ウィキペディアにはルキーニとある)


歌詞

Selve amiche, ombrose piante,
fido albergo del mio core,
chiede a voi quest'alma amante
qualche pace al suo dolore.



対訳

心親しき森、陰なる木々
我が心の忠実なる宿よ
恋するこの魂はあなたがたに求めている
この苦しみに、いくばくかの安らぎを与えんことを

            (訳:ヴェルヴェッティーノ)

動画

もっと音の良い録音や、楽譜どおり歌われているもの、ピアノ伴奏のみのものもあるが、どうしてもこの音源が気に入ってしまったので、こちらをup。





発音

(参考までに)

セルヴェ アミーケ オンブロセ ピアンテ
フィード アルベルゴ デル ミオ コーレ
キエーデ ア ヴォイ クェスタルマ (ア)マンテ
クァルケ パーチェ アル スオ ドローレ


作曲家と曲について

アントニオ・カルダーラは1670年頃、ヴェネチアの生まれ。
音楽家の家庭で、父はヴァイオリニストだったらしい。

1699年、マントヴァ公ゴンザーガ家の楽長となる。
1707年、ローマに移り、ルスポリ大公の宮廷楽長となる。
1716年、神聖ローマ皇帝の宮廷で副楽長となり、亡くなるまで務める。ウィーンで没。

メタスタージオの台本でオペラも作曲している。

Selve amicheもマチェラータの公共劇場のために書いたオペラ《愛の誠は偽りに打ち勝つ》の中の一曲。
イタリア古典歌曲として親しまれている「Alma del core(愛しの君よ)」もこのオペラに含まれているらしい。


コメント

・曲頭の「Selve amiche」は語りかけるように。
 イントロのピアノからつないで、またピアノへ受け渡すように、と言われた。

・Bの部分はディナーミクをつけるべし。

・「dolore」は一回目は短調、二回目は長調である。 
 表現に変化をつけるように、とのこと。

・一回目のdoloreまでは中程度にもりあげ、
 二回目のdoloreを曲の中の山場にする。

フォルテでたっぷりリットしたあと、再現部の出だしでスっと引くように。

・曲の最後の装飾部分を楽譜通りではなく、オリジナルでやるように言われた。
 よっしゃあ!
 
 難易度順に3パターンほど考えてみた。
 練習が大変になったorz



個人的な話


今まで先生に、短調の曲が似合うと言われてきたが、歌うのも訊くのも
あまり好きではなかった。

でもこの曲に出会って、短調の曲が好きになった。



この曲が歌いやすい理由は、
音域が一点ヘ~二点ハという響きやすいところメインだとか、
音の運び方がやりやすいというのも勿論だが、
やはりこの、どことなく悲壮感の漂う曲想によるものと思う。


(以下、電波話を含みます)


自分の心の底にある湖を思い浮かべると、曲の世界にすぐに入れる。

オペラ座の地下のように、私の心の底には日の昇らない湖があって、
月明かりだけがひんやりと照らしているのだ。
という情景が、子供の頃から見える。

この蒼月湖(そうげっこ)で水浴びしている「God of Art」が、
すべての表現の母である。
ゆえに、彼は男だがまたの名を「永遠の女神」という。



家の人に、

「あんたが歌うとやたら悲しげだけど、そんな悲しい歌詞なの?
 表現過多なんじゃないの?」

とツッコミ入れられたが、声楽の先生からはそこんとこはノーチェックだった。

自分、元HR/HMファンだし、
オーバーアクション?と言われたフレディ・マーキュリーを尊敬してるし、
歌い上げてやるっ!
などというのはバロック的にはおそらく正しくない・・・



出来る限り喉を無駄遣いしたくないので、1オクターブ下で練習することが多い。
家の人に「低いとその曲怖い」と言われた。
Bメロが襲い迫ってくるように聴こえるらしい。
Selve amicheの別の横顔を発見(笑)



この曲はゆったりとしたテンポで演奏すべきだ。
が、なぜか先生の伴奏は(いつもなのだが)高速だった!

アレグロで歌うと、装飾の部分がオペラセリアみたいである。
「奮い立て! 我が心よ!」とか歌ってそうである。
しかも難易度が格段にあがる。

でもおもしろいので、
「もっとゆっくり弾いてください」
などとは一切言わず、オペラティックな気分を楽しんだ。

・・・カルダーラさんごめんよ。。。