第146回芥川賞受賞作。巧い。そして読み易い。
現代に”地”そして”血”というモチーフで書き続けている作家が他にいるだろうか?
そういう意味では、多くの人が指摘する通り非常に古臭い。
(個人的には、”地”そして”血”が今の時代、読むに値するテーマなのか、
若干の疑問がある。)
しかし、モチーフは古臭いものの、
逆に、そこに登場する男は非常に現代的なのである。
父と子を主要テーマに置いたのであれば、
最終的には子が父を乗り越えるという過程が描かれているのが普通であるが、
主人公は、父と同じ暴力性をもった自分の血を恐れているにもかかわらず、
結局、自分からは何もしないのである。
父を否定も肯定もせず、土地から離れようともしない。
主張し行動するのは周りの女ばかりなのである。
そういう意味で現代性のある小説と言えなくもないが、
残念ながら過去の同じようなテーマの名作と比べると、
こじんまりとしており、圧倒的に底暗さが不足している。